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裁判員制度3年――裁判員制度のリスクを見極めよ!

裁判員制度は5月21日、施行から3年を迎えました。裁判員裁判が始まり、今年3月末までに約2万8千人が裁判員・補充裁判員として裁判に参加し、約3600人の被告に判決を言い渡しました。

産経新聞は全国の弁護士会を対象にアンケートを行い、過半数が「定着した」と答える一方、9割以上の会が「制度に改善すべき点がある」として運用改善を求めています。(5/21 産経⇒http://goo.gl/EV5Rq

読売新聞は全国の裁判員経験者にアンケートを行い、回答者の内、9割以上が「経験を肯定的に受け止めた」としています。毎日新聞の社説も「裁判官、検察官、弁護士ら法曹三者は3年間の実績を好意的に受け止めている」と論じています。

裁判員法は3年たって必要があれば見直すよう定めていますが、概ね評価は高く、運用面での改善点はありますが、法改正までは未定といったところでしょうか。

裁判員制度は2009年、「裁判への市民感覚の反映」を目的に導入されました。20歳以上の有権者から無作為に選ばれた裁判員6人が裁判官3人とともに審理し、被告の有罪、無罪と量刑を決めます。

これは、アメリカ等の陪審員制度に倣った制度ですが、陪審員制度は陪審員が「有罪か無罪か」だけを決め、具体的、法律的な内容、そして量刑については裁判官に任せる制度です。一方、日本は裁判官と裁判員が一緒になって量刑まで決めます。(最高裁判所HP⇒http://goo.gl/WJuEd

このことについて、幸福実現党名誉総裁・大川隆法先生は「量刑まで決めていくということなので、極めて危険な領域に入っている。裁判員の選び方によっては大変なことが起こる可能性がある」と警告しています。(大川隆法著『幸福実現党宣言』幸福の科学出版,2009年.p.98⇒http://goo.gl/1nJfd

裁判員制度の本当の理由は「裁判官があまりにもこの世離れした人が多く、国民の権利が損なわれている。一般国民の方が常識があるので、裁判に参加し、意見を言ったほうが、結論を間違えないだろう」ということです。

しかし、「プロではまともな判断ができないので、素人を入れる」という発想には一種の恐ろしさを感じます。「裁判への市民感覚の反映」が必要ならば、裁判官を定期的に民間企業等に出向させ、「市民感覚」を磨くなどの工夫や知恵を出していくことも重要だと思います。

裁判員の選任にも多くの課題があります。裁判員候補になった人の辞退者は57%に上ります。裁判員の在任期間が長い場合はさらに辞退率が高まります。多くの方々は忙しく、長時間拘束されることは避けたいのです。

この点について、大川隆法党名誉総裁は「民間人はそれほど暇ではありません。会社が潰れかかっているようなときに、量刑までやっている暇はありません。おそらく、この制度は見直しがなされ、膨大な作業がもう一度始まるはずです」と述べています。(大川隆法著『政治の理想について』幸福の科学出版,2009年,p.105⇒http://goo.gl/WfbmL

裁判員制度は「司法の民主化」「司法への市民参加」としてもてはやされていますが、ソクラテスに死刑を言い渡した「人民裁判」以来、「多数意見が本当に正しいのか」ということは歴史的にも議論が分かれるところです。

鳥取県では「いじめが正しいか、間違っているか」について学級会で多数決が行われ、挙手の結果、「いじめられた人が悪い」の方が、「いじめた人が悪い」よりも多くなり、いじめられた少女が悪いと認定された事件が起きました。⇒http://goo.gl/964Et

「利害対立」の落とし所を多数決で決めるならまだしも、「善悪」を多数決で決めるには大きなリスクを伴います。

特に宗教的なものの場合、例えば少数者が信じている宗教に対する、多数決の意見が必ずしも正しいとは言えない場合が多く見られます。かつての「魔女裁判」のようなものが現代でも行われる危険は否定できません。

憲法学の第一人者、慶應義塾大学法学部の小林節教授は憲法32条で保障されている「裁判を受ける権利」とは「本来プロの裁判官に裁かれることの保障」であって、「公正な第三者である裁判官に(公正な)裁判をしてもらわない限りは刑罰を受けない」という保障である。「裁判員という名の素人を司法に参加させることには賛成できない」と述べています。(小林節著『「憲法」改正と改悪』時事通信社,2012年,p.143⇒http://goo.gl/ZkaOL

こうした憲法の趣旨に鑑みても、裁判員という一般を司法に参加させることに、改善や法改正も含め、根本的に見直していく必要があると考えます。

3年を経過した裁判員制度。マスコミは「プロの常識に一石を投じた」と賛美していますが、裁判員制度のリスクについても明らかにすべきであり、同制度のあり方について国民的議論を深めていくべきです。
(文責・竜の口法子)

竜の口 法子

執筆者:竜の口 法子

女性局長

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