GDP確定値、「年率換算マイナス7.1%」をどう見るか
文/政務調査会チーフ 小鮒将人
◆予想を大きく超えた厳しい結果
去る9月8日(月)、内閣府より、2014年度第1四半期(4月~6月)のGDP確定値が、下方修正され年率換算マイナス7.1%と発表されました。
すでに速報値として、年率換算マイナス6.8%という数字が出ており、ある程度の予想は、されてはいたものの、結果としては予想以上の厳しい印象を与えるものとなりました。
3月までの駆け込み需要の反動が大きな原因と思われているものの、現在のデフレ下の中で、消費増税による実質的な値上げに対して、国民が家計の防衛に入っている様子が伝わります。
また、今回のGDP確定値発表についてのマスコミ報道には、大きな違和感を覚えます。
8日(月)の夕刊各紙は、一面での報道が行われていましたが、翌9日(火)の朝刊では、一面での報道はほとんどなく、夕刊を購読していない多くの国民にとって、知るべき事実が、知らされておらず、いわば「マスコミによるアリバイ作り」が行われた状況です。
◆なぜ、安倍総理は「7月-9月のGDP速報値」で決定するのか
さて、産経新聞の田村解説委員は著書「消費税の黒いシナリオ」の中で「なぜ安倍総理は7-9月期の速報値に基づいて増税の判断をするのか」について呆れる理由を示しています。
それは、1997年の体験に基づいたもので、当時、増税後4月-6月期の数値は買い控えなどの理由でマイナス3.5%という厳しいものとなりましたが、次の7月~9月期になると逆にプラス1.5%程度の上昇を示したというのです。
これは、1月-3月→買いだめ、4月-6月→買い控え、というサイクルの中での結果と思われますが、今年度の7月-9月期の速報値についても同程度の予想になると見越して、財務省側が安倍総理に提言したようです。
さらに、昨年も「速報値」と「実際の数値」との間に大きなかい離があったように今回も同様に速報値が「上ぶれ」する可能性も否定できません。
要するに、実態から離れた数値に基づいて大切な判断が下されることになるのです。これが、本当に国民の幸福のための政策と言えるのでしょうか。
◆黒田総裁の「増税容認」発言は、日銀の責任放棄
また、日銀の黒田総裁について、公約として掲げた2014年度の「2%成長」は、達成は困難との見方が広がっています。黒田総裁は、すでに「増税推進」という立場を明確にしていますが、今回の厳しいGDP確定値の発表にも関わらず、会見では変わらず「増税は必要」という発言を行っています。
本当に公約である2%の目標達成を目指すならば、増税ではなく、減税を訴えるべきではないでしょうか。
その証拠に2013年度は「アベノミクス」で上向きになった景気が原因となり、税収増になっています。黒田総裁が元大蔵官僚としての悲願である消費増税を優先させることは、国民への責任放棄といえないでしょうか。
◆日本の年間GDPは20年間、およそ「500兆円」で変わらず
政府が消費増税の理由として言い続けてきたのは、「これからの高齢社会の中で、社会保障費が必要だから」というものでありますが、こうした停滞のイメージを政府が発信し続けていると、将来の繁栄への希望がどんどん摘まれていきます。
1990年代以降、現在まで「失われた20年」と言われています、この間、現役世代と言われる20歳代から50歳代の、第一線で働き続けた世代の家計にとって、厳しい時代が続きました。
銀行をはじめとする多くの大企業が崩壊した事などは、日本にとって必要なイノベーションかもしれませんが、一方、現役世代の賃金はほとんど上昇せず、「デフレ経済」の大義名分の元で、生活水準を高めることができませんでした。
その結果、日本のGDPはおよそ500兆円(5兆ドル)の水準で変化がありませんでした。グラフを見ると一目瞭然で、停滞がつづいており、国民にとってもこの傾向に慣れてしまったようです。
一方、日本以外の先進国は着実な成長を続けており、特に中国などは、7%~8%もの成長を続け、GDP世界第2位となった現在も、その成長率が維持されています。このままでは、2020年には、1,000兆円(10兆ドル)に達すると予想されており、日本の2倍となります。この経済格差が国防の危機につながる可能性が高まっています。
◆繁栄・発展のビジョンを示し、実行実現する事が必要
バブル期の不良債権の処理がほぼ完了している今、日本政府は、更なる成長を目指すべきですが、国が明確なビジョンを示すことができないために、経済も足踏み状態が続いています。
「アベノミクス」成功の大きな理由として、「日銀がインフレ目標2%を掲げた事」があげられます。このように、日銀総裁という立場のある方が、力強く宣言したことで、経済関係者に自信が出てきたのだと思います。政府には、それだけの影響力があるのです。
政府は、明確に繁栄へのビジョンを示し、勇気を持った起業家の輩出及び、新しい発明に挑戦するエンジニアたちをもっと応援する必要があります。
「失われた20年」はある意味、発展・繁栄を志した貴重な人材の希望の芽を摘んできた歴史でもあります。この間、有望な挑戦者が日本的なムラ社会、嫉妬社会の中で、希望を失い、消え去っています。
そうした意味で、小保方晴子博士による「STAP細胞」という夢のような発見について、論文の書き方などの細かい手法にこだわるのではなく、最も重要な論点である「この発見をどのように生かしていくのか」について国益に基づいた議論が求められるでしょう。
私たち幸福実現党は、日本のさらなる繁栄の為には、増税ではなく、減税を進め、本来の成長戦略として、成功の種、新しい技術、発明の種を具体化させるための人材の輩出が必要だと訴えてきました。
そうした意味では、安倍内閣には、日本の発展繁栄を、文字通り「実行実現」することを強く願うものです。
執筆者:こぶな 将人