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止まらぬ原油価格の下落――日本への追い風とするためには

文/HS政経塾部長 兼 政務本部部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ

原油価格が50ドルを割って下落しています。背景には原油の供給過剰、ドル高傾向など様々な要因が考えられますが、今後どのような影響を世界に与えるのでしょうか。

アメリカでは、原油価格の大幅下落によって、大型のパイプライン建設プロジェクト(キーストーンXLパイプライン)の実行について採算面からも疑問が投げかれられ、また、資金規模の小さい中堅のシェールガス開発会社の経営破綻も起きています。

エネルギー輸出国にとっては、厳しい局面が続きそうです。それでは、日本への影響をどう考えるべきでしょうか。

◆日本にとっては追い風となりうる原油価格の下落

物事には両面あるように、原油価格の下落は、マイナス面だけではありません。
世界銀行は、原油価格の大幅下落が、原油輸入国の経済成長に大きな利点となるという報告書をまとめています(1/8日経夕刊3面)。

日本も今までは、原油高と円安によって、燃料代の高騰が続いていましたが、原油価格の低水準が続けば、この傾向にも歯止めがかかることが期待されます。これに加えて、原子力発電所の再稼動が進めば、電力料金も落ち着いてくることが期待できそうです。

◆国を富ませる長期構想を出せるか

では、どうすれば原油価格の下落を日本にとっての追い風にできるのでしょうか?キーワードとして「長期構想」を挙げたいと思います。

1月7日のフィナンシャルタイムズでは、「債務まみれの世界」(A World of Debt)というタイトルで、各国政府の悪化する債務状況について論じている記事があります。

その中で、政策担当者は、債務問題を解決する際に、あるジレンマに陥るということが指摘されています。

・政府があまりにお金を使わない(緊縮財政)と、経済成長を阻害して債務状況が悪化する。しかし、財政出動をして経済成長を促すと、その分、債務が積み重なり、市場を心配させてしまう。

・また、経済成長が最もシンプルな解決策だが、魔法で起こせるはずもなく、必要されるときになかなか経済成長できないものである。
(Financial Times, “A World of Debt,” 2015.1.8, Page5)

これは、その通りかもしれません。ただ「ジレンマだから困った」で終わっては、何も生み出せません。経済成長を促す環境をどこまで演出できるかという「智慧」が、世界中で問われているのではないでしょうか。

◆低利回りを逆手に取れ!

何が次の産業の種になるのかは、どうしてもやってみなくては分かりません。だからこそ、企業にとってもお金を使って新しいチャレンジをしたくなるような環境づくりが欠かせません。

今、原油下落によって、安全資産である国債が求められており、日本やアメリカの長期国債の金利も下がっています。つまり、安く借りられる状況となっているわけです。

安全資産を求めている一方で、もっと高いリターンを求めているマネーも存在しています。その期待に応える一つのヒントとして長期投資です。
通常であれば短期で売買するところが、リターンが見込めないので、長期の債券を買いたいというニーズも生まれてきています。

将来、芽が出ることが期待される様々な事業に、長期間投資するマネーを呼び込むことが不可欠です。銀行がなかなか踏み出せなければ、そうした長期投資マネーの呼び水として、政府として何ができるのかをこそ考えるべきです。

◆付加価値を創造するインフラ投資を!

例えば、リニアモーターカーの交通革命の誘発や、宇宙開発の積極的なテコ入れなどを検討してはどうでしょうか。既存のインフラの延長ではなくて、新しい付加価値を創造しうるインフラへの投資を喚起しようという発想が大切です。

財政出動といえば、基本的には既存のインフラへの投資という「常識」がありますが、付加価値を創造しうるインフラを構想して、投資する大胆なチャレンジはどこの国もできていません。

◆資源国への外交カード

ちなみに、外交面では、ロシアなどの資源国は原油安がこれ以上続けば、経済的にかなり厳しい状況となります。その場合、日本としては経済援助を一つの外交カードとして使えることも、したたかに考えておくべきです。

債務問題の解決といえば、「増税」「予算カット(緊縮財政)」「社会保障の給付削減」の何かをおこなうことが「常識」なのかもしれません。
しかし、それだけでは、どうしても立ち行かなくなってきているのが実状です。ゼロサムの発想から抜け出して、「富を増やしうるお金の使い方」を政府としても、真正面からトライしていくべきです。

お手本となるランナーはもういません。発想を切り替えて、日本から道を切り拓き、ルールメーカーとなる気概を持つべきです。

吉井 利光

執筆者:吉井 利光

HS政経塾部長(兼)党事務局部長

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