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ギリシャ債務の経済的帰結――EU問題からアジアの未来を考える

文/HS政経塾第2期卒塾生 川辺賢一

はじめに――東日本大震災から4年を迎えて

3月11日――未曽有の被害をもたらした東日本大震災から4年を迎えました。 あらためて震災によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。

また被災された方々が一日も早く以前のような平穏な日々を取り戻すことができますよう、わが政党としても努力して参りますことをお誓い申し上げます。

■ギリシャの債務問題

1月25日、ギリシャで反緊縮派の新政権が誕生し、一時、ギリシャのユーロ離脱やデフォルトの危機が高まりました。

先月20日のユーロ圏財務相会議では、国際通貨基金(IMF)や欧州連合(EU)からの金融支援が条件付で4ヵ月延長されることが決定されたものの、ギリシャ債務問題をきっかけにした経済危機の可能性は拭えていない状況です。

さて、20世紀における2度の世界大戦の中心となった欧州で、欧州統合の理念が掲げられ、それを経済統合という形でいっそう推し進めるために導入されたのが共通通貨ユーロです。

今、欧州で起こっているのは、「ドイツもギリシャも一つの欧州だ」という政治的理想に、「ドイツとギリシャは違う」という経済的現実が突きつけられ、この矛盾をいかに乗り越えていくかという問題です。

これは私たち日本人にとって、遠い欧州で起こる無関係な問題ではありません。

なぜならば、かつて私たち日本の先人たちも大東亜の理想を掲げたように、国家民族の違いを超え、一つのアジア、一つの地球に住むもの同士、共通の価値観を持って交流交易を活発にし、平和と繁栄の文明を築いていきたいと願うのは同じだからです。

ただ、どんな高邁な政治的理想が掲げられても、経済の論理を無視しては達成できません。

そこで、ここではEU問題をきっかけとし、日本やアジアの未来を構想する材料を提供できたらと考えます。

■解決策はユーロ離脱か

さて、ギリシャのように巨額の対外債務を負った国がその返済を進めるには、一般に増税や政府支出の削減等、緊縮策を進めることが必要だとされますが、各国で反緊縮派の政党が台頭しているように、単純な緊縮路線に行き詰まりが生じています。

これまでの緊縮派の政権が試みてきたように、国内での雇用、特にギリシャのように若年層の失業率が50%を超える状況を見過ごして、対外債務返済のために緊縮財政が断行されるのは、政治的な困難さだけでなく、経済的合理性の観点からも見直しが迫られるべきです。

本来、対外債務返済のためには財政収支だけでなく、国際収支、特に経常収支改善の方法が議論されてしかるべきです。ところが、ギリシャの場合、自国通貨を持たないため、そうした議論が見られません。

通常、自国通貨を持つ国であれば、対外債務返済の困難が予想された場合、自国通貨の為替が切り下がることで、極端な緊縮策をとることなく、経常収支が改善に向かいます。

英国病で苦しんだイギリスでも、労働組合の弱体化や規制緩和による競争促進といったサッチャー改革の実効的な効果が現れるのには、1992年のポンド危機を経る必要がありました。

当時、イギリスは欧州通貨制度(EMS)の一員として、マルクに自国通貨ポンドの価値を連動させておりましたが、ジョージ・ソロスらヘッジファンドによるポンド売り攻勢を受け、結局、ポンドは暴落し、イギリスはEMSからの離脱を余儀なくされました。

ところがイギリスはEMSから離脱し、自律的な金融政策の手段を得ることで、90年代、00年代と平均5%程度の成長率を保持することができたのです。

同じことをタイやインドネシア、韓国等、97年のアジア通貨危機を経た東アジア諸国も経験しております。

経済合理性からすれば、一時的な混乱覚悟で、ギリシャは自国通貨ドラクマを復活させるべきです。

■ギリシャのEU直轄領化

しかしギリシャのユーロ離脱は現在のところ、議論されることはあっても、実際、互いに望んでいない印象があります。

ヨーロッパの語源はギリシャ神話に登場する女神「エウローパ」とも言われますが、欧州発祥の地がユーロから離脱するのは、いろいろな意味で困難があるのでしょう。

では単純な緊縮策でもなければ、ユーロ離脱でもなく、現状の延長で事態が展開するならば、どんな状況が現れるのでしょうか。

現在、ギリシャは金融支援の見返りにEUやIMFで協議された経済改革案を実行しなければならない立場にあり、その延長線上で考えるならば、EUの認可なしで何一つ予算が決められない未来がいずれギリシャに訪れることが予想できます。

つまりギリシャにユーロ離脱以外の選択肢があるとすれば、主権や領土を担保に資金援助を受け続ける状態、すなわちEU直轄領となることです。

EUとしてはギリシャの主権を所有し、例えばギリシャをタックスヘイブンの「自由の大国」として、非ユーロ諸国に対抗するという手もあるでしょう。

ドイツは自国通貨マルクを捨てましたが、代わりにユーロを創設することで、欧州における影響力を保持、拡大させました。

私たち日本人も自国の財政収支だけに着目するのではなく、地球的視野を持った対外経済政策を構想していくべきです。

川辺 賢一

執筆者:川辺 賢一

HS政経塾2期卒塾生

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