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ノーベル物理学賞――3氏から学ぶ「科学技術大国日本」への道

文/政務調査会 佐々木勝浩

◆三人の日本人が受賞したノーベル物理学賞

本年度のノーベル物理学賞は、青色発光ダイオード(LED)を開発した赤崎勇氏(85歳)、天野浩氏(54歳)、中村修二氏(60歳)の3氏が受賞しました。

すでに1960年代に赤色と緑色の発光ダイオードは出来ていましたが、青色発光ダイオードは、透明な結晶を得ることが難しく「20世紀中の実現は困難」と言われていました。

赤崎氏(現・名城大教授)は、青色LEDをつくる素材として世界の研究者が敬遠した「窒化ガリウム」に1970年代から注目し、そのもとで実験を担当したのが、当時大学院生の天野氏です。

赤崎氏と天野氏は試行錯誤を繰り返し、ついに1989年、窒化ガリウムの結晶化に成功、赤崎氏と天野氏の生んだ青色LEDの関連特許は、2013年までに累計56億円という収入(国立大学全体の特許収入の大半)をもたらしました。

赤崎氏の「我ひとり荒野をいく心境で研究を続けた」、天野氏の「とにかく人の生活を良くしたかった」との言葉は、まさに「研究者の魂」を表しています。

もう一人の中村氏の功績は、1993年にLEDを量産化する装置の開発に成功したことで、実用化の扉を開いたことです。(10/8読売)

こうして3氏が、発明し実用化した青色LEDと既存の赤色と緑色のLEDと合わせて、光の三原色がそろったことで多彩な色が表現できるようになり、コンピューターの情報処理、伝達や交通信号、大型デスプレイ、カメラのフラッシュ、スマートフォンの画面など幅広く使用されています。

◆世界を明るくするLED

ノーベル賞の委員会が最も評価したのは、LEDは少ない消費電力で灯りを提供できるため「地球規模の省電力化」を実現する道を開いたことです。

LEDは、消費電力が少なくて済むので、発展途上国の電力源も十分に支えることができ、2020年に照明器具だけでも世界の市場規模は5兆円を超えると予想されています。(10/8読売)

一般的に白熱電球の寿命は40日程度、蛍光灯の寿命は400日程度でしたが、さらにLED電球は、4000日まで寿命を伸ばすことに成功しました。すなわちLED電球は10年以上使用できます。まさにエジソンを超えたと言ってよいでしょう。

また「発光効率」(同じ電力で得られる明るさの強弱)を比べると、LED電球は白熱電球の約6倍、蛍光灯の約1・3倍と高く、さらに技術開発が進めば、蛍光灯の2倍以上に発光効率を高めることも可能になります。

◆科学技術立国への課題

今回のノーベル賞受賞者で日本人は22人になりましたが、うち自然科学分野が19人を占めています。これは日本の研究者の優れた技術力の証です。

しかし、科学水準の目安となる論文の発表数は、2000年前後は世界第2位でしたが、現在は中国などに抜かれ5位に低迷しています。

文科省によると2012年までの3年間の平均で日本の研究者の科学論文は、6万3928本で5・4パーセントで、20年前の7・8パーセントから下がっています。一概に言えませんが「ゆとり教育」の影響が出ているのかもしれません。

もう一つ科学論文が低迷している理由として考えられるのが、日本政府の科学技術軽視です。かつては科学技術庁がありましたが、現在は文部科学省として統合されています。文系頭の大臣が科学面まで管轄し予算まで握ってしまうのは科学技術の発展に弊害があるのではないでしょうか。

科学技術教育を重視することはもちろんのことですが、科学技術を学んだ大学院生が就職の先もなくアルバイトや契約社員に甘んじなくてはならない現状は、まさに日本政府が優秀な人材を生かしていない証です。

今回ノーベル賞を受賞した中村氏がアメリカへ移住し米国籍を取得した理由を「こちらでの研究では米国の国籍がないと軍の予算がもらえないし、軍関係の研究もできない」(10/8日経)と述べているように、まさに日本は優秀な研究者が活躍できない環境にあるのです。

一般的に科学技術には「軍事技術」と「民間技術」があります。アメリカは、軍事技術を手に入れる目的から国防総省が科学技術開発のためにプロジェクトを組み、研究者に資金を提供しています。

そこで開発された技術を民間に商用目的でおろしているのですが、これがアメリカの科学技術を支えています。GPSの技術も軍事用から商用に転化したものです。

◆日本が科学技術立国になるためには

「民間技術」は、日本が進んでおり、経済産業省の外郭団体が基礎研究の実用化を支援するため企業に資金援助をしたりしています。今回のノーベル賞受賞で、産業技術総合研究所は、産学の連携を図り人的交流や共同研究を行う構想も発表しています。(10/11日経)

日本の企業に眠っている技術を探し出して支援するのも良いのですが、日本を科学技術大国にするためには、アメリカの国防総省を参考に、もっと積極的に国家として科学技術のプロジェクトを立ち上げる方法もあります。

そして数十ある科学技術系の独立法人と文科省の科学技術部門を統合し「科学技術省」として独立させるのです。そこに、優秀な研究者を集めて研究をしてもらいます。研究者の雇用にもなり、優秀な人材を生かすこともできます。

資金は官民ファンドを設立し、国民にも科学技術開発に投資してもらう形にすれば、税金で賄わなくても、眠った国民の資産を有効に活用できます。国民も国が関わる事業であればリスクが低く安心して投資できます。

こうして日本の優秀な研究者の技術を世界の繁栄発展に生かすことが大切です。今回のノーベル賞受賞を日本は大きな教訓としなければなりません。

佐々木 勝浩

執筆者:佐々木 勝浩

幸福実現党広報スタッフ 課長代理

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