国防で自由を守ろう!――アジアと日本の危機
HS政経塾第5期生 表なつこ
◆中国軍幹部が、埋め立てている人工島は「軍事目的」と公式表明
今年のアジア安全保障会議が、5月31日に終了しました。
最大の焦点は、中国による南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島の埋め立て問題でした。
アメリカのカーター国務長官が5月30日に埋め立ての即時中止を求めましたが、中国人民解放軍の孫建国副総参謀長は、最終日の31日、岩礁埋め立てや施設の建設は「中国の主権の範囲内の問題」とし、中止要請には一切応じない姿勢を公に明らかにしました。
さらには、埋め立てと施設建設について「軍事防衛上の必要性を満たすため」と明言。岩礁埋め立てについて、中国軍幹部が公の場で軍事目的だと表明したのは初めてとみられます。(5/31産経ニュース)
また中国は5月26日発表の国防白書で、海上戦力を強化する戦略を改めて明確に打ち出しています。
中国軍では、習近平国家主席から、海洋の要衝を先んじて押さえる「占領海洋」の内部方針も出ており、埋め立て以外の軍事拠点設置にも乗り出しています。(6/1読売新聞)
◆強まる中国の脅威
さらに中国は、南シナ海で領有権を争うベトナムやフィリピンに対して、「小国は挑発的な行為を取るべきではない」と強圧的な批判をしました。(6/1朝日新聞)
軍事的・経済的に巨大となった中国のこれらの発言から、アジアの海洋諸国にとっては、中国以上の軍事的な抑止力を持たない限り、中国による軍事進出という危機が避けられない状況が迫っていると言えるでしょう。
これは日本でも同じことです。日本で一番中国に近い県は沖縄で、沖縄県の尖閣諸島を中国が自国領だと言っているのは皆様ご存じのとおりです。
中国の方針が現状のままならば、沖縄に中国以上の軍事的抑止力がない限り、中国は沖縄県でも南シナ海と同じことをすると予想されるのです。
◆日本を守る抑止力としての駐沖縄米軍
日本は、世界第6位の海洋国家です。石油を運ぶシーレーン、海上の防衛はとても重要な要素です。これまで、日本の広い海を日本だけで守ることは難しく、アメリカの力に頼ってきました。
駐沖縄米軍の主な役割は、北朝鮮による朝鮮半島有事、中国による台湾海峡有事・尖閣諸島有事への抑止と対処とされています。
沖縄からなら、米軍がこれらの地域へ1日で駆けつけることができるためです。
◆日本の防衛体制の現状は?
このように在日米軍は、アジアの紛争に対する抑止力となっていましたが、現在はテロとの戦いで力が弱まったため、中国の力による一方的な現状変更の試みを許してしまったというのが、現在の南シナ海埋め立て問題の原因だと言えます。
これらの状況を踏まえ、日本では現在、自国を応分の負担で守る形、力の弱まったアメリカを補う形という双方の観点から、安全保障の法整備が進められています。
頼るばかりではなくアメリカと一緒に自国を守り、アジアの平和を脅かす者への抑止力になろうというのが、今の日本の考えでしょう。
◆地方自治の範疇を超えた翁長知事の動き
ですがその一方で、沖縄県の翁長雄志知事は、5月27日から6月4日の間、米軍普天間基地の辺野古移設反対を直接伝えるため、アメリカを訪問中です。
在日米軍については住民の方に十分なご納得をいただくことは必要でしょう。そのために、国が誠意ある意見交換を繰り返し、住民の皆様と相互理解を深めることが重要です。
ですが国民全員がかかわる問題である安全保障で、国同士が約束した取り決めについて、県知事が相手国まで反対表明しに行くというのは知事の分限を越えていると言わざるを得ません。
◆オールジャパンで自由を守ろう!
中国国内では政府への批判は認められず、もちろん対外的にも自国の主張以外を受けとめるという民主主義的考えがありません。今回のアジア安全保障会議でもその態度は変わりません。
沖縄に米軍がいなくなれば喜ぶのは中国で、その中国は多様な意見を認めない国家体制を取っているのです。
沖縄の米軍移設反対を民意としてそれが通ったとしても、その結果は「民意を抑えつける中国の政治体制に組み込まれてしまうこと」になりかねません。
「国防で一人ひとりの自由を守る」ことを多くの方からご理解いただき、オールジャパンで国防に取り組みたいと考えます。