相続税、15年から課税対象者倍増――相続税を即刻、廃止せよ!
富裕層の課税強化へ
参院本会議は3月29日、平成25年度税制改正の関連法案を可決。同法は成立しました。
設備投資額を前年度より10%超増やした企業は、生産設備などへの投資額の3%を法人税額から控除できるようにするなど、成長強化に向けた投資減税が行われます。(3/29 日経「成長強化へ投資減税 13年度税制改正法が成立」)
幸福実現党は法人税減税を主張していますが、アベノミクスによる金融緩和を「投資の拡大」という景気回復効果に繋げるためには、(まだまだ不十分ですが)こうした法人税減税は不可欠です。
それと同時に、今回の税制改正では、消費増税をにらんで、「低所得者ほど負担が重くなる」という消費税の逆進性に対する批判をかわすために、公平性の観点から富裕層への課税が強化されることが決定しました。
所得税は2015年1月から課税所得4000万円超の部分を対象に税率を40%から45%に引き上げられます。2007年度に最高税率が引き上げられて以来の所得増税です。
相続税の課税対象が倍増!
そして、富裕層への課税強化の最大の目玉は、相続税の増税です。
税制改正により、相続税は税額から差し引くことができる基礎控除が4割縮小されます。具体的には、2015年1月1日以後の相続から以下のように基礎控除が変更されます。
【現行】5000万円+1000万円×法定相続人の数
【改正後(2015年~)】3000万円+600万円×法定相続人の数
例えば、相続人が2人の場合、現行の税制であれば7000万円以上ないと相続税は発生しませんが、改正後は4200万円以上あれば相続税が課税されます(基礎控除4割減)。
これにより、都市部を中心に、相続税の課税対象者が倍増すると言われています。(4/3 財経新聞「平成25年度の税制改正法案が参院本会議で可決・成立」)
不動産コンサルタントの長嶋修氏は「都心での地価の底入れを考慮すると、改正後は課税割合が20~30%(注:東京国税局管内の2011年の課税割合は約7%)に膨らむことも考えられる。富裕層だけが相続税の対策をすればいいという時代は終わった」と指摘しています。(2/20 日経「相続増税、まずは財産把握」)
また、合わせて相続税の税率が引上げられました。課税対象となる遺産が2億円超~3億円以下の場合は現行の40%から45%に、6億円超の場合、現行の50%から55%に増税されます。
相続税を即刻、廃止せよ!
幸福実現党は立党以来、「相続税廃止」を訴えています。そもそも、税制の基本原則に「二重課税の禁止」がありますが、相続税は「二重課税」の疑いがあります。
個人の所得に対して所得税や住民税がかかり、その残りが私有財産になるわけですが、そこに再度、死亡時に課税することは極めて理不尽です。
そもそも相続税はマルクスの『共産党宣言』に掲げられた「相続権の廃止」に思想的淵源があり、相続税増税は、「私有財産の侵害」「国家社会主義」に繋がります。
渡部昇一氏は『対論「所得税一律革命」』(光文社,1999年)で「相続財産を含めた私有財産こそが自由の砦であり、私有財産が国家のものになったら、本当に自由も何もなくなるということなのです。 自由をとるか、それとも相続税をとるか――比べて悩む人は社会主義思想に汚染されている危ない人です。自由をとる人ならば、相続税ゼロ、相続税廃止に反対する人は絶対にいないはずです」と述べています。
そもそも「相続」とは、親から子・孫へと努力の成果を受け継ぐ「絆」です。
相続税が増税されれば、親から子孫に渡す財産が減り、子孫にとっては親や先祖への感謝や「絆」を感じる基(もとい)が減ることになります。
そればかりか、地価が高い地域では、子孫が保有している財産だけでは相続税を払えず、相続した家や土地、財産等を手放さざるを得ないケースが増えており、親から子への文化・伝統の継承が途切れてしまいます。
幸福実現党は社会保障を政府に頼るのではなく、社会保障はセルフヘルプ(自助努力・「生涯現役」社会の実現)と、家族・地域の助け合いを基本とすべきと考えており、そのためにも相続税は廃止すべきと訴えています。
実際、スイス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、スウェーデン、イタリアでは既に相続税が廃止されています。
「相続税廃止」は先祖代々の文化・伝統の継承の尊重に繋がり、愛国心の涵養に資することを信じてやみません。(文責・黒川白雲)