ミカンコミバエ対策―官民連携した防除徹底の重要性
文/幸福実現党 鹿児島県本部 副代表 兼 HS政経塾 4期生 松澤 力
◆約1,398トンのタンカンを大量廃棄
昨年、鹿児島県・奄美大島では、果実に卵を産み付けて、腐らせてしまうなどの深刻な被害を及ぼす害虫の「ミカンコミバエ」が見つかりました。
ミカンコミバエのまん延防止や根絶に万全を期すため、植物防疫法に基づき昨年12月13日から緊急防除が開始されています。
緊急防除に伴って、農林水産省は奄美大島のポンカン・タンカン・マンゴーなどの果実全般とトマト・ピーマンなどの果菜類全般に移動規制を決めました。
移動規制はミカンコミバエが確認された地点から半径5キロの対象作物にかかるため、奄美大島全域の対象区域となり、移動規制の期間は2017年3月まで長期間続く予定です。
奄美大島では、ポンカンやタンカンなどの果物を島外へ出荷する農業が地域の基幹産業の一つとなっています。
タンカンは年生産額が4億円を超える奄美大島の特産品です。
しかし、今回のミカンコミバエ被害と緊急防除による移動規制により、昨年からの1月29日までの累計で、規制品目の全廃棄量の8割以上を占める約1,398トンのタンカンが廃棄されています。
また、ポンカンも約264トン廃棄されています(2/4奄美新聞)。規制対象作物は、国が県を通じて買い上げて廃棄することになっています。
◆再び侵入した国際的な大害虫
ミカンコミバエは体長6~7.5ミリメートルで、幼虫は柑橘類、バナナ、パパイヤ、マンゴーのほか35科にわたる生果実などの植物につく国際的な大害虫で、東洋の熱帯・亜熱帯・ハワイに広く分布しています。
日本では、小笠原諸島と奄美大島より南の南西諸島に分布することは知られていましたが、第2次世界大戦後、大害虫であったウリミバエの北上とともに、1974年には鹿児島県の屋久島と種子島にも侵入しました。
ミカンコミバエの雄成虫は、メチルオイゲノールという誘引物質(フェロモン)に極めて効果的に誘引されるため、殺虫剤とメチルオイゲノールを混合した製剤が当時開発され、ミカンコミバエ防除に大きな成果をあげました。
さらに、不妊化したミカンコミバエを人工的に増殖して野外に放つ、大規模な不妊虫放飼法によって根絶防除事業が生息地で順次行われてきました。その結果、1993年8月に与那国島での誘殺を最後に根絶が確認されたことをもって日本ではミカンコミバエが絶滅していました。
その後、再侵入に対する警戒は続行されていましたが、昨年奄美大島へミカンコミバエの再侵入が確認され、35年ぶりに対象作物の移動規制がかかる事態になりました。
◆官民連携を強化した防除徹底の重要性
前回、ミカンコミバエの侵入から根絶まで12年を要した背景には、喜界島に侵入したミカンコミバエが他の群島全域に拡散して定着したという経緯がありました。
現在、過去の教訓から、まずは奄美大島内での根絶を目指した対策が懸命に行われ、他の島への侵入防止の警戒が続いています。
鹿児島県庁大島支庁によると、昨年11月16日〜12月4日の1回目の航空防除では、奄美大島の約4万ヘクタールにミカンコミバエを駆除する誘引板 約12万2000枚が散布され、さらに2月5日までに2回目の航空防除で約15万枚の誘引板が散布されています。
また、地上でも各市町村で行政担当者や若手の生産農家の方々も参加して誘引板の設置が進められています。
ただ、ミカンコミバエの寄生場所である寄主植物は、放置された農園や空き家などもあるため、行政や農業関係者の方々の対策と同時に、民間企業や住民の方々とも連携を強化した駆除も重要となります。
12月以降、奄美大島のミカンコミバエの誘殺数はゼロが続いておりますが、気温が上昇しミカンコミバエの活動が活発となる今後の防除対策がより重要となります。
地元の基幹産業を守るとともに、日本の農業を守っていくため、官民連携を強化した防除対策の徹底が求められます。
多くの方々にミカンコミバエ問題の深刻さと、対策の重要性を理解していただくため、私もさらに努力して参ります。