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これがホントの攻めの農業だ!(1)――日本のコメに国際競争力はあるか?

◆コメの関税引き下げ・撤廃に備えよ

環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で焦点となっている農産品等の関税について、政府・与党内では自由化率(10年以内の関税撤廃率)90%超を軸に調整を進めています。(9/5 日経「関税撤廃9割超で調整 TPP、政府・与党が本格協議」)

現在の米の関税率は778%。この関税を撤廃するのは、自由化率99.4%以上になった時とあります。

これこそが、日本農政がどうしても崩されたくない「聖域」、すなわち「最後の砦」です。

しかし、TPP交渉において関税撤廃率100%を掲げる国が出て来たことからも、日本は更に高い関税撤廃率を求められることを念頭に置かねばならないでしょう。

米の関税も撤廃された時のことを考えて対策を取るべきです。これこそが安倍政権の掲げる「攻めの農業」の本質であるべきではないでしょうか。

しかも、関税は品目ごとに一気に撤廃する必要はありません。例えばコメも10年かけて段階的に関税をゼロにする計画を立て、その間に国際競争力をつけることの方が現実的です。

関税の交渉は秘密裏に行われておりますが、「聖域」に関するオール・オア・ナッシングの報道姿勢(「聖域なければTPPに参加せず」等)にも疑問と恣意的なものを感じざるを得ません。

◆日本のコメに国際競争力はあるのか?

コメの自由化の段階に入った場合、重要になってくるのは、日本米の価格と品質を比べての国際競争力です。

コメには大きく分けて3種類ありますが、ここでは日本や中国、アメリカで栽培され消費されている短粒種について取り上げます。これは世界の米の生産量の2割にあたります。

以下に掲げる価格は、現地での日本人が食べても美味しいとされる高級米の値段です。現地米の該当国での国内販売価格1kg(平成21年)を挙げます。

・香港259円(12.3円=1HKドル)[日本米1,300kg、中国米2,400kg、タイ米1,700kg、アメリカ米500kg]

・アメリカ471円~740円(100円=1ドル)[日本米1トン、アメリカ米406トン]

・日本236円~455円

※[]内は現地のある店での年間販売数量を示す

狙うは富裕層や高級食材扱いですので、日本国内での価格400円(参考:魚沼産以外の新潟コシヒカリ)の米を輸出したとして、関税(香港はナシ、アメリカは1.4セント/1kg)、諸経費、30%の小売店の儲けを入れて、香港では780円、アメリカでは795円で商品棚に並びます。(農水省『日本産米輸出ハンドブック』平成21年度版より)

味の差別化については、カリフォルニア米の最高品種と新潟コシヒカリを日本人が食べ比べた場合、全員が正解したという結果も出ています。

香港では現地米と3倍の価格差がありますが、他の輸入米同様、高い売れ行きを示しています。

日本の絶対的な品質の優位と現地で売り込む努力をすれば、十分に原地米と勝負が可能です。

更に、生産数量目標(減反)をやめれば、コメの価格はさらに下がり、国際競争力が向上します。

◆コメの価格を高止めしている生産数量目標(減反)を廃止せよ!

平成24年度は、国の示した米生産目標は793万トン/150万haに対し、収穫量が852万トン/158万haありました。

ちなみに、日本全国の田の面積は246.9万haであるので、田の面積の46%は生産調整地、耕作放棄地、転作か他の利用をしていることになります。(耕作放棄地は平成22年には39.6万ha農水省統計)

既に他に利用されている農地を除き、耕作放棄地を含め、残り全てで米を作ったとすると、220万haの田で1,188万トン(24年収穫量より5.4トン/haで計算)の収穫が見込まれます。(参考:山下一仁著『フードセキュリティ―コメづくりが日本を救う!』日本評論社)

日本国内で食べる米は790万トンですので、残りの398万トンは輸出が可能となります。

輸出量398万トンと言えば、アメリカの米輸出量325万トンよりも多く、3位ベトナムの640万トンに次ぎ、日本は世界第4位の米の輸出国となります(2012年試算ベース)。

生産調整廃止により、日本米の卸価格は9,500円/60kgまで下がることが見込まれています。(※6月の国内卸値12,500円~16,500円)

国内に安い米が多く出回り、国内の米の消費量が増大すれば、価格は下げ止まる方向に働きます。

また今後、中国の米価格が人件費の高騰によって卸価格10,000円/60kgまで上がって来ますので、市場原理が働いて価格が下げ止まり、米価の暴落は起こらないでしょう。(参考:同上著)

それと共に、輸出先における日本米の価格競争力も格段に向上していきます。

今回は、日本のコメの国際競争力を確認すると共に、生産数量目標制度(減反)を廃止すべきことをお伝え致しました。

次回は、コメの価格設定、農地集約とコメの品種改良により国際競争力をつけることにいてお伝え致します。【祈豊穣】(HS政経塾第3期生 横井 基至)

横井基至

執筆者:横井基至

HS政経塾第3期生 新潟県本部副代表

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