海空で起きている米中の攻防(1)
◆「中国を刺激するな」
先日、弊党が都内で中国の「防空識別圏」設定に対する抗議の街宣を実施した際、「中国と戦争をする気か。中国を刺激するな」とのご意見をいただきました。
しかし、中国という国は、日本が刺激しなければ、何もしてこない国なのかと言えば、そうではありません。逆に日本が中国を刺激しているのではなく「中国こそが、日本を刺激している!」と申し上げたいと思います。
この機会にもっと視野を大きくし、今この国が置かれている環境をもう一度、しっかり見て認識して、日本の平和が如何に成り立っているのかを知っていただきたいと考えます。
◆日本に伸びる中国の触手
2007年、中共海軍総司令官は、キーティング米国太平洋軍司令官が訪中した際、アメリカ側に「将来、中国と米国がハワイで太平洋を2分割して管理しよう」と提案しました。
その言葉通り中国は2009年より、西太平洋上の沖ノ鳥島周辺海域で海軍の軍事演習を実施、その規模は毎年大きくなり回数も増えています。中国は今後、同海域での軍事演習を定例化すると発表しています。
そして今年2013年、習近平はオバマ米国大統領との会談で「太平洋には米中両大国を受け入れる十分な空間がある」と主張し、中国にも太平洋の海域を支配する権利があることをほのめかしたのです。
当然、西太平洋を中国が支配することになれば、日本は米国から中国の傘下に入ることになります。これは日本が実質的に中国の属国になることを意味します。
中国の一貫した主張は、日本列島からグアムを結ぶ第二列島線、つまり「西太平洋の海域の支配」を2020年まで完了させる――1987年に発表された「海軍発展戦略」に基づいたものです。
◆西太平洋で中国三艦隊が合同軍事演習
さて今年、中国海軍は、10月末から11月初旬にかけて西太平洋海域で「北海艦隊」「東海艦隊」「南海艦隊」の中国海軍三艦隊が、初めて西太平洋で大規模な合同軍事演習「機動5号」を実施しました。
空では10月25日から3日連続して、爆撃機2機、早期警戒機型2機の計4機が沖縄県の沖縄本島-宮古島間の上空を通過、太平洋との間を往復飛行しています。
中国国営「新華社」によれば、この軍事演習にミサイル駆逐艦フリゲート艦3隻をはじめ10隻超の軍艦などが参加。赤軍、青軍に分かれた実戦に近い形の対抗戦などを繰り返し、敵潜水艦への攻撃を想定した対潜水艦演習も実施しています。
これは赤軍を中国で、青軍を日米軍と想定したものです。これを知れば「日本が中国を刺激しているのではなく、中国こそが、日本・米国を刺激している」ということが理解できるでしょう。
この時、日本では国会で「日本版NSC(国家安全保障会議)」が話し合われている最中でした。国会の最中に軍事訓練をぶつけてくるのは、いつもの中国のやり方です。
◆中国の防空識別圏設定の背景
そして今度は、国会で「特定秘密保護法案」が話し合われている最中に日本の固有の領土である尖閣諸島上空に防空識別圏を設定しました。
中国は以下のように用意周到に順を追って防空識別圏を設定したことがわかります。
まず昨年12月、「軍の所属ではない国家海洋局所属の航空機」を初めて尖閣上空で領空侵犯をさせました。軍事ではない航空機を飛ばしたのは、日本の反応を見るためです。
もっと踏み込めると判断した中国は、今年9月に尖閣上空に「軍所属の無人機」を飛来させた上で、日本側から攻撃された場合は、「戦争行為とみなす」とすべては日本が悪いといわんばかりの脅しをかけました。
そして11月23日、中国の「情報収集機など2機」が日本の防空識別圏に侵入。中国の新華社によると大型偵察機2機を「哨戒機と戦闘機」が援護していました。(11/24毎日)
こうして中国は、尖閣上空に「軍機でない国家海洋局の航空機」→「軍所属の無人機」→「哨戒機と戦闘機」を飛ばし段階的に軍事的圧力を高めて最終的に11月23日、尖閣上空に防空圏を設定したのです。
以上を見ても、日本が中国を日本を刺激しているのではなく、刺激しているのは中国の方であることがわかります。
それでも日本が中国を刺激していると認識するなら、それは中国がこれまで日本に対してしてきたことを何も知らないとしか言いようがありません。
もしくは、中国は何もしない善良な国家と誤認しているだけのことです。中国が善良な国家ではないことは、中国に侵略され自治区になったチベット、ウイグルの悲劇を見れば明らかです。その弾圧は今でも続いているのです。
中国の行動が、いかに危険かを国民に知らせ、啓蒙することは国民の生命・財産を守ろうとする政治家としての当然の努めであり、弊党の街宣は、それを行動に表したものです!
以上、次回は、中国の防空識別圏設定に対する日本の自衛隊の反応と米軍の対応を紹介し、日本の平和を脅かす中国の行動を更に明らかにします。
(文責・政務調査会 佐々木勝浩)