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金融政策――これまでとこれから

文/HS政経塾第2期卒塾生 川辺賢一

◆米国の利上げと新興国の危機

安倍政権発足から3年が経過――。今年2016年は、上海株式市場の暴落から始まり、世界経済が大きく変動する予感をされている方も多いのではないでしょうか。

今年、世界経済はどのような方向に変化し、対して日本どのように対応すべきなのでしょうか。また、これまでのアベノミクスに対して、私たちはどのような評価を下すべきなのでしょうか。

本稿では、マクロ経済に最も大きなインパクトを与える金融政策を中心に、世界経済の動向を踏まえ、日本が向かうべき方向性について考えていきます。

そこで重要なのは、昨年12月、米連邦準備理事会(FRB)は9年ぶりの利上げを決定したことです。

以前から2015年中の利上げは予想されていたとはいえ、米国に追随して、中南米や中東諸国始め、利上げに踏み切る新興国は多く見られました。

新興国が米国の利上げに追随するのは、これまで高成長を見込んで新興国に流れていたマネーが高利回りの米国に反転し、新興国の資本流出による、債務危機や通貨暴落、物価急騰を防ぐためです。

しかし新興国にとって米国追随の利上げは、資本流出や債務危機、通貨暴落を防ぐ術にはなっても、返す刀で国内経済を傷つけます。高い金利では、企業は設備投資を、一般消費者はローンを組んだ大きな買い物を、控えるようになるからです。

実際、90年代に中南米やアジアで起こった債務危機や通貨危機の多くは、米国の利上げ局面、ドル高局面で起こっています。2007年のサブプライム・ショックも直接の引き金を引いたのは米国自身の利上げです。

米国の利上げは、国境を越えて、地に足が着かずに膨らんだ経済を崩壊させる傾向があるのです。

◆日本の金融政策

さて、新興国が米国に追随して利上げに踏み切るなか、日本では利上げの議論が見られないどころか、追加緩和の必要性さえ議論されております。

「追加緩和をすれば、円が弱くなる。これ以上、円を弱くして良いのか」という議論も一部に見られますが、事態は全く逆です。

なぜならば、米国の状況にかかわらず、日本は異次元緩和を継続できるというのは、「円」の本質的な強さを示しているからです。

野党等、一部に安倍政権の円安トレンドを批判しますが、もし現状の政策を変更して、円高にしようとするならば、米国以上の速度で利上げをするしかありません。

それは日本の企業家精神をつぶし、消費マインドを冷え込ませるばかりか、世界経済をも危機に陥れることになります。

異次元緩和の発動以降、日本の失業率は3.3%まで改善し、学生の就職率はリーマン・ショック前の好況時の水準を超えて改善しました。

これは異次元緩和の成果であり、もしも2014年4月の消費増税がなければ、政府が音頭を取らずとも、自然に実質賃金の上昇は始まっていたのです。

◆日本が描くべき国際戦略

さて、米国の利上げによって新興国経済に不安が広がるなかで、日本はこれを世界のリーダーシップを握るチャンスとして、捉えなければなりません。

IMFに働きかけるだけでなく、日本が中心となってチェンマイ・イニシアティブ等、IMFから独立して、動ける枠組みを強化していくべきです。

また、円の基軸通貨化、国際化に向けても政府として戦略を立てていくべきです。

円の国際化を進めていく上でも、現状の異次元緩和路線を継続、もしくは、より強化していく必要があります。

なぜなら、円の国際化に必要なのは、何よりもデフレから完全脱却し、日本経済の成長軌道を取り戻すことだからです。最終消費市場としての日本の魅力を高め、円で取引をする誘因を高めるためにも、デフレ脱却を最優先すべきなのです。

川辺 賢一

執筆者:川辺 賢一

HS政経塾2期卒塾生

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