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「いじめ防止対策推進法」で子どもたちを守る事ができるのか

文/政務調査会チーフ 小鮒将人

◆平成25年国会で「いじめ防止対策推進法」が成立

平成23年、滋賀県大津市でいじめを苦にした自殺事件が発生しました。当初、事件の当事者となった中学校及び、教育委員会は、この事件について「いじめ」が原因でない、と主張していました。

ところが、以下のような実態が明らかになり、国民に大きなショックを与えました。

○ 「自殺の訓練」をさせていた
○ 実家のキャッシュカードで40万円を恐喝
○ 万引きを強要された
○ 死んだハチを食べさせられていた
○ ズボンを下ろして笑いものに
○ 睡眠薬を飲ませて公園に放置された

これらの事を知っていたにも関わらず、学校側、大津市教育委員会は「いじめはなかった」と、隠ぺいを行っており、大津市には連日、国民からの抗議が続きました。

このような実態を受けて、政府は昨年、「いじめ防止対策推進法」を成立させました。

◆幸福実現党が進める「いじめ対策」とは

幸福実現党は、2009年の立党当初から「いじめ対策の必要性」を主張し、現時点は、主要政策の柱の一つとして「いじめ禁止法」の推進を入れています。

その中で、私たちは、二つの論点について訴えてきました。

一つには、現場の教師が「いじめは悪い」をはっきり言わず、曖昧な決着をつけようとしている事。

いじめの事例を調べてみると、解決のため、教師が加害者と被害者の間で「民主的に」話し合いを持たせて解決としている事が多いのですが、これは「いじめが悪い」という事が全く伝わっていないので、加害者も、悪いことをした、という意識が起きません。

もう一つは、教師、学校、教育委員会による「いじめ隠ぺい」に走るケースが非常に多い、という事です。

先般、文科省の統計で、「小学校のいじめ件数が過去最高」を記録した、という報道がありました。

一見、いじめが深刻化しているかのような印象を与えますが、私は、こうした報道に対して、逆に「隠ぺい」が減少し、表面化させることで、学校としても真剣にいじめ撲滅に取り組むことができるという意味で、評価するものです。

しかし、数年おきに「いじめによる自殺」の報道に接するにつけて、教師や学校がいじめ隠ぺいに走るケースはまだまだ存在している事が分かります。

残念ながら、子供たちが最後、自殺という手段を選択する過程で、現場の教師がいじめに隠ぺいし、ひどいケースになると、いじめに加担している事もあり、本来あってはならない現実に子供たちが絶望を感じている事が大きな原因と見られています。

幸福実現党は、子供たちの将来を守るためにも、いじめを決して許してはいけない、そのためには上記に掲げたような二つの論点を外すことができないと考えています。

◆「いじめ防止対策推進法」に欠けているもの

「いじめ防止対策推進法」そのものについては、私としても、まずは国が「いじめ対策」を進めていく、という決意を表明したものとして評価すべきかと思います。

ところが、この法案には、先に掲げました大切な二つの論点について、ほとんど考慮されていないのです。

大津の事件に限らず、子供たちが最後、自らの生命を断つにいたるのは、現場の教師がいじめの事実を知っていながら、子供たちを守ろうとしていない事が大きな原因であったのです。

そのためには、法案に教師や教育委員会の隠ぺいに対する処罰を記載するべきでありましたが、残念ながら結果としては、実現されませんでした。

この事については、すでに昨年7月、当HPRニュースでもお伝えしたところです。

連続する「いじめ自殺」~いじめを止める唯一の方法とは?~
HRPニュースファイル 2013.7.19

http://hrp-newsfile.jp/2013/872/

◆現在、自治体で議論されている「いじめ防止」に関する条例

国会での「いじめ防止対策推進法」の成立を受けて、各自治体で「いじめ防止」を目的とした条例の制定作業が行われています。

私の地元である東京都青梅市でも「いじめ防止に関する条例」の議論が進んでいます。私も、住民の一人として、このような取り組みが行われている事に対して、大きな評価をするものです。

しかし、内容を見る限り、「いじめ防止対策推進法」同様に

1、いじめ加害者に対しての処罰規定が非常にあいまい。
2、隠ぺいを行った教師、校長、教育委員会については、厳重な処分を行う事。
の規定が全くない。

という事が明らかでした。

私自身、「地域の子供たちをいじめから守りたい」との思いから、パブリックコメントで青梅市あてにメール送信し、上記について明確に対応することを求めました。

残念ながら、青梅市からパブコメが届いたのかについて返事が全くなく、本気で「いじめ防止」に取り組もうとしているのか、大きな疑問が残りますが、私としては、今後ともこの条例についての議論の行方をしっかりと見守っていく所存です。

◆「いじめは犯罪」だと言い切る勇気が必要

戦後の、左翼的な考え方によって、教師は生徒と同じ立場であり、「民主主義的な解決」という大義名分を隠れ蓑にして、善悪をはっきり伝えることを避けてきたツケが、この「いじめ」という問題に現れてきたものだと思います。

学校側として、先ず求められる事は、勇気をもってはっきりと「いじめは悪い事」「いじめは犯罪」と子供たちに伝えることです。

子供たちも善悪をはっきりさせることで、「悪い事」はしていけない、という気持ちが出てきます。

現在、行政で進められている「いじめ防止」の動きについては、大きな前進ではありますが、まだまだ善悪をはっきりとすることを拒否している印象を受けます。

未来を担う子供たちを悪から守るためにも、大切な論点が骨抜きにならないよう、お住まいの自治体での議論に注目して頂きたいと思います。

こぶな 将人

執筆者:こぶな 将人

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