世界中に蔓延する緊縮財政トレンドに、日本は乗るべきではない!今必要なのは繁栄のビジョン
6月17日のギリシャ議会再選挙が終わり、ギリシャ国民はユーロ残留と緊縮財政を受け入れる結果となりました。
しかしながら、緊縮財政派の新民主主義党(ND)が第一党になったとはいえ、NDの得票率が29.65%に対して、緊縮財政反対派の急進左派連合(SYRIZA)は26.88%と、僅差であったことは特筆に値します。
年金削減と増税は厳しい選択ですが、それ以上にギリシャ国民がユーロ離脱によるデメリットを恐れたということでしょう。
欧州ではギリシャに限らずイタリヤやスペイン、ポルトガルが財政危機に直面しており、緊縮財政が主流を占めています。対外債務がデフォルトすることを回避し、ユーロの安定を狙っているのがユーロ圏首脳陣の考えです。
これに対して、コロンビア大学のスティグリッツやプリンストン大学のクルーグマン両教授のようなノーベル経済学者は、積極財政や金融緩和を主張しています。
さらに、リーマンショックを的確に予測して有名となったニューヨーク大学のルービニ教授はユーロ離脱を公然と主張しており、欧米の経済誌などでも同じ論調が出始めています。
ユーロ離脱は別にして、緊縮財政が世界的に幅を利かせている現実は無視できません。なぜなら、世界の政府首脳やIMFのエコノミストたちには緊縮財政を主張することが多いからです。
最近こそ、IMFのラガルド専務理事とチーフエコノミストのブランシャール氏は性急な緊縮財政を戒めているとはいえ、経済危機に陥った国に対する支援の見返りに緊縮財政を押し付ける姿勢は変わっていません。
例えば、ギリシャ支援でもIMF、欧州中央銀行(ECB)、EUは「トロイカ体制」と呼ばれていますが、ギリシャ支援の条件は厳しい歳出削減と増税の要求です。
これは今に始まったことではなく、97年の通貨危機に陥ったタイやインドネシア、韓国、ロシアに対しても同様の条件が要求されました。
緊縮財政論者は、がん細胞を除去することで病状が改善することをイメージしているのかもしれません。
そして、エコノミストだけではなく、政治家が緊縮財政を主張するときは、道徳的な観点から「赤字はよくない」「借金は返済するべきだ」という視点が強く、正義感に基づいて主張されているのでしょう。
日本でも、自民党議員や保守系の論客からは「消費税増税を国民に訴えることが、政治家としての責務」ということを主張している方がいます。
国民が嫌がることでも、「正しい」と思ったことは断固やり抜くことを言いたいのでしょうが、増税だけを行った場合の経済に対する負の効果が全く視点が抜け落ちており、責任ある主張だと言いかねます。
現在の不況と累積債務問題は、マクロ経済学の常識に従って行動するのが筋です。現代のマクロ経済学の基本に従えば、不況克服には減税や政府による財政出動、日銀による金融緩和の組み合わせが妥当です。
最近出版されたクルーグマンの最新刊『End This Depression Now!』(未邦訳。「この不況を止めよ!」という意味)では、不況期に緊縮財政を進める愚かさと積極的なマクロ経済政策を発動することを主張しています。
日本では原発の安全性確保から始まり、将来的な防衛産業や交通インフラ、海底資源の有効利用など、将来的に富を生み出す投資はまだまだ少ないと言わざるを得ません。
さらに言えば、投資を有効的にするためにも、従来の公共事業にも民間資金を利用して施設整備や公共サービスを行うPFI(民間資金等活用事業)や従来の公的サービスを民間業者が行って公民の連携を進めるPPPを導入し、行政コスト削減と民間の活性化を同時に進める行政手法を取り入れていくことも可能なのです。
その意味で、従来の土建型公共事業ではなく、民間資本を活用する公共事業へとシフトすることで、財政政策の効果もあがることでしょう。
日本では、消費税増税に向けて民主党と自民党、そして公明党が協議を終え、いよいよ法案可決に向けて動き出します。ここにきて反対を表明する議員が出てきたことは良いとしても、経済成長に向けての具体策は何もないことは心もとない限りです。
幸福実現党は、「下山の思想」のような悲観論を打破し、「日本経済再建」宣言をしています。そして、ヒト・モノ・カネ・情報が日本に集まる世界一の経済大国を目指す中長期ビジョンを持っています。
今必要なのは、せこい緊縮財政路線ではなく、繁栄へのビジョンとそれを実現する行動力と勇気なのです。
(文責・中野雄太)