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国保保険料、上限2万円引き上げの「カラクリ」が本当に恐いワケ。【後編】

http://hrp-newsfile.jp/2022/4370/

幸福実現党 政務調査会 藤森智博

◆政府が根拠不明の自主ルールで上限引き上げを行う危険性

そうした批判を恐れてか、 「フリーハンド「と言っても、政府の運用は慎重です。根拠不明の自主ルールを勝手に作って運用しています。

それは、保険料の上限額に該当する世帯の割合を1.5%に近づけることを目指すというものです。

一度に大幅に引き上げてしまうと、それだけ「保険性」が失われてしまうのと同時に重税感が出て批判が強まるのを恐れているため、そうした自主ルールを設定しているのかもしれません。

ですが、根拠不明のルールに基づいていること自体が非常に危険であると言わざるを得ません。根拠不明というのは、法的根拠と合理的根拠の両方について言えます。

法的根拠としては、政令で定められておらず、不明です。さらに後述の通り合理的根拠も不明なので、為政者の都合で「何でもあり」になりかねないのです。

◆政府の自主ルールの説明が信用できないワケ(1):他の保険に関する法律を都合よく解釈している

合理的根拠については、厚労省の説明はあります。

会社員向けの「被用者保険」において、最高額の人の割合が「0.5%~1.5%の間となるように法定されている」ので、これとバランスを取って、1.5%に近づけているとされています。

もっともらしく聞こえますが、仕組みも所得層もバラバラな「被用者保険」と「国民健康保険」を同じルールにしても、バランスは取れるようで全く取れません。実際、所得が高くなってくると、「国民健康保険の方が保険料は高い」という声はよく聞かれます。

また、厚労省の説明にはかなり嘘が入っています。厚労省の言う通り、「被用者保険」で最高額の割合が「法定」されているのは事実です。

しかし、被用者保険について定める「健康保険法」の第40条の2では、最高額の人の割合が1.5%を超える状態が「継続すると認められるとき」に、引き上げを「行うことができる」と規定されています。

厚労省の書き振りでは、「0.5%~1.5%の間」が義務規定のように受け止める人がいてもおかしくありませんが、実際は全く違います。

ちなみに、健康保険法と同様の規定は「厚生年金保険法」にも見られるのですが、実際の運用で「継続すると認められる」と判断して保険料を引き上げるまで、5年間を要しています。

国民健康保険と相当違いがありますが、これが「法定「されているかどうかの違いとも言えるでしょう。

◆政府の自主ルールの説明が信用できないワケ(2):いつの間に自主ルールを変更している

さらに言えば、この1.5%ルールも「取ってつけたもの」であることは間違いありません。2008年に「介護保険料の在り方等に関する検討会」が開催されたことがありました。

会議では、公的保険制度の最高限度額の考え方を記した資料が配られているのですが、そこでは国保について、1.5%ではなく、「4%」が目安と示されているのです。

この割合が増えるということは、その分上限額に達する世帯が増えても、上限を引き上げできないことを意味するので、それだけ累進課税にしづらくなります。

しかし、懐事情が厳しくなったからなのか、いつの間にか高所得者層から増税しやすいルールに変更されてしまいました。これが法定されていない恐ろしさです。

なお、「被用者保険」において4%が法定だったことはありません。

◆会社員向けの被用者保険の保険料も「インスタント「な引き上げを政府は狙う

以上は自営業者やフリーランスなどの国保の話ですが、会社員も見過ごすべきではありません。「インスタントに上限を引き上げる」というのは厚労省の長年の夢だからです。それは法律の変遷を見れば明らかです。

会社員の保険料である被用者保険について、「政令」で保険料の上限を引き上げる条件は緩くなってきています。

被用者保険について定める「健康保険法」では、もともと政令で保険料の上限を引き上げる場合、上限額の人の割合が3%以上でなければいけませんでした。しかし、2007年施行の法改正で、今の1.5%となりました。

さらに、2016年施行の法改正で「1.0%~1.5%」だったのが、「0.5%~1.5%」となりました。保険料の上限を引き上げすぎて、最高額を支払う人の割合が「うっかり1%を下回ってもいいようにした」わけです。

つまり、法改正を経ずとも政令で上限の引き上げができる環境を整えてきているのです。

◆私有財産権という自由の根幹となる権利を守るためにも、政府の姿勢には反対を

今回のように恒例行事とも言える国保保険料の上限引き上げについて、「自分には関係ない」と言って、これを放置すれば、その悪影響は拡大していく可能性が高いと言えます。

それが行き着く先は、政府の権力が肥大化し、私有財産権が軽んじられ、あなたの自由が制限される恐ろしい社会です。

そうした社会が本格化することがないよう、いき過ぎた「新福祉国家主義」に警鐘を鳴らしていくべきでしょう。

藤森智博

執筆者:藤森智博

幸福実現党 政務調査会

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