「原発ゼロ」シミュレーション―「原発ゼロ」は絶対に避けるべき
2/26付「原発全基停止目前!政府は原発の再稼働に向けて全力を尽くせ!」でお伝えした通り、「原発ゼロ」が目前に迫っています。
「十分な節電を行えば、原発稼働ゼロでも夏乗り切れる」という原発反対派の意見がありますが、本当に「原発ゼロ」でも大丈夫なのでしょうか?「原発ゼロ」のシミュレーションをしてみたいと思います。
原発の再稼働がなく、昨年の夏並みのピーク需要となった場合、今夏、下記事態の発生が予測されます。
(1)約1割(▲9.2%、▲1,656万Kw)のピーク供給力が不足し、供給予備率が低下。最悪の場合には大規模停電が発生する。(出典:2011/11/1 エネルギー・環境会議「今後の電力供給対策について」⇒http://goo.gl/8HiX8)
※電力会社別の2012年夏の電力供給予備率予測(2010年並の猛暑を想定)では、東京電力▲13.4%、関西電力▲19.3%、四国電力▲11.3%、九州電力▲12.3%、北海道電力▲6.4%等が顕著である(同上)。
※一般に、供給予備率は8~10%程度が適正で、3%を切ると大規模停電のリスクが高くなる。
(2)供給予備率を確保するために「節電」の依頼、または「電力使用制限令の発動」を行うことになり、経済活動が制限される。
※理論上はピーク時の需要のみカットすれば良いが、リアルタイムにピーク時の需要をカットすることは困難なため、結果として過剰な節電、経済活動の縮小を余儀なくされる。
(3)その結果、2012年度のGDPを最大3.6%(20.2兆円)押し下げ、電力不足が国内産業の空洞化を加速させることで失業者数も20万人増加する。(2011/7/28 日本エネルギー経済研究所「短期エネルギー受給見通し」⇒http://goo.gl/sArqx)
(4)供給力を火力発電所で代替するため、化石燃料の輸入が増え、1日約100億円、年間3.5兆円もの国富の流出増(貿易赤字の増加)が起こる。(2011/6/24 日本エネルギー経済研究所「原子力発電の再稼動の有無に関する 2012 年度までの電力需給分析」⇒http://goo.gl/ehiUK)
(5)需要増加とバーゲニングパワー(価格交渉力)の低下により、燃料価格が高騰する。
(6)化石燃料への過度の依存により、ホルムズ海峡や南シナ海等での有事の際には、燃料価格が大幅に高騰したり、輸入が途絶する可能性が高まる。
もちろん、原発反対派が主張しているように、理論上は「原発ゼロ」になったとしても、どこまでも節電し、どこまでも経済活動を縮小すれば、大停電は回避できるでしょう。
しかし、その代償として、昨夏、東電管内でなされたようなビルの空調カット、電車の間引き運転、休日の調整(土日→平日)、休日の追加、生産の延期、生産場所の移転等を、今夏は全国規模で徹底展開する必要が出てきます。
その結果、電力供給の不安定化、使用制限、電力価格の高騰等が起こり、産業が海外に移転し、国内産業の空洞化が起こり、景気悪化や失業者の増大は避けられなくなります。
これはまさに、左翼・民主党の目指す「日本の衰退した未来」であります。
「原発ゼロ」で経済の大幅な落ち込みと国富の流出をもたらし、国力を衰退させ、中国の侵略に対抗できなくなるようにするのが、亡国・民主党や中国共産党の戦略です。
また、「原発ゼロでも、十分な節電を行えば大停電は回避できる」というのは理論上、計算上のことであり、現実問題としては、供給予備率の低下は大きなリスクを伴います。それは、発電施設の稼働率は常に100%ではなく、また電力系統には様々なトラブルがつきものだからです。
例えば直近では、1月25日に北海道と本州を結ぶ送電線「北本連系線」の一部が船舶の錨によって損傷を受け、一瞬にして30万kWの融通容量が失われました。(1/25 共同 http://goo.gl/KtWwd)
また、2月3日には九州電力の新大分火力発電所で、凍結による設備のトラブルから、一瞬にして230万kWの供給力が脱落しました。九電は緊急的に他電力6社から計240万kWの供給を受け、供給予備率3.3%を確保し、かろうじて計画停電を回避しました。(2/3 朝日⇒http://goo.gl/60212)
このように、現実的には電力系統には様々なトラブルがつきものです。また、原発の停止により、老朽化した火力発電所を無理に動かしているので、故障の可能性も高まっています。
「ベース電力」を賄っていた原発の停止は電力総量を低下させ、電力供給は全国的に「綱渡り」状態にあります。その結果、こうしたトラブルによる大規模停電のリスクも高まっています。
こうした点からも「原発ゼロ」は絶対に避けるべきです。
(文責・黒川白雲)