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10月10日、北朝鮮が長距離弾道ミサイル発射実験?

文/HS政経塾スタッフ 遠藤 明成

日本の各紙では安保法案の衆院採決に伴う安倍政権の支持率低下を報道しています。

しかし、日本が「平和安全法制」を撤回したとしても、中国や北朝鮮が軍拡を止めるわけではありません。

◆10月10日に北朝鮮が長距離弾道弾の発射実験を行う?

例えば、共同通信は5月に北朝鮮が10月10日(朝鮮労働党創建70周年)にミサイル発射実験を行う可能性を示唆しましたが(「北『衛星』10月打ち上げ指示」5/19、47news)、最近はその準備の進展ぶりが各紙で報道されているのです。

★7月22日:聯合ニュース日本語版「北朝鮮北西部の基地長距離ミサイル発射台完成か」

増築された発射台から、2012年の「2倍の大きさの長距離ロケットを発射できる」という軍と情報当局の分析を紹介。

★7月25日:読売新聞電子版「北朝鮮、ミサイル開発強行…エンジン燃焼実験」

北朝鮮の東倉里(トンチャンリ)基地で射程1万キロ以上の弾道ミサイルのエンジン燃焼実験が7月半ばに行われたとの韓国政府関係者の見解を紹介。

7月28日に、北朝鮮の国連大使はニューヨークの記者会見で、このミサイル発射実験について「いかなる可能性も排除しない」と述べました。

10月10日に北朝鮮が大陸間弾道弾の発射実験を行う可能性はかなり濃厚になってきています。

◆1年経っても出てこない拉致問題の再調査報告

また、北朝鮮は昨年7月に日本人拉致被害者と特定失踪者の安否に関して再調査開始を約束しましたが、本年7月3日には調査報告の延期を日本政府に伝えています。

これに抗議し、拉致被害者家族と「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」は、7月22日に「全拉致被害者を取り戻す緊急国民集会」を東京で開催しました。

そこでは全被害者の一括帰国や帰国できない場合の制裁極大化などを求めることが決議され、同日には次世代の党の平沼赳夫党首を会長とする「拉致救出議員連盟」も制裁強化の要望書を政府に提出しました。

◆北朝鮮への制裁の現状

06年、09年、13年の核実験を行った北朝鮮に、日本は以下の経済制裁を課してきました。(以下、安全保障貿易情報センター「北朝鮮に対する経済制裁措置」を参照)

1北朝鮮籍者の原則入国禁止

2全北朝鮮籍船の入港禁止

3北朝鮮を仕向地とする全貨物の輸出禁止

4北朝鮮を原産地または船積地域とする全貨物の輸入禁止

5北朝鮮と第三国間との移動を伴う貨物売買、貸借、贈与に関する取引(仲介貿易取引)禁止

6輸入承認を受けていない、原産地または船積地域が北朝鮮である貨物の輸入代金支払の禁止

このうち、昨年7月以降、北朝鮮との人的往来の制限や北朝鮮籍船への入港禁止などが緩和されました。

「人道物資」の輸送などを北朝鮮籍船が行うことが容認され、北朝鮮に住所や事務所等を持つ個人・法人は同国で3000万円以下の支払いを行った場合に日本政府への報告義務を課されなくなったのです。(それ以前は300万円を超える支払いに報告義務があった)

◆誠意ある報告がなければ、北朝鮮への強硬策を打ち出すべき

再調査開始の見返りに制裁が一部解除されましたが、北朝鮮からの調査報告はないままに、本年も威嚇的な短距離ミサイルの発射などが行われました。

北朝鮮は短距離ミサイルを2月8日には5発、3月2日に2発、4月3日には4発発射。

150mの模擬弾ではありますが、5月9日には「潜水艦発射型弾道ミサイル」の発射実験を行っています。

この状況に対して、日本側は「遺憾だ」と言うだけではなく、政府として「被害者救出や拉致事件の真相究明に資する報告を出さない限り、制裁を再強化する」と明確に意思表示すべきです。

本年4月には、北朝鮮の人権侵害に対して、米政府当局者が「日本側から制裁の要請や(拉致の責任者、実行犯らに関する)情報提供があれば制裁対象として検討し得る」と語ったことも明らかになっています。(共同通信2015.4.19、47news)

引き伸ばし策を許さないために「8月末」等と期限を示し、報告の内容が杜撰であれば、全拉致被害者の帰国を要求すべきです。

その時には、制裁を再強化し、米国とも連携しながら包囲網を広げる強硬策への政策転換が必要だと言えます。

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

HS政経塾

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