アベノミクスに忍び込む財務省の思惑
日本には増税政党しか存在しないのか
自民党・公明党・民主党の三党は、富裕層増税に合意しました。
2012年の消費税増税法案に時も、上記の三党による合意から法案可決に至りましたので、わが国では政権交代が起きても増税政党しか選択肢がないということが如実に現れています。
このまま路線に変更がなければ、2015年1月からは、所得税の最高税率は40%から45%へ、相続税の最高税率は50%から55%へと引き上げられます。背景には、「税と社会保障の一体改革」があり、新政権となっても踏襲されていることは言うまでもありません。
もちろん、小規模な宅地への相続税の優遇税制と贈与税に対する軽減策も導入されてはいます。特に相続税は、子孫に贈与する場合、1000万円超から1500万円以下なら40%と、低めの税率区分を設ける配慮がされました。富裕層を完全に敵にまわさないための政治的配慮が見え隠れしますが、ここはシンプルに考えた方がよいでしょう。
つまり、富裕層の増税負担を配慮しているならば、所得税と相続税の最高税率を上げる必要がないということです。
政治的配慮が税制度を複雑にしている
政治的配慮をするがために、複雑な税制度となり、公認会計士や税理士の無駄な仕事が増えることになります。現在の税制においてさえ、納税者にとっての手続きも煩瑣だとの意見もあるほどですが、今後もこのような「アメとムチ」を使い続ける限り、ますます複雑さは増していくと思われます。
既に国と地方には60種類の税金が存在しています(『増税亡国論』参照)。加えて、軽減税率や控除の基準が複雑で、一般国民が税制度を把握するのは至難の業です。自営業者などは、税理士や公認会計士を雇わないと対処できません。納税の時期には仕事の手を休めて煩雑な書類の作成や手続きに追われるという意見を何度も聞いたことがあります。
このように考えると、シンプルな税制度に改革をしていくニーズはあります。同時に、国税庁の役人もシンプルな税制度にしていく方が、仕事が楽になるというメリットがあります。理想的には、所得税か消費税のフラット化(例:一律10%)なのですが、わが国では逆の議論ばかりが横行しているのが現状です。
いずれにしても、現在の税制度は複雑過ぎますし、税の種類も多すぎます。これだけ多くの税金がありながらも財政赤字が膨らみ続けているということは、政府の仕事に無駄が多いという何よりの証拠です。だからこそ、幸福実現党はシンプルで安い税金を提唱しているのです。
財務省の狡猾さは未だ健在
2014年4月実施されようとしている消費税増税ですが、そのためには本年は名目3%以上の成長をする必要があります。本年は7月に参院選が予定されているので、安倍首相は外交や安全保障面での明確な主張を回避し、景気対策を強調するのは間違いありません。
実は、ここに財務省の狡猾な政治的思惑があります。
現在、安倍政権は日銀に大胆な金融緩和を提言しているのは周知の通りです。
一方、財務省は、本年の名目3%の経済成長率を達成できることを黙認することでしょう。また、財務省が嫌う「列島強靭化計画」のような公共投資についても黙認しているのも理由があるのです。つまり、政府のマクロ経済政策が効果を発揮し、「これだけ成長したならば、増税は仕方ない」と思わせる心理を使おうとしているのです。
すでに、消費税法案の可決の際には、国会議員の過半数が賛成票を投じています。経済政策の中でも、とかく複雑で難解な税制を得意とする国会議員は皆無です。ましてや、減税路線を実現するべく公民連携(PPPともいう)や公会計を導入して政府支出の無駄を省く行政手法に通じている議員はいません。つまり、財務省は見事に政治家を操っているのです。
アベノミクスによる経済成長路線は、大方正しい方向性を示しているのは事実です。ただ、本当に経済成長を継続して失業率を減らし、有効求人倍率を高め、設備投資や住宅着工指数や日経平均株価等を高めようと思うならば、増税は断じて控えるべきです。
しかしながら、富裕層増税が三党合意に至りました。そして、今年の経済成長が実現できれば、来年の4月から消費税は5%から8%へと上昇します。2015年には、さらに2%ポイント上昇して10%となります。
要するに、アベノミクスの成長路線は、増税をするための布石として使われているのです。自民党と公明党が増税政党であることも輪をかけているのはいうまでもありません。
だからこそ、本年の夏の参院選では、幸福実現党は消費税増税法案の廃止を再度主張するのです。もちろん、富裕層増税の撤回も同時に求めます。
徹底した金融緩和と未来産業への公共投資など、安倍政権の経済政策と重なっている点は多々あるのですが、最大の違いは、徹底した減税路線による経済成長の実現です。
「自由からの繁栄」こそ、幸福実現党の経済政策の柱であり日本経済再建に必要なキーワードなのです(参考資料:http://www.hr-party.jp/new/topic/tax)。
(文責:中野雄太)