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沖縄振興策にもう一段の未来志向を――現地調査レポート

文/HS政経塾第2期卒塾生 川辺賢一

◆沖縄振興策の現状

「この地域を発展させる方法を考えてほしい」――。ゴールデン・ウィーク、観光客で賑わう沖縄を訪れて筆者が最も印象を受けたのが、現地で働く知人から言われたこの言葉でした。

安倍政権の成長戦略では国家戦略特区として「国際観光拠点」に指定され、昨年末には基地問題解決の見返りというかたちで毎年3000億円の補助金が7年間支給されることが決定しましたが、果たしてこれまで行われてきた「沖縄振興策」はどのように評価されるべきでしょうか。

例えば沖縄本島における経済流通の動脈であり、観光する上でも欠かせないのが沖縄自動車道です。その沖縄自動車道は混雑(需要)の割りに料金が安いことで知られ、首都高速道路等と比べると距離に対して2分の1から3分の1の安さです。

むろん高速道路の料金は安いに越したことはなく、経済流通を活発化させるという観点からは無料化こそ理想であることは言うまでもありません。

しかし地方行財政を一つの経営体とみて、高速道路を流通サービスにおける付加価値として捉えるならば、需要に応じた利益をしっかり上げることで、中央から支給される補助金の額を減らすことが可能だと考えることもできます。

また全国チェーンを展開するファースト・フード店等を見ても、本土と比べて価格帯が安く設定されているところがみられました。むろん物価が安いことは生活者の視点からは良いことですが、それは付加価値・利益がのせられていないこと、所得水準が低いことの裏表でもあります。

どれだけ巨額の補助金がばらまかれても、「高い付加価値を付けて利益を出す」という資本主義的な発想がなければ、県民所得が向上し、本当の意味で繁栄することはできません。

◆経済問題と政治問題

さて、これまで自民党も民主党も沖縄振興策を続けてきましたが、沖縄の地域振興策は単なる経済問題を超えて政治的な意味を持ちます。

例えば、国会をデモ隊が取り囲み、革命前夜とも言われた安保闘争や学生運動も1960年代の高度経済成長後は下火となりました。この事実は泥沼化していく政治的信条における対立や闘争も、経済的繁栄が享受されることで解決されていくということを示しております。

経営学者として有名なP・F・ドラッカーも政治信条や宗教、イデオロギーの異なる移民が一つの国家を創り出したアメリカ合衆国を例に出し、このように述べております。

「経済はそれ自体の問題領域をはるかに超えた政治的な役割を果たす」「歴史上、アメリカは政治問題を経済化することによって亀裂を避けてきた。経済化した問題は、金の問題として妥協が可能である」「政治家たる者は政治的目的のための経済的な手段の使い方を知らなければならない」(参照『すでに起こった未来』)

沖縄の地域経済を真に繁栄させ、県民所得を向上させることこそ、基地問題や安保問題など、政治的・イデオロギー上の問題を解決し、日本を一つにしていく重要な手段であるということができます。

◆沖縄振興策にもう一段の未来発想を!

では沖縄経済を繁栄させるためにどのような施策が考えられるでしょうか。

沖縄は中国が虎視眈々と狙っていることからも地政学的に要衝の地であることがわかります。地政学的な要衝の地であるならば、本来、政策次第では経済的・商業的に要衝の地として、シンガポールや香港等と同じ程度に繁栄させていくこともできるはずです。

まず沖縄を経済特区として法人税をシンガポール並みの10%台に実験的に引き下げ、日本だけでなく、アジアや世界の企業や企業の保養地を誘致していくべきです。

所得税の減税や相続税の撤廃を実験的に進めると同時に、カジノ誘致や那覇港の整備、さらなるリゾート開発をアジアや世界からお金を集めて行い、中国や台湾、欧米の富豪にリゾートを所有させることができれば、中国政府も国際世論の反発を恐れて手を出せないでしょう。

自民党・民主党型の単なるバラマキ予算から脱却し、未来の繁栄につながる投資を行っていくことで、沖縄の経済問題、そして政治的な問題を解決していくべきです。

川辺 賢一

執筆者:川辺 賢一

幸福実現党茨城県本部代表(兼)政務調査会経済部会長

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