戦後70年・取り戻すべき宗教的価値観――「建国記念の日」に考える
文/HS政経塾 第3期生 和田みな
◆今年の建国記念の日は皇紀2675年
2月11日は建国記念の日です。この2月11日は、『日本書紀』に記された初代天皇の神武天皇即位の日にあたるとされており、本年は2675年目にあたります。
2月11日は、明治5年に「紀元節」として制定され、明治22年には大日本帝国憲法の発布がこの日に合わせられたことから、憲法発布の記念日にもなりました。
戦前世代の方々は、紀元節の日は校長先生が「教育勅語」を奉読され、みんなで「紀元節唱歌」を歌いお祝いしたことを思い出されるようです。
この紀元節は敗戦後、教育勅語などと同様にGHQによる占領政策によって廃止させられてしまいました。
◆「建国をしのび、国を愛する心を養う」建国記念の日
戦後日本が独立を回復したのは、サンフランシスコ講和条約が発効された昭和27年のことです。国内では、その年から紀元節の復活運動が起こりました。
昭和33年に、国会に紀元節復活に関する議案が提出され、その後の様々な議論を経て、廃案、再提出を繰り返し、昭和41年に「建国記念の日」として、政令で国民の祝日に定められました。
その趣旨は「建国をしのび、国を愛する心を養う」ためです。また、ちょうど同じ時期には、教育勅語や修身科の廃止によって失われた道徳心を養うために、「道徳の時間」の創設もなされています。
日本が独立を回復した後の昭和30年代は、GHQによって奪われた日本の誇りを取り戻すために、積極的に試行錯誤が繰り返されていた時期でした。
◆戦後教育現場から抹殺された「宗教教育」
GHQが日本を精神的に武装解除させるため日本人から奪ったものは、紀元節や教育勅語、修身だけではありません。「宗教教育」もその一つです。
昭和22年に公布・施行された「教育基本法」では、第9条に「宗教教育」という項目が設けられ、その第1項では「宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない」と記されました。
それを受けて、昭和22年に初めて作成された学習指導要領においても、宗教的情操を育むために、宗教に関する多様な学習内容が盛り込まれていたのです。
◆日本人が大切にしていた宗教教育
終戦直後の日本人は、宗教教育を大切だと考えていました。終戦からちょうど1年後の昭和21年8月15日「宗教的情操教育に関する決議」が帝国議会で可決されます。
その最後の一文には「教育の根底に宗教的情操の陶冶を尊重せしめ、もって道義の昂揚と文化の向上を期さなければならない」と記されました。
当時、日本国憲法の審議中であった国会では、新憲法第20条の政教分離規定によって、国民が「新憲法は宗教教育を一切禁止している」と誤解するのではないか、との心配の声が上がっていました。
そこで、後世の人々のためにも、「新憲法下においても、宗教教育は教育の根底におかれるべき大切なものである」ことを明記したこの決議を採択したのです。
◆宗教こそは、道徳に生命を、人類に希望を、政治に理想を、世界に平和を与へるもの
この決議の可決時、当時の文部大臣であった田中耕太郎文部大臣は国会で次のような演説を行いました。
「終戦第一周年の今日、宗教的情操教育に関する決議が成立致しましたことはまことに意義深いことでありまして、これについて我々は深く感銘致します次第であります。(中略)」
「実に宗教こそは、道徳に生命を、人類に希望を、政治に理想を、世界に平和を与へるものであります。(中略)御決議の精神を教育の各方面に活かしまして、以て我が教育に於て民主主義的、平和主義的精神を具体化することに万全の努力を致します覚悟であります。」
現在の「宗教=タブー」という教育現場、文部科学省の態度からは想像できないこの演説は、当時の日本、国会議員、そして日本人の価値観を表している名演説であると思います。
宗教教育は、民主主義的、平和主義的な精神を養うものとして考えられていたのです。宗教教育は、まさに日本国憲法の精神を支える根源にあるべきものといえます。
◆終戦70年の節目の年に、宗教教育の復活を
安倍総理は「戦後レジームからの脱却」「日本を取り戻す」を合言葉に、戦後体制の見直しを行っています。
また文部科学大臣も「教育勅語の再評価」を提唱しており、自民党が行っている「戦前=全て悪」という偏ったものの見方を改め、日本人の誇りや素晴らしい歴史、文化を正しく評価し、再構築しようとする姿勢は評価します。
その一方で、「宗教」は一貫してタブー視され続け、現在改革が進む道徳の教科化の議論においても、宗教教育の重要性や必要性は公には話し合えないという現状があります。
先人の遺志を知り、真の意味で独立を取り戻すためにも、終戦70年目の節目の本年こそは、日本の教育の根底に宗教的価値観を取り戻すべきです。
「建国をしのび、国を愛する心を養う」建国記念の日に、宗教教育を日本の教育に取戻し、これによって日本が精神的建国を果たすことを切望します。
執筆者:和田みな