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「健康は富を生み出す!」発想の転換による医療保険制度改革の必要性

文/HS政経塾部長 兼 幸福実現党事務局部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ

◆医療保険制度の改革関連法が参院本会議で成立

「医療費の抑制」――。社会保障改革の議論で多く出てくるワードです。

連日、衆議院での平和安全法特別委員会で、安全保障関連法案の議論に注目が集まっている中、医療保険制度の改革関連法が参院本会議で成立しました。

ポイントは、慢性的な赤字体質が続く、国民健康保険(国保)の立て直しです。

自営業者・年金生活者・非正規労働者が加入している国民健康保険(国保)の運営主体を2018年度から市区町村から都道府県に移して、運営規模を大きくして、財政基盤を少しでも安定させることです。

ただ、国保の運営を都道府県に移すだけで、問題点が解決するわけではなく、国保の赤字を埋め合わせるために、2017年度以降、毎年3,400億円の国費が投入されることになっています。

そのための財源確保として、大企業の健康保険組合(健保)や公務員の共済組合の負担を増やすことが盛り込まれています。

2018年度時点での健保組合の負担増は600億円(事業主負担含む)、共済組合は700億円という厚労省は試算しているようです(5/28朝日)。

<主な内容>
1.国民健康保険(国保)は2018年度から、運営主体を市区町村から都道府県に移す
2.大企業の会社員が加入している健康保険組合(健保)や公務員の加入する共済組合による75歳以上の後期高齢医療制度に出す負担金の増額
3.2016~18年度での入院時の食事代の段階的引き上げ(現在260円→460円)
4.かかりつけ医の紹介状を持たない患者が大病院を受診する場合の定額負担(5千円~1万円)
5.保険診療と保険外の自由診療を併用する混合診療の枠を広げる
6.「保険者努力支援制度」の創設:ジェネリック医薬品の使用割合を高め、生活習慣病の予防指導に取り組むなど、医療費の抑制に努める自治体に対して優先的に国費を配分
([参照]5/28産経・読売・朝日・東京)

◆赤字同士の「国保」と「健保」が支え合っている現状

赤字が広がる国保の財政支援をするために、健保や共済組合への負担が増えるということですが、健保の組合全体の2015年度の経常赤字見込みは1,429億円の見込みで、8年連続赤字の状態で、既に全体の約2割の組合が保険料率を引き上げています(5/28産経)。

つまり、国保と健保は、両方とも赤字の状態ですが、程度の軽い健保が、重症の国保を支えているという状況です。

ただ、お互いに赤字同士で支えあっており、そのため、入院時の食事代等の利用者負担の引き上げもしてはいますが、根本的な解決にはまだまだ長い道のりが続きそうです。

◆「健康でいることの価値」をもっと打ち出すべき

医療保険改革は、生活への影響も大きく、多様な意見があるため、どうしても対応が対処療法となってしまっています。

かかりつけ薬局など医薬品の使用を適正化などの議論が出ていますが、今後の方向性としては、「健康でいることの価値」をより実感できる改革を推し進めるべきだと思います。

健康ポイントの創設の議論も出ていますが、それが具体的にどのようなものになるか、はっきりとは見えてきません。

そこで、例えば、一定の健康要件を満たしていれば、「保険料率が下がる」、「減税措置が受けられる」など、明確なインセンティブを打ち出すべきではないでしょうか。

健康を維持する「値打ち」、「健康維持の努力は報われる」という認識が浸透することで、結果として医療費の抑制に繋げるという議論も積極的にしていくべきではないでしょうか。

このまま保険料率の引き上げ傾向が続けば、景気が上向いて賃金が上昇しても、使えるお金(可処分所得)が増えず、消費拡大も減速します。

その結果、そもそも保険料の原資となる、賃金そのものが減ってしまうことにもなりかねません。

健康であってこそ仕事ができて、活力ある経済の土台があって福祉も成り立っています。
「健康は富を生み出す」――、発想を転換しての医療保険制度改革の方向性も検討するべきです。

吉井 利光

執筆者:吉井 利光

HS政経塾部長(兼)党事務局部長

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