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生活保護受給者が戦後過去最多を更新~国家再建の原点に立て~

厚生労働省は12月6日、全国で生活保護を受給している人が、本年8月時点(速報値)で205万9871人、世帯数では149万3230世帯となり、いずれも過去最多を更新したことを発表しました。

206万人という数値は終戦直後の1951年の月平均204万人を超えており、終戦直後の状況にまで陥っているとも言え、政府は日本経済再建に向け、国家の総力を結集すべきであります。

生活保護受給者の増加に伴い、近年、予算も膨張しており、生活保護の給付額は11年度で3兆4235億円(当初予算)で、08年度の2兆7006億円からわずか3年間で7000億円以上も増えています。

生活保護受給者は景気と直結しており、1995年度に過去最少の88万2229人となってから増加に転じ、16年間で受給者が2.3倍以上増えています。

これは「長期不況」が、生活保護増大の要因であることが指摘されています。(12/6日経)

現在の増加ペースが続けば、更に生活保護受給者が増加し、予算が膨張していくことは避けられません。

今後、東日本大震災で被災され、失業された方々の失業保険や雇用調整助成金が切れれば、生活保護世帯が急激に増えていくことは避けられません。

政府は来秋までに生活困窮者対策を総合的に進める「生活支援戦略」を策定する方針ということですが、あまりにも対応が悠長すぎます。

増加傾向にある生活保護への対策として、最優先されるべきは、消費増税の議論や社会保障の拡充論議ではなく、雇用を拡大するための景気対策・経済対策に他なりません。

これまで2~3%台を推移していた日本の失業率が、1997年の消費税増税後、4~5%台に跳ね上がったことを考えれば、消費税増税が更に失業者、生活保護受給者を急増させる結果をもたらすことは明らかです。

併せて注目すべき数値としては、働ける年代なのに失業などで受給する人を含む「その他の世帯」の急増で、25万1176世帯となり、2008年のリーマン・ショック前の2倍に増えています。(11/24東京新聞)

この理由について、学習院大学経済学部教授(社会保障論、福祉経済学)の鈴木亘氏は、労働政策研究・研修機構の周燕飛氏との共著論文「生活保護率の上昇要因-長期時系列データに基づく考察-」において、下記のように指摘しています。(⇒http://p.tl/aqUC

「リーマン・ショックによる派遣労働者の失業を救うために、2008 年末に『年越し派遣村』が設営され、連日テレビ等で放映される政治パフォーマンスが展開された。

その中に設置された生活保護申請窓口において、政治的なプレッシャーの下で、失業者やホームレスの人々に対して、実質的に緩和された基準で、素早い生活保護受給が認められたのである。

そして、そのことが前例となったこともあり、2009年3月以降に次々と出された厚生労働省の各通達によって、以前は生活保護申請が難しかった稼働能力層が多く含まれる『その他世帯』の生活保護受給の基準が、大幅に緩和されることとなったのである。」

すなわち、民主党政権誕生の原動力となった「年越し派遣村」などの「格差批判」キャンペーンや「政治的圧力」によって、特に働ける年代への生活保護受給の基準が大幅に緩和されたことが原因であると指摘しています。

その意味で、政府は景気を回復させ、雇用を増やすと共に、働ける世代が自立できるよう、早急な自立支援政策や支給緩和措置の再検討が必要です。

民主党の前原政調会長は10日、「生活保護費にも切り込むべきだ」との考えを示しましたが、セーフティネットを踏まえつつ、国民が自立していく方向に向かうことは不可欠です。

言うまでも無いことですが、「収入があると年金が貰えなくなる」「生活保護が貰えなくなるから仕事をしたくない」「仕事をするより生活保護を貰った方が得」等、生活保護の受給が実人生を矮小化するような考え方は本末転倒です。

また、生活保護に関して、収入や資産を偽って申請する等の「不正受給」や、高齢者・貧困者等の社会的弱者を利用して生活保護をピンハネするような「貧困ビジネス」など、税金を食い物にして、国家に寄生するような卑劣な行為に対する厳格な行政施策が必要です。

戦後の混乱期と同水準の生活保護受給者数となったことで、政府は「国家再建」の原点に立って、経済成長戦略を力強く打ち出し、国民が自立して生活できる豊かな社会を築いていくことが急務です。
(文責・小川俊介)

小川 俊介

執筆者:小川 俊介

幸福実現党 三重県本部参議院選挙区代表

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