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揺れる欧州。次は銀行危機。

ギリシャの債務危機がクローズアップされていますが、ここにきて銀行危機も表面化しています。

10月4日に開催された欧州財務相理事会では、ギリシャ支援は見送られ、代わりに銀行支援策が合意に達しました。

フランス・ベルギー系の金融機関であるデクシアは、ギリシャに対する莫大な投融資残残高を有し、今回のギリシャ危機によって経営危機が表面化しました。実は、2008年のリーマンショックの際には、64億ユーロ(約6400億円)にのぼる政府支援を受けており、経営状態は綱渡り状態が続いていたことが各種報道によって明らかとなっています。

デクシアに対しては、フランスとベルギーが救済をいち早く表明しましたが、不良資産は関連銀行に移譲され、健全部門まで売却を余儀なくされているため、事実上解体されたことになります。

欧州市場では、ギリシャ支援が11月まで先送りされたことと、デクシアの経営危機によって欧州銀行株指数は4%も下落しました。ギリシャの債務危機の最中に、銀行危機が襲い、さらに悪いことに、米格付け会社のムーディーズ・インベスターズがイタリア国債を三段階引き下げました。格付けの見通しも「ネガティブ(弱含み)」としている以上、さらなる引き下げもありえます。

こうした一連の流れの中で、欧州の主要メディアも悲観論に陥っています。英ファイナンシャル・タイムズ紙は、すべての銀行が抱える損失を公表し、慢性的な経営危機を残存させるよりも「ショック療法」的な厳しい措置を求めています。銀行部門が信用危機となれば、倒産だけでなく、国際金融市場や債券市場からの資金調達が困難となります。ただでさえ、緊縮財政と増税によって不況に陥いる可能性の高い欧州で、資金調達までダメになるのは大きな痛手です。

ただ、欧州危機の根本的原因は、共通通貨ユーロによる足かせであることは間違いありません。共通通貨ユーロを維持するために設定している財政基準のため、ユーロ圏各国が緊縮財政を余儀なくされています。

また、金融政策は欧州中央銀行にしか権限がありません。そのため、簡単に金融政策が発動できないのです。特に、ギリシャでは緊縮財政と増税を進めなければならないことが影響して、11年度の経済成長率はマイナス5.5%になると予想されています。問題となっている財政赤字の対GDP比は8.5%にのぼり、国際通貨基金(IMF)等と合意した7.6%を上回ることになります。

その意味で、共通通貨ユーロは、経済的な理由よりも政治的な理由によってすすめられていると言えましょう。実際、欧州がやっていることを見れば、景気対策をせずに緊縮財政と増税です。経済成長を犠牲にしてでも、ユーロを維持する信念は固いと見えます。

今のまま、欧州が政治姿勢を崩さないならば、第二のリーマンショックとなる可能性すらあります。アメリカと日本の景気は弱いままですが、相応の資金を提供することも有り得るでしょう。

欧州市場から目を話してはなりません。「対岸の家事として見てはいけない」というのは事実ですが、日本が緊縮財政と増税を真似る必要はありません。

これを機に統一市場と共通通貨の難しさを学ぶべきです。そして、世界不況とならないために、国内と国際的な対策をしっかり練るべきです。
(文責:中野雄太)

中野 雄太

執筆者:中野 雄太

幸福実現党 静岡県本部幹事長

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