「信仰」ある国づくりで、政治に「正しさ」を取り戻そう(幸福実現党NEWSvol.169解説)
幸福実現党政務調査会代理 小川佳世子
◆霊的な戦いに勝利したトランプ氏
11月に行われたアメリカ大統領選挙では、皆様ご存知の通り、トランプ前大統領がハリス副大統領に勝利しました。一度落選した大統領経験者が返り咲きを果たすのは、132年ぶりで極めて異例の出来事です。
さらに、トランプ氏が所属するアメリカ共和党は、同時に行われた連邦議会選挙において、上院と下院共に過半数を獲得しました。
日本のメディアは、トランプ氏の歯に衣着せぬ物言いを取り上げ、「なぜこのような人物が勝利したのか分からない」というようなネガティブなトーンの報道が散見されますが、こうした報道は、トランプ氏の本質をまったく捉えていないと言えます。
幸福実現党は、トランプ氏が多くのアメリカ人の心を惹きつけたのは、政府からの自由を求めた精神性、その奥にある宗教的な信念にあると考えています。
トランプ氏の支持者は、熱心なクリスチャンが多いのですが、彼らは今回の大統領選について「Spiritual War」霊的な戦い、宗教的な戦いだと位置づけていました。
バイデン政権やアメリカ民主党からは、「神」という言葉はほとんど聞かれず、LGBTの権利拡大などを推し進め、「神は人間を男女に分けて作られた」という聖書の記述を信じるクリスチャンから批判の声が上がっていました。
一方、トランプ氏のスピーチには、「創造主」や「全知全能の神」という言葉が度々登場します。トランプ氏の「Make America Great Again」(アメリカを再び偉大な国にしよう)というメッセージは日本でも知られるようになりましたが、トランプ氏は同時に「Make America Pray Again」(アメリカを再び祈りの国にしよう)とか、「この国を再び偉大にするのは宗教である」と語っています。
これについて、日本のメディアは、「トランプ氏が宗教的な発言をするのは、アメリカ有権者の4分の1ほどを占めているキリスト教保守派の支持を集めるためだ」などという穿った見方をしていますが、LGBT権利拡大といった、直接聖書の記述に関わる宗教的なテーマ以外にも、トランプ氏とバイデン政権では目指す国家のビジョンに大きな違いがありました。
◆信仰ある国づくり (1)自由と自助努力からの繁栄
目指すべき国家ビジョンの違いが大きく出たのは、まず経済政策のあり方についてです。
今回、アメリカ民主党が支持者を減らした最大の原因は経済問題です。
新型コロナによる経済ダメージから立ち直ろうとしている時、民主党が行ったのは巨額のバラマキです。
また、気候変動対策として環境規制を強化し、石油・ガスの掘削許可を取り消すなど、経済活動に制限をかけました。
このように、巨額のバラマキを行う一方で、経済活動を制限すれば、行きつく先はインフレ、すなわち物価高です。
これに加えて、ロシアに経済制裁を加えたことで、世界的にエネルギー価格が高騰し、給料はあまり上がらないのにモノやサービスの値段だけがどんどん高くなり、国民生活を苦しめたのです。
その上、法人税の増税や富裕層への課税強化の方針を打ち出しました。
一方、トランプ氏が掲げているのは、政府がやらなくていい仕事を思い切って無くし、それによって税金の負担も大幅に減らそうということです。
テスラ社や、X社などの経営を行っているイーロン・マスク氏らを政府効率化省(DOGE)のトップに任命し、国家予算を少なくとも2兆ドル、日本円にして300兆円ほど削減するという驚きの施策も打ち出しています。これは、アメリカの国家予算の3割弱に当たります。
そのうえで、法人税の更なる引き下げを目指しています。
前回のトランプ政権下で、35%から21%に引き下げた連邦法人税をさらに下げ、特にアメリカ国内でものづくりをする企業の法人税は15%にするという政策を掲げています。
