このエントリーをはてなブックマークに追加

既成政党有利(新規政党差別)の公職選挙法は憲法違反である

公職選挙法はその立法目的を「選挙制度を政策本位、政党本位のものとする」としています。

「政党本位」とは、事実上、政党を優遇するという形になっています。

新聞社によっては、報道の自由と共に、公職選挙法の政党優遇精神を、政治団体の報道を公平にしない事の判断根拠としています。

優遇されるべき政党(候補者届出政党)の定義を、公職選挙法86条1項1号、2号に、国会議員を5人以上有するもの又は近い国政選挙(衆院総選挙・参院通常選挙いずれか)で、全国を通して2%以上の得票(選挙区・比例代表区いずれか)を得たものを候補者届出政党と定めています。

公職選挙法は既成政党に有利にできており、新しい政治団体(非政党)は以下の点で差別的不利益を被っています。

・衆院総選挙及び衆院・参院議員補欠選挙では選挙区で「政見放送」に出演できない。

・総選挙で比例区の重複立候補が認められていない。

・政党は比例区に1人からでも候補を立てられるが、政治団体は衆院では定数の10分の2以上、参院では10人以上(選挙区と含めて)候補を立てなければならない。

・企業(法人)からの政治献金を受け取ることができない(政党以外の政治団体は、個人献金のみ受け取れる)。

また、既成政党は、比例代表選挙のために認められた選挙運動を、小選挙区選挙の個々の候補者の選挙運動のために利用することが可能(同法178条の3)。

これにより、ハガキやビラ、ポスター等の条件に著しい差が生じ、その差は単なる量的差に留まらず、質的な差にもなっています。

2005年の第44回総選挙後、選挙無効の訴訟が起こされました。この訴訟で原告は、一票の格差と共に、公職選挙法における政党候補と非政党候補の格差は憲法14条1項の「法の下の平等」に反し違憲であると主張しました。

しかし、東京高裁で原告は全面敗訴。2007年、最高裁判所大法廷は12対3で原告の上告を棄却し、高裁判決が確定しました(2005年衆院選合憲判決)。

判決では「政党は、議会制民主主義を支える不可欠の要素であって、国民の政治意思を形成する最も有力な媒体である」から、非政党候補との格差は「合理的理由に基づくと認められる差異」の範囲内であるとしました。

また、衆議院小選挙区における政見放送の非政党候補の締め出しについては、「選挙制度を政策本位、政党本位のものとするという合理性を有する立法目的によるもの」と判断し、「是」としました。

幸福実現党はまさしく、非政党として3年以上にわたり政治活動、選挙活動を行っておりますが、公職選挙法の「非政党への冷遇精神」の洗礼を受けています。

ゆえに、2005年衆院選合憲判決の最高裁大法廷の3人の反対意見(違憲判断)の中の「真実」を今一度、世に出さなければならないと思います。

現行の公職選挙法における政党候補と非政党候補の格差は「違憲」であると判断した反対意見の一部を要約・抜粋し、本来の選挙のあり方を考える材料として頂ければ幸いです。

公職選挙法は「選挙制度を政策本位、政党本位のものとする」との立法目的を掲げながら、実際に作られたのは「既成政党の政策本位、既成政党本位の選挙制度」であり、新しい政党に対する参入障壁であります。

公職選挙法は、選挙のスタートラインから既成政党を優位に立たせ、非政党候補者を極めて不利な条件の下で競争させるものであり、議会制民主主義の原理に反し、国民の知る権利と選挙権の適切な行使を妨げるものとして、憲法に違反すると言わざるを得ません。

各候補者が行い得る選挙運動の手段・方法は「人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない」(憲法44条ただし書)ことはもちろんのこと、原則として平等でなければなりません。

現在の選挙制度は、候補者の被選挙権の平等を害するものであって、憲法14条1項、44条ただし書きに違反し、無効といわざるを得ません。
(文責・加納有輝彦)

加納 有輝彦

執筆者:加納 有輝彦

岐阜県本部政調会長

page top