台湾海峡で米中もし戦わば。米軍勝利も、米空母2隻撃沈・戦闘機900機以上が撃墜【前編】
幸福実現党党首 釈量子
◆中国が台湾統一に向けたリハーサル?
台湾海峡の緊迫度が増しています。
中国は米下院議長のナンシー・ペロシ氏の台湾訪問に反発し、8月4日から数日間かけて実戦さながらの軍事演習を行いました。
中国の官製メディア「環球時報」は8月3日の時点で、「今回の軍事演習は台湾統一に向けたリハーサルであり、今後も引き続き行われる」と報道しました。
軍事演習が始まる前日、まず大規模なサイバー攻撃が行われ、台湾各地のセブンイレブンでは「戦争屋のペロシ、台湾から出ていけ」という文字が大きく映し出されました。
台湾鉄道や地方行政の電子掲示板にも「偉大な中国はいずれ統一される」という文字も表示されました。
台湾国立大学もハッキングされ、「世界には一つの中国しかない」と表示されました。
台湾政府は今回のハッキングについて、中国製のソフトウェアが使用されたことが原因であるとことを突き止めて、公的機関のすべての敷地内で、中国製機器を使用することを即座に禁止しました。
そして、8月4日から始まった軍事演習では、台湾を包囲するように海上封鎖の予行演習を行いました。
海上封鎖の目的は、米国から台湾への軍事支援を断ち、台湾の輸出入を止め、台湾の無血開城を迫ることにあります。
日本にとっても、台湾海峡は中東からマラッカ海峡を経て原油を輸入するための重要なシーレーンの一部です。
実際に「海上封鎖」の予行演習をされたことによって、台湾海峡を航行する予定の数十の船舶が台湾海峡を迂回せざるを得ませんでした。
実際に事が起きれば、迂回で済むかわかりません。拿捕されたり、撃沈される可能性や、またエネルギーや食糧など、日本の安全保障が危機に陥るのは間違いありません。
◆台湾の半導体も中国の管理下に
さらにもう一つの危機は、半導体です。
もし中国が台湾の海上封鎖を行ったら、世界的に有名な台湾の半導体企業TSMCの輸出を、中国が管理するということになります。
半導体は、iPhoneなどスマホやパソコンばかりではなく、自動車など様々使われており、半導体を押さえられたら世界経済は中国に握られることになります。
昨年、アメリカ陸軍戦争大学の雑誌(『PARAMETERS』)で「中国が台湾侵攻をするなら、TSMCを焼き払え」という論文が一番読まれました。
TSMCが無くなれば、中国が台湾侵攻する理由も無くなるだろう、というものです。
現在起きているエネルギーや食糧危機に続いて、半導体危機が現れたら、世界経済は大混乱に陥ります。
◆中国の弾道ミサイル5発がEEZに着弾
さらに、8月4日は、中国が発射した弾道ミサイル5発が日本の経済的排他水域(EEZ)に初めて着弾しました。
この演習は、より実戦に近い演習を想定し、習近平国家主席自ら判断したと言われています。
これは、台湾に近い南西諸島海域の軍事封鎖は避けられないため、台湾侵攻の際に「日本は介入するな」という牽制の意味があると思います。
石垣市の中山市長は、「台湾を超えて来た中国のミサイルは私たちの島のすぐ近くに着弾した。与那国島の80km近辺にも落ちている。台湾有事は決して他人事ではないという感じだ」と話し、住民の避難体制の整備を政府に要求しました。
◆台湾海峡で米中もし戦わば
こうした深刻な事態を受け、8月上旬、アメリカワシントンD.C.に本部を置く、民間シンクタンク「CSIS戦略国際問題研究所」が、「台湾を巡って米中戦争が起きたらどうなるのか」をシミュレーションし、米国で話題となっています。
今回のシミュレーションは、前提として米国の公式見解では、台湾侵攻の際に関与するかどうかを明言しない「あいまい戦略」を採用しています。
あいまい戦略とは、「台湾が中国に武力攻撃を受けた際に、米国がこれにどう対応するか明言しないでおく」という政策です。
そうすることで中国を挑発せず、また一方で台湾がアメリカの安全保障の約束に自信を持つと、独立を宣言したりしかねないので、中国の台湾進攻の糸口を作らないよう微妙なバランスに配慮したものです。
ただ今回は、「2026年に中国が台湾に侵攻し、米軍が軍事的に関与する」という前提でシミュレーションが検討されました。
また、日本については「本土が攻撃されない限り、直接的な軍事介入までは至らないが、日本国内の米軍基地の利用を許可する」とされました。
他にも、「核兵器は使用しないこと」や、「2026年までに配備可能な軍事力を前提とすること」などが前提とされました。
2026年という設定は、人民解放軍の創立100周年にあたる2027年までに台湾侵攻を行うということから来ています。
(後編につづく)