富を増やすことが、国の繁栄の基である
文/HS政経塾部長兼政務本部部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長
吉井としみつ
◆経済成長による税収の増加を、政府は実績として声を上げるべき
今年6月に策定する新成長戦略の議論が始まります。景気を腰折れさせないためにも経済成長は確かに重要です。
一方で、政府の成果として、もっと宣伝していいのにしておらず、気になることがあります。
それは、2013年度の税収見込みが増えているということです。財務省は、当初見込んでいた税収が2.3兆円増加し、45兆4千億円と見込んでいるのです。この上振れの主な理由は、企業業績の回復による法人税の増収が挙げられます。
税収の上振れ分は、消費増税によって景気を腰折れさせないように経済対策として、昨年12月に補正予算に計上されています。
もっと、税収が上向いているということを政府の成果として強調してもいいのではないでしょうか。しかも、この2.3兆円の税収の上振れというのは、消費税の約1%分に相当します。
順調に経済が成長していけば、消費増税によって景気に悪影響を与えなくとも、税収を増やしていくことは可能なのです。
◆税金を上げた分、そのまま税収が増えると思う財政再建派
しかし、財政再建派の議論の中では、経済成長についてはほとんど言及せず、消費税を上げた分、税収がそのまま増えるという考え方が問題です。
実際に2014年度の税収見込みは、上振れした税収見込み額(45.4兆円)に、消費増税3%分のうち国に入る分(約5兆円)を加えて、50兆円と見込んでいます。
しかし、それがその通りにいかなかったのが、幸福実現党が何度も主張している消費税を3%から5%に上げた1997年度です。消費税を2%上げたところ、法人税収が1兆円減少しました。さらに、翌1998年度には、税収全体で4.5兆円も減少したのです。
このように増税することで、税収全体が減ってしまうのです。経済成長については様々な要因を考えるのに、税金の話になると単純な足し算・引き算の世界に入ってしまうのは明らかにおかしいことです。
◆経済成長でしか、安心の社会保障は成り立たない
そもそも消費税を上げることは、社会保障を安心にさせるということですが、実は消費税を上げても景気が悪くなってしまっては、社会保障は安心になるどころか、ますます破綻が早まることになるのです。
国民年金と厚生年金には、積立金が約120兆円あります。GPIFという独立行政法人が運用しています。年金の積立金は、国内外の株式・国債の形で運用されています。
それが、株高を背景として、過去最高の18兆円(運用利回り約18%)の運用益が出ました(2014/1/9日経1面)。年金の積立金は、毎年3兆円~6兆円を取り崩していますので、運用益が出るということは、それだけ積立金が厚くなることを意味します。
当然、景気が悪いときは、運用損が出ます。ちなみに過去最大の運用損は2008年度の9.3兆円(運用利回り-7.6%)でした。
長期での平均運用利回りが大切なので、一喜一憂は控えるべきですが、大切なことは、安心の社会保障というのも、活発な経済という土台の上に成り立つということです。
今の日本政府の問題は、社会保障費を抑制するための代替案も十分に検討しておらず、景気に悪影響を与える増税は、社会保障を逆に破綻へと進めてしまっていることなのです。
アメリカも社会保障問題が解決せず、財政問題はいつ再燃するか分かりません。世界各国があるべき社会保障政策について探しあぐねているのです。
◆健全な経済あっての、財政再建であり、安心の社会保障
大切な考え方として、元気な経済という土台の上に、財政再建という柱や、社会保障という柱が立っているのです。
この前提を忘れてはなりません。この前提を忘れてしまうと、土台そのものが壊れそうなのに、何故か柱の補修にばかり熱心に取り組んでしまうという状況になります。
今、消費税8%が4月1日と目前に迫り、その後2015年10月には、10%にまで上がることが「軽減税率の導入」という美名の下、既定路線化しようとしていますが、何とかこの流れにブレーキをかける必要があります。
日本政府は、日本国憲法29条で定められているように、国民の財産権を侵してはなりません。
日本から、経済成長によって社会保障問題・財政問題を解消する新潮流を創り出すべきです。そのための方向性は増税ではなく、経済成長です。勤勉に働き、国民が富を生み出す総量を増やすことにより、国の繁栄は磐石のものとなるのです。