儲かる林業の可能性――財政出動の在り方を問う
幸福実現党・岡山県本部副代表たなべ雄治
◆林業に未来はあるのか
後継者不足の産業にはいくつかありますが、代名詞の一つと言えるのが林業でしょう。
どうして後継者が不足するのでしょうか。それは、儲からないからです。儲かる限り、後継者は自ずと出てきます。
ではなぜ、林業は儲からないのでしょうか。あるいは、本当に儲からないのでしょうか。現在の林業を儲からなくしている要素がいくつかありますので、見てまいりましょう。
◆経営規模の制約
山の所有者の方から、冗談半分にこんなことを言われたことがあります。「運び出して売るんだったら、俺の山の木をあげるよ。」と。
お話を伺ってみると、木を切り倒しても運搬に大変コストがかかるのだそうです。林道が整備されていないことがその要因です。
林道を作れば良いのですが、それもなかなか容易ではありません。なぜなら、昨今は山の所有が細切れになっていて、適切なルートで林道を通すことが困難だからです。
近年、所有していても利益にならない山は、遺産相続のたびに深く考えられることもなく気軽に分断されてしまいます。
分断された山の土地は、大変使い難くなります。林道を通したくても、他人の山に勝手に道を作るわけにはまいりません。
運搬に必要以上のコストがかかったら、売れる木材も売れなくなってしまいます。これが問題の一つです。
◆外材に勝てないのは、値段ではなくて質の問題
たとえ木を安く伐り出すことができたとしても、外材(輸入木材)の値段には太刀打ちできない、という説もあります。
そう思われがちですが、この説は正しくありません。
建築現場で外材が選ばれる理由の一つは、寸法が正確だからです。アジアなどから輸入されてくる外材は、乾燥処理がされているために変形が少なく、木材の寸法が正確なのです。
一方で国産材の7割は乾燥処理がされないまま加工されており、切った後で収縮・変形します。さらに反りなどを補正するための追加工が施され、その結果として国産材の寸法足らずが常態化しています。
また近年は、安定供給という面でも国産材は外材に勝てなくなっています。
外材の方が高価格な場合すらあります。人工乾燥などの設備の整った外材に、国産材は値段ではなく質で負けているということなのです。
◆財政出動の在り方を考え直そう
現在の林業の多くは補助金に頼っています。間伐については、7~8割を補助金がまかなっています。
しかし、主伐しても売れない材木のための間伐に、税金を投入し続けたところで何かを生み出すわけではありません。財政出動の在り方を考え直すべき時です。
本来、公共投資とは、民間による投資が困難な部門を担うべきものです。
民間の投資が難しいのは、例えば大規模なインフラ投資や、基幹産業の育成、基礎研究への投資や、宇宙開発などの大規模投資など、将来必要とされながらも、すぐに利益を生み出せない部門です。
利益が生まれ始めて市場が形成されたら、そこから先は民間の役目であり、政府は手を引くべきです。
逆に、補助金などをあてにして政府に依存する民間も、自身の役割を勘違いしていると言えるでしょう。
◆儲かる林業を生み出すための財政出動を
一方で、儲かる林業のモデルとなる、国内林業の成功事例もいくつかあります。
土地の所有権はそのままに、地上権だけを委託してもらって最適な林道を引くなど、山全体での最適な林業経営を実現した岡山県西粟倉村の例があります。
また、森林組合と山の所有者との信頼関係を築き、受託契約率が100%に近い、京都府の日吉町森林組合があります。
いずれも、権利関係の整理や地籍調査が成功の鍵です。それには、全国に散らばった地権者の同意を取らなければならず、大変な作業となります。
こういう部門こそ、政府は支援すべきでしょう。補助金の投入によりこの作業が進めば、全国各地で大規模かつ統一的な林業経営が実現できます。
あるいは、人工乾燥施設の設備投資への減税も一つの手でしょう。
国民の血税が充てられるわけですから、間伐などの、その場限りの補助金ではなく、将来のビジョンの伴う財政出動であるべきです。
現時点で様々な引っ掛かりがあるのが現在の日本の林業ですが、これらの引っ掛かりを取り除くことで、「儲かる林業」は十分に実現可能なのです。
引っ掛かりを取り除くために、規制緩和と併せて、効果的な財政出動を利用すべきです。
幸福実現党は、選挙のための票の買収と見られかねない財政出動は自粛して、未来ビジョンの伴う財政出動の実現に尽力してまいります。