「新聞週間」――メディアは国民の「知る権利」に奉仕せよ
本日10月15日から「新聞週間」が始まります。社団法人日本新聞協会は、毎年、記念行事を開催すると共に、新聞が担う使命や責任を問い直す節目としています。
新聞の発行部数は、人口の多い中国、インドに次いで日本は世界第3位であり、この上位3ヵ国を成人人口で比較すると日本は断突の1位です。
また、一世帯あたりの部数は0.92部となり、ほぼ全世帯に行き届いている計算になります。文字離れが叫ばれて久しい日本ですが、世界の中では最も活字に溢れた国だと言えます。(新聞協会HP/『World press trends』2010年版)
特に、日本では新聞各紙の活字が社会に与える影響が世界で最も大きいことを踏まえ、新聞やメディアが本当の意味で、国民の「知る権利」に奉仕しているのかを厳しく問うべきです。
「新聞週間」にちなんで、東京新聞では「当たり前の新聞目指す 新聞週間に寄せて」(10/14論説主幹・清水美和氏)という記事で「庶民は正確な情報さえあれば賢い判断を下します」と主張しており、この点、的を得ています。
しかし、その後の行(くだり)を見ると、「膨大な借金を抱える日本は将来の増税もやむを得ないでしょう」と結論付け、短絡的に世論を「増税」に誘導しています。
また、「沖縄の人々が集中する米軍基地に反感を募らせていては、日米関係は安定しません」として、「米軍基地反対」を世論として誘導する意図が見られます。
上記は一例に過ぎませんが、新聞情報には、このような偏向報道が随所に見られます。偏った情報に基づいては、私たち国民は「正しい判断」や「正しい政治家の選択」をなすことが出来ません。
国民の側としても、メディアは単なる判断材料に過ぎないと自覚し、新聞の言論を鵜呑みにせず、情報の発信源は何処の誰か、本当に信頼に足るものなのか、そして隠された意図は何かなど、「メディア・リテラシー」(メディアから正しい情報を読み解く見識)を高めていく必要があります。
「増税」に関して言えば、増税が消費を冷え込ませて不況を深刻化させ、倒産やリストラが増大すること。消費税増税が自殺者が年間3万人を超える引き金となったこと。増税しても税収が減っている事実など、メディアは増税のデメリットも報じるべきです。
そして、「経済成長なくして、税収増(財政再建)も、社会保障の拡充も実現できない」という、世界では常識となっている国家経営の基本を国民に伝えるべきです。
また、「沖縄の米軍基地」に関して言えば、東シナ海や南シナ海における中国の覇権主義の脅威、日本の主要都市に照準を合わせている中国や北朝鮮の核兵器の脅威等を伝え、抑止力として日米同盟が不可欠であることを伝えるべきです。
実際、中国は、米軍がベトナムから撤退した年にベトナムに攻め込んでおり、また、フィリピンでも米軍が撤退した直後に、領海侵犯を行い、実効支配を始めています。
地政学的にも、沖縄に米軍基地が無くなれば、中国や北朝鮮の脅威から、日本や台湾、韓国等を守ることは困難になり、アジアの平和を守ることは出来ないという現実を伝えるべきです。
福島原発の報道においても、マスコミは中途半端な科学的知識を弄して不安を煽り立て、風評被害を拡大させていることに鑑みると、「風評被害」というよりも、「マスコミ被害」というべきものがあります。
また、「政権交代」の大合唱の結果、民主党政権の2年におよぶ混乱と政治空白による国難をもたらした責任を、新聞・マスコミ各社はどのように取るおつもりでしょうか。
新聞各社が国民に確かな視座を与えること無くして、国民は正しい判断は出来ず、日本再建を成し遂げることは出来ません。マスコミは公論を論じる重さを自覚し、その責任を果たして頂きたいと思います。
「新聞週間」の機会に、新聞は本当の意味で、国民の「知る権利」に応えるべく自己変革すべきですし、私たち国民はマスコミ報道の真偽を見抜き、情報を活用していく見識を高め、政治・経済の再建を成し遂げてまいりたいと思います。
(文責・小川俊介)