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堂々と稼げる中小企業を増やそう!

文/HS政経塾4期生 幸福実現党・大阪本部副代表 数森圭吾

◆中小企業の事業承継と相続税

日本には中小企業が約390万社あり、これは全企業数の99.7%を占める数です。

また、雇用の約7割を担い、日本企業の売上高の約半分を占めているのも中小企業であり、地方においてはより中小企業の役割が重要となります。

中小企業庁の発表では、中小企業は年間約26万社が廃業しており、この原因として企業相続問題が大きく影響していると言われています。

これを示すかのように日経ビジネス2010年4月5日号の表紙には「相続が7万社を潰す」という見出しまで出されています。

利益を出し、雇用を生み、社会から必要とされている企業が永続的に発展するためには、経営者が交代する際などにスムーズに事業継承が行われる必要がありますが、ここで大きな壁となっているのが相続税なのです。

◆相続税の課税対象となる中小企業の非上場株

中小企業の社長やオーナーが死亡した場合、 その会社の株は残された家族などの後継者に引き継がれます。この際、この株が相続税の課税対象となります。

中小企業といっても、その場合の株の評価によっては相続税額が数億円に上るケースも珍しくありません。

ところが中小企業の非上場株式は、簡単に売却してお金に変えることができず、廃業を選択する企業もあるのです。

税理士の方への取材によると、家族だけで経営している個人事業主が廃業を選択するのはまだ経営者の判断としては楽なものです。

しかし、これが数十人以上の従業員を抱える中規模企業になると、経営者として雇用などの社会的責任が発生するため、簡単に廃業を選択することさえできないといいます。

そのようななかで経営者は相続財産を一部処分することによって納税資金を確保したり、納税のために銀行から借金をし、その返済に四苦八苦している経営者も多いそうです。

◆自社株の評価を落とす努力をする経営者

以上のように、事業承継における相続税の課税で企業の後継者にとって最も重い負担となるのが自社株にかかる税金です。

会社の株は企業価値を示す一つの指標であり、本来は株の評価額が高いことは経営者にとって喜ばしいことのはずです。

しかし、この株の評価額が高ければ高いほど事業承継の際に課税される相続税は高くなり、納税資金の確保が困難になります。

ここで多くの中小企業は利益を下げるなどの方法で自社株の評価を下げる努力をしているのが現状なのです。

企業とは本来、社会に対して良いサービスを提供し、利益を上げ、成長し、さらによいサービスを提供していく公的側面をもった存在ではないでしょうか。

しかし、多くの企業が税金対策のために利益を下げ、自社の評価を落とす努力が必要となる今の状況は、本来の企業の存在目的に対して矛盾を生んでしまっていると感じます。

◆他の主要先進国に遅れをとる日本

このような中小企業の苦しい実態を政府はどのように考えているのでしょうか。残念ながら日本は事業承継税制について主要先進国に大きく後れをとっています。

各国とも雇用や株の保有期間など一定の条件を満たせば、以下のように株の評価減などの負担軽減策が適用されます。

【各国における非上場株式の評価減・控除】
・アメリカ ⇒ 0.8億~1.3億円控除
・フランス ⇒ 75%評価減
・ドイツ  ⇒ 85~100%評価減
・イギリス ⇒ 100%評価減
・日本   ⇒ なし

このように、企業にとって最も負担の大きい株式への課税に関する特例処置は、主要先進国においては100%~80%前後の評価減や控除が適用されます。

これに対し日本における非上場株への課税に対する優遇措置は納税猶予制度(納税を遅らせる制度)しかなく、その適用条件も他国と比較して厳しいものとなっています。

このように、日本の税制面における事業承継支援は非常に限定的なものであり、各国と比較して日本は制度的に未熟であると言わざるを得ない状況です。

◆中小企業が堂々と稼ぐために

現行制度での中小企業の事業承継には資金に関する大きなリスクが伴います。税理士の方への取材によると、事業承継に関する相続税対策には10年以上の年数をかけて対策をする企業が多く存在するそうです。

そんななか、主要各国と比較しても日本においては非上場株の評価優遇制度がまったく整備されていません。

このため企業経営者は少しでも納税額を減らし、ダメージを和らげるために納税額の算出の基盤となる自社株の評価を下げる努力をしています。

本来の企業のあるべき姿から考えるとこれは「無駄な努力」であり、このような状況を放置している政府には大きな責任があると言わざるを得ません。

世に必要とされている中小企業が堂々と稼ぎ、永続性を確保するためにも、早急な事業承継税制の改革が必要です。

数森圭吾

執筆者:数森圭吾

HS政経塾4期生

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