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英語教育に変化の兆し。今後の課題と方向性を探る

英語の授業は英語で行う

文部科学省は、今春から採用される高校の新学習指導要領で「英語授業は英語で行う」ことを基本とする新しいルールを取り入れました。スピーチやディベートといったコミュニケーションを重視したことに特徴があり、英語教育に変化の兆しが出てきました。(毎日新聞3月26日参照)

現場の教員からは不満の声が上がっているのも事実です。

確かに、いきなり英語だけで授業を行うには一定の訓練が必要となります。英語教員といっても海外経験のない方や英会話、英語での議論ができるとは限りません。また、従来の学習指導要領では文法を重視してきており、教科書は日本語で書かれ、日本語で講義をしてきました。そのため、いきなり英語だけで授業をやるのは難しいという教員の意見も一理あります。

また、英語だけで授業をやる際、生徒はリスニング力(聞き取り)を高める必要があります。学校によっては外国人講師を採用しているケースもありますので、今まで外国人の英語を聞いたことがない生徒がいきなり英語だけの授業や日本語記述のないテキストは苦痛を感じるのは目に見えています。文法はリーディング(読解力)とライティング(文章作成力)の専売特許だと考えられがちですが、英語を母国語とする人たちは、make、get、goなどの中学英語を基礎にしたイディオム(熟語)を多用しています。市販のTOEICやTOEFLのテキストを見ても同じことが指摘されていることからみても、リスニング力を高めるためにも最低限の文法力は不可欠です。

従って、今後は「基本は英語で授業を行う」という方針のもと、基礎学力を確立するためにも日本語による文法重視のテキストを同時使用して授業が展開されていくことになるでしょう。

大学でも採用されつつある英語での授業

一方、大学サイドでは海外大学へ留学する際に必要なTOEFLを必須とする動きも出てきています。最近は、海外で博士号を取得する研究者が増えているので、高校と比較して大学では比較的スムーズにいく可能性はあります。ただし、日本の大学からアメリカや欧州の大学に留学するには、TOEFL対策を教えてくれる専門学校や英会話塾に通わざるを得えないので、高校の段階からメスを入れるのは極めて合理的です。

このように、高校と大学で進みつつある英語教育の変化ですが、最終的には生徒のやる気と教員の指導力や努力、創意工夫があってはじめて成り立つものです。成果が出るまでは時間がかかるかもしれませんが、日本人全体の英語力向上のためには必要な措置であると考えます。

世界にアピールするための語学力は不可欠

文部科学省の方針に関して、幸福実現党としては賛成の立場をとります。日本が国際社会において名誉ある地位を占めるためにも、英語で堂々とプレゼンができる政治家や企業家の輩出は不可欠です。

G8などでは日本の代表者は通訳を通じて交渉や会談を行うが常です。もちろん、微妙なニュアンスの間違いを回避するためには必要な措置であることは認めます。ただし、英語を母国語としない欧州やアジアの国々の代表者は普通に英語を使います。

筆者は2月にインドのニューデリーで開催された国際会議に出席してきました。Asia Liberty Forumと呼ばれる自由主義者が集まる会議でしたが、インド人をはじめとしてブータン人、インドネシア人は堂々と英語でプレゼンや質疑をしていました。http://bit.ly/Yu2YPq

筆者も彼らに触発されて質疑やディベートに参加しましたが、日本人が国際会議で目立たないとアジアでも注目されない国となり、Japan Passing(日本素通り)はますます加速するのではないかという強烈な不安を感じました。

韓国のメーカーであるサムソンでは、採用はTOEIC900点、幹部レベルは920点が最低限要求されます。実際は満点の990点に近い点数を取る人が多数いるようです(日本では680点から730点が海外駐在の平均)。サムソンやヒュンダイのような韓国企業が世界で活躍している背景には、徹底した英語教育で培われたディベート力にあるのは間違いありません。

領土問題や歴史認識問題にも語学力を

近年は、南京大虐殺や従軍慰安婦問題といった歴史認識問題がアメリカなどの第三国で宣伝され、日本政府も右往左往する事態が多発しています。

領土問題でも中国や韓国は欧米世論を巻き込むために意図的な捏造記事や意見広告などを英語で発信しています。このまま、日本政府が明確な反論をしないならば、日本は侵略国家の烙印を押され、極めて不利な立場に立たされます。この問題に関してもきちんとディベートし、世界に対して英語で発信していく機会を増やしていくべきです。

英語力と日本語での教養の上積みを

ただし、英語はあくまでもツールにしか過ぎません。

問題は内容なのです。きれいに話すことは大事ですが、「使える英語」とは、相手に伝わると同時に説得できる技術のことです。

加えて、英語熱を高めると同時に母国語での教育も大事にする姿勢は決して忘れてはなりません。古今東西の宗教的知識や芸術、古典文学や軍事知識などの教養がベースにあってはじめて国際人として堂々と太刀打ちができるのです。ディベートなどのコミュニケーション能力まで見据えるならば、英語力と日本語での教養の上積みとの両立は不可欠です。(文責:中野雄太)

中野 雄太

執筆者:中野 雄太

幸福実現党 静岡県本部幹事長

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