生涯現役人生のモデル、ここにあり!――徳島県上勝町視察を通して
文/幸福実現党・兵庫県本部副代表 みなと 侑子
◆「夢は100歳まで現役でこの仕事をすること!」
メディアでよく取り上げられる徳島県上勝町。
おばあちゃんたちが“葉っぱ(つまもの)”を全国に出荷し、それらが高級料亭で使われていることで大変有名です。
今では、日本の「つまもの」のうちの8割が上勝町産となっており、立派なブランドです。
今回、視察に伺い、実際にいろどり事業に従事していらっしゃる方にお話を伺うことができました。その中で、メディアでは感じ取れなかったことを多く学ぶことができました。
上勝町の現在の人口は1749人で841戸。
四国で最も人口が少なく、高齢化率は51.34%で徳島県下一です。
どこにでもある普通のいなかだった上勝町が、男尊女卑、補助金頼み、村社会特有の嫉妬や噂話から抜け出し、一人一人がいろどり事業を通して輝く今に至るまで、30年の年月がかかりました。
いろどり事業に従事していらっしゃるのは、70代、80代の方々ですが、町営の老人ホームは行く人が減ったためにつぶれ、老人一人当たりの医療費は県内最下位になりました。
それだけでなく、最高で1000万円、平均年収が約130万円であるため、税金を納める側にも立たれるようになりました。
一人一人が自分の足で立って生きている、何歳になっても世の中に貢献できる。
「この喜びはね、言葉に表せないよ」
そう目を輝かせておっしゃるおばあちゃん。働くことができる喜びは、お年を取られた方こそ強く感じていらっしゃいます。
◆おばあちゃんたちは好奇心旺盛で研究熱心、そしてとっても負けず嫌い
皆さん、大変研修熱心です。料理人に来てもらっての勉強会、北新地や京都まで出て料亭で懐石を食べ、自分たちの商品がどのように使われているのかを研究します。
笹の葉でも、そのまま出すのではなく、笹船にするなどひと手間加えることで付加価値がつきます。
それだけでなく、お正月飾りなどは、それぞれのおばあちゃんのセンスが発揮され、自分の名前がついた商品があることにびっくりしました。お互いに作り方を教えあうこともあるそうです。
一方で、一人一人が大変負けず嫌いでもあります。
毎朝8時、10時、11時にそれぞれ農協から送られてくる注文に対して、受注するためにはパソコンを使わなければなりません。
私が訪問したお宅のおばあちゃんは、スマホとパソコンを使いこなした上に、パソコン画面上に黒いマジックでマークをつけておく(受注画面になったときに受注ボタンをすぐに押せるよう、カーソルを早めに移動させるため)という裏技まで使っていらっしゃり、大変驚かされました。
(ただその裏技も、一年前にテレビ取材が入った際に公開されて皆が知ってしまったため、今では受注がなかなか取れないそうです)
ご自身が出荷した商品がいくらの値がついたのか、昨日の売り上げはいくらで、今月はいくらだったのか、という数字はすべてパソコンで見ることができます。
同じ商品を出荷したとしても、自分のものが他の人の商品よりも高かったか、安かったかということもわかります。そこでまた、反省からの創意工夫が生まれるようです。
さらに、いろどり従事者内での月別・商品別の順位もパソコンで確認でき、これらがさらに負けず嫌い魂に火をつけています。
この負けん気、向上心こそが若さの秘訣であり、刺激を受けながら生きることが大切なのだと改めて感じました。
◆いろどり事業を通して得た時間とお金は人生の“いろどり”
今回お伺いしたおばあちゃんにいろどりで稼いだお金の使い道を尋ねたところ、脳こうそくで倒れた旦那様のため、家じゅうをバリアフリーでリフォームされたとおっしゃいました。
ご主人がお元気な間は、北海道から九州までお二人で旅行されたそうです。
まさにいろどり事業によって、人生にいろどりを添えるための時間とお金を手に入れられたのです。
皆さんのお金の使い方は、自分のためよりも家のため、子孫のため。
家の中で最も稼ぎがいいのがおばあちゃん、この家はおばあちゃんのお金で建てた、という家もあるそうです。
子孫に尊敬のまなざしを向けられて毎日働けるなんて、なんて素晴らしいことだろうと思います。
いろどりのおばあちゃんたちはみな生き生きとされています。
上勝町をモデルにつくった映画「人生、いろどり」において、80歳になって映画デビューされた方もいらっしゃいます。
心に目標があり夢があり希望があり、生きがいがあるから輝いているのだと心底感動しました。
政府が今なすべきは、薄っぺらな「地方創生」の掛け声の下で補助金をばらまくのではなく、各地域を活性化させたいと頑張っている企業家を後押しすることだと思います。
上勝町がここまで有名になったのも、横石さんという一人の男性が強い志を持たれ、長い忍耐の時期を経て、いろどり事業を守り育ててこられたからでした。
貴重な知恵と経験をお持ちの方々に更に生きがいを持っていただけるような仕事を作り出すこと、生み出すことこそが、高齢化社会に対して今なすべき最大の福祉であると共に、日本が世界に打って出るための戦略であると強く感じています。
参考書籍:「そうだ、葉っぱを売ろう!」横石 知二著