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60年ぶり農協改革の行方

文/幸福実現党・岐阜県本部政調会長 加納有輝彦

◆大詰めに入った農協改革

昨年6月、政府の規制改革会議の決定に端を発した農協改革が、大詰めに入りました。

規制改革会議は、農協組織の頂点に立つJA全中が経営指導で地域ごとの農協を縛る権限をなくし、個々の農協、農家の創意工夫を伸ばす環境に変えることは必須条件だとし、安倍首相は「地域の農協が主役となり、農業の成長産業化に全力投球できるように抜本的に見直す」と明言しました。(日経Web 14/6/16)

そして昨日、8日夜、全国約700の農協改革を巡り、政府・自民党と全国農業協同組合中央会(JA全中)の折衝が、大筋決着したと報道されました。(日経Web 2/9)

その内容は、規制改革会議の提言通り地域農協を束ねる JA全中の監査・指導権をなくし、2019年3月末までに一般社団法人に転換するということです。(現在、全中は特別民間法人)1954年に始まった中央会制度をほぼ60年ぶりに見直す改革となります。

これらの改革は、今国会に農協法改正案等に盛り込まれ提出される予定です。(農協法、農業委員会法、農地法ほか)

◆農協組織の現状

さて、農協の組合員は969万人(正組合員472、准組合員497、2010現在)。基本的に市町村レベルの地域農協の数は、90年頃には概ね一市町村一農協でしたが、その後合併が進み、現在約700となり、市町村数1719の半分以下となっています。

地域農協は、農業、生活物資の供給、信用(銀行)、共済(保険)などJAグループが行うすべての種類の事業を行っています。

さらに都道府県以上の組織として連合会があり、農業、信用、共済などの機能ごとに組織されています。それぞれの機能の頂点に、全国レベルの全中、全農、農林中金、全厚連、全共連があります。

◆JA全中の監査権の廃止

政府・自民党の農協改革議論の中で、今回中心の論点は、JAグループの指導機関とされているJA全中の地域農協に対する監査・指導権の廃止についてでした。

廃止の理由は、「全中の監査・指導が地域農協の自由な経営を阻んでおり、組合長の経営者としての自覚も阻害し、中央集権の弊害が見られる」というもので、地域農協の自由な創意工夫による成長を促すというものです。

現在、農協法37条の2は、貯金200億円以上のJAなどに全中による監査を受けなければならないと全中の監査権を定めています。また、全中は、地域農協から賦課金を徴収する強い権限も与えられています。

全中の監査部門「JA全国監査機構」の人員は、560人で、うち農協監査士が340人、公認会計士は30人。この態勢で約640の地域農協の監査を行ってきました。

改革案は、この監査部門を、社団法人化に併せて分離し、新監査法人を設立します。独自の「農協監査士」が担ってきた監査を民間の公認会計士が行うようにし、依頼する監査法人も各地域農協が選択できるようになります。

◆農協改革に強烈に反対してきたJAグループ

今回、合意に至りましたが、JAグループは一貫して、改革に反対を表明してきました。

特に、全中の監査・指導が地域農協の自由度を縛っていると政府から度々指摘された事に関し、「根拠のない絵空事」と猛反駁し、日本農業新聞は、全JA組合長に緊急アンケートを施し、1/29日付紙面で以下の通り大見出しを打ちました。

『組合長95%が否定』~本紙全JAアンケート政府認識と正反対~「全中の指導が、JAの自由な経営を阻んでいる」との政府の理由に対し、全国のJA組合長の95%が「そうは思わない」と、全く逆の回答を突きつけた。

これほどの猛反対にも関わらず、全中が合意したのは、政府もそれなりの譲歩をしたと考えられます。

その一つとして、産経は、全中の万歳会長は、農家以外の准組合員の利用制限導入を避けることと引き換えに骨格の受け入れを決めたとみられると報じています。

政府の譲歩が、農協改革を骨抜きにするものでない事を、注視していく必要があります。

◆農協改革は農政改革

幸福実現党は、現在の農政の最大の課題の一つに、多額の国民負担により、国内米価を高水準に維持し、結果、小規模の兼業農家を滞留させ、意欲ある専門農家の大規模化を阻害していることがあると考えます。

その結果、コストダウンが図れず、国際競争力が持てない、結果、米は特別に関税を必要とするという悪循環から抜け出すことができません。

今回の農協改革が、地域農協の自由性、独自性を開花させ、農業の生産性の向上、食料安全保障の強化、国際競争力の向上に繋がっていくよう、注視していくと同時に、政策研究・提言も行ってまいりたいと考えます。

加納 有輝彦

執筆者:加納 有輝彦

岐阜県本部政調会長

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