また、根拠のハッキリしない気候変動対策のための温室効果ガス削減はやめて、石油をどんどん掘ろう、もっと自由にビジネスをできるようにしようと訴えています。
これは、幸福実現党が立党以来掲げている「小さな政府、安い税金」の考えと同じです。
なぜここまで思い切ったビジョンを打ち出せるのかといえば、トランプ氏は「自由は政府からではなく神から与えられたものだ」という宗教的信念を持っているからです。
政府が国の経済のあり方を計画的にコントロールできるという考えではなく、神から与えられた自由を守り、自由のなかで自助論の精神を発揮し、発展していくことが大切だと考えているからこそ、こうした思い切った施策を打てるのです。
◆信仰ある国づくり (2)唯物論国家・中国への強硬姿勢
目指すべき国家ビジョンの違いの二つ目は、外交政策です。
バイデン大統領は、「民主主義国家 対 専制国家」の構図を打ち出して、ロシアを敵視し、中国、北朝鮮、イランなどの「専制国家」と同じ枠組みに入れました。
中国とロシアが結び付けば、軍事的にも経済的にも、欧米諸国と対抗できる勢力となります。その結果、世界の勢力は二分され、世界大戦、そして核戦争の危機が高まったのです。
一方、トランプ氏は、神を信じない共産主義、全体主義国家の中国こそ、アメリカ、そして世界にとって最大の脅威であると認識しており、政権の中枢に、中国に対して厳しい姿勢を貫く人材をそろえました。
さらに、中国に10%の追加関税をかけ、最終的に60%の関税をかけると主張しています。
2009年から2022年まで、アメリカの最大の輸入先は中国でした。アメリカの輸入全体に占める中国の割合は最大21%もあったのです。
前トランプ政権が中国に関税をかけたこともあり、2023年には15年ぶりに中国がアメリカの輸入先トップから転落しました。
それでも輸入全体に占める割合は約14%、金額にして4200億ドル、日本円にして63兆円を超えています。
減ったと言っても、まだまだ中国からたくさんモノを買っているのですが、トランプ氏は今後、さらに関税を引き上げようとしているわけです。
関税を上げれば中国はアメリカにモノを買ってもらえなくなりますので大きなダメージとなりますが、アメリカにとってもこれだけたくさんのものを輸入しているわけですから、物価高につながって国民生活にも影響があります。
それでもなぜ関税を上げるのかといえば、中国の利益を減らし、経済力を弱め、最終的に軍事力に回すお金を減らす、すなわち「兵糧攻め」の意味があります。
トランプ氏は「もし、中国が台湾に侵攻するなら150%から200%の関税を課すつもりだ」とも述べています。
この発言からも分かるように、トランプ氏はアメリカの経済力を武器として、軍事力による中国の覇権拡大を抑止しようとしているのです。
さらにトランプ氏は、ロシア-ウクライナ戦争を終結させ、ロシアとの関係を修復し、中国とロシアが結び付かないよう手を打つと思われます。
トランプ氏の支持者たちの声、またトランプ政権の今後の動きなどについては、幸福実現党のYouTube番組である、言論チャンネルやTruth Zでも取り上げていますので、是非ご覧ください。
◆日本も「信仰心」を大切にした国づくりを
このようにアメリカはトランプ大統領のもと、大きく変わろうとしています。
アメリカの重要なパートナーである日本も、この流れを見誤るべきではありません。
幸福実現党が訴えたいのは、今、日本にとって大切なことは、「何が正しいか」という善悪の判断に責任を持つ政治を行うということです。
善悪の判断を行うためには、人間の欲望や利害を超えた、神仏の考え、神仏の願いというもの、すなわち価値観を教える宗教を尊重することが大事になります。
日本で「宗教」というと、神にお願い事をして御利益を得ること、というイメージがあると思いますが、世界標準の宗教とは、神仏の存在を信じ、神仏の心、価値観を学ぶものです。
アメリカで起きたトランプ氏当選も、有権者が「正しさとは何か」「神の心に適った政治とはどういうものか」を求めた結果だったといえます。
現在、日本では、政府に何をしてもらえるかという「バラマキ政治」が横行し、「働き方改革」という名の残業規制と企業への「賃上げ要求」を行い、「なるべく働かずに給料はしっかりもらいたい」という考え方が良しとされているような状態です。
「御利益」を求める誤った宗教観が、政治の世界にも流れてきているといえます。
しかし、日本経済が強くなったのは、勤勉の精神を大切にし、「しっかり働いて、社会のため、国家のために貢献しよう」という価値観のもと、智慧を絞り、民間企業が付加価値の高いモノやサービスを生み出したからです。
自助論の精神を持つ国民が増えなければ、国が豊かになることはないのです。
幸福実現党の大川隆法総裁は、「鍛錬の光」という法話の中で次のように述べています。
「自分が努力して、偉くなることで周りをもっともっと素晴らしくしよう、立派にしよう、豊かにしよう。そして日本の国力もつけよう。世界に対してもいい影響を与えよう」、こういうふうに思う人を増やす必要があるのだということです。
「信仰」とそういう「自己鍛錬、努力」というのは両立するものだと思っているし、そうでなければ、立派な国や立派な世界には決してなることはないというふうに思っています。
幸福実現党は、日本がかつて尊重してきた、勤勉の精神を取り戻し「小さな政府、安い税金」の国造りをして、日本を立て直していきたいと考えています。
さらに、「武士道の精神」を取り戻して、中国の悪事に対して正々堂々と発言できるような国を目指します。
人権弾圧を繰り返し、台湾を軍事的に威嚇する中国の悪に目をつぶり、経済的にはうまく付き合っていこうという姿勢では、これからのアメリカの信頼は得られません。
そして中国を封じ込めていくためには、ロシアとの関係回復が不可欠です。
大川総裁は、信仰を持つ国同士が連携して唯物論国家を包囲していく必要があるとして、次のように世界戦略を語っています。
(以下引用)
バイデンさん的に、「民主主義国家」対「専制国家」と言うだけでは十分ではないと私は思っているのです。やはり、「神仏への信仰心を持っている国家」対「無神論・唯物論国家」という、この対立であれば、勝てる可能性はあるのです。
「完全な無神論・唯物論の国家」というのは数はまだ少なく、そんなにないのです。はっきり言えば、中国と北朝鮮ぐらいしかないのです。あとは、ある程度、みんな信仰心を持っているので、そちらのほうにもうちょっと追い込んでいく必要はあるのではないかと思っています。(『「メシアの法」講義』)
(引用終わり)
ロシアは旧ソ連の継承国ではありますが、ソ連とは政治体制が違います。何より、ソ連は共産主義の唯物論国家でしたが、ロシアはロシア正教の信仰を大切にするプーチン大統領のもと、信仰を尊重する国です。
この信仰を持つ国ロシアを、いわゆる西側諸国の仲間にしていくことが、日本と世界の安定のために不可欠なのです。
◆世界宗教を統合する大川総裁の教え
このように、正しい政治を行っていくためには、普遍的な政治思想が必要であり、その根底には神仏の心を教える正しい宗教がなくてはなりません。
「自由」や「民主主義」は大切な価値観ですが、各自の欲望に基づく自由、好き勝手に生きる自由を尊重し、自分の人生や家族に責任を持たず、社会の秩序を乱し、挙句の果てには他人に迷惑をかけても自由というのは何かがおかしいのではないでしょうか。
そして、そうした人たちが多数集まって「民主主義」を行ったとしても、国が繁栄することはありません。
やはり、人間の欲を超えた普遍の価値に心を合わせ、その上で各自の自由を発揮して国づくりをする「信仰ある自由」「信仰ある民主主義」が、国民の幸福を実現し、未来の世界を拓くためのカギといえます。
私たち幸福実現党は、宗教心、信仰心を根底に据えた国造り「宗教立国」の実現を目指しています。トランプ政権のあり方をそのヒントにしつつ、あるべき日本と世界の姿をこれからも示してまいります。