カトリック教会の香港教区トップが逮捕?ウイグル化する香港【前編】
幸福実現党党首 釈量子
◆急激に進む、香港の「ウイグル化」
急激に香港の「ウイグル化」が進んでいます。
「ウイグル化」とは、中国が新疆ウイグル自治区と呼ぶ東トルキスタンのウイグル人たちが置かれた悲惨極まりない状況に近づいてきているということです。
ウイグルでは、罪なき人々が「強制収容施設」に収監され、虐殺と搾取によって事実上の植民地、監獄同然となっています。香港はもはやそのような状況になってきています。
5月11日、カトリック教会の香港教区トップの司教をつとめた、陳日君(ジョセフ・ゼン)枢機卿ら少なくとも4人が「香港国家安全法」により逮捕されました。
ゼン氏は2002年から2009年の間に香港司教を務め、2006年に枢機卿に任命されました。「雨傘革命」では主導的な役割を果たして民主化運動を応援し、「香港の良心」と呼ばれた方です。
幸福の科学グループの雑誌「ザ・リバティ」の取材にも何度も応じていただき、「中国も民主主義を導入すべき」ということを語っておられました。
■「香港の信教の自由は風前の灯」 香港の良心と呼ばれる陳日君枢機卿インタビュー
2019.09.29
https://the-liberty.com/article/16317/
◆「香港の良心を逮捕した男」とは
今回の一連の逮捕は、香港で新しい行政長官が選出された直後というタイミングですが、その新行政長官・李家超(ジョン・リー)氏は、香港警察の元保安局長です。
李氏は2019年からの民主派デモを弾圧したり、中国政府を批判していた蘋果日報(アップル・デイリー)を潰した強硬派として知られています。
この手腕を中国政府に評価されて、香港政府の事実上のナンバー2である政務官に抜擢されていました。
さらに、李氏は保安局時代の2018年、中国・新疆ウイグル自治区の「テロ対策施設」を視察していて、そこでは「大変参考になる」などと発言していたことも報じられています。
この「テロ対策」というのは名ばかりで、そこではウイグル人への大量虐殺、ジェノサイドが行われていることは言うまでもありません。
しかも、李氏はその後、香港と中国の境界近くに「反テロ訓練施設」をつくることを計画しています。
この施設は、拘束された活動家への拷問・強姦などで悪名高い「新屋嶺(しんおくれい、広東語ではサン・ウク・リン)拘留センター」の隣に、東京ドーム4個分もの広さで建設が進んでいます。グーグル・アースの衛星写真からも確認することができます。
市民からは、「強制収容所が建設される」「新屋嶺(しんおくれい)ではなく、新疆嶺(しんきょうれい)だ」と恐れる声が上がっていました。
今回の逮捕は、新行政長官が今後、香港の弾圧をさらに強化していくことを暗示しているといって間違いありません。
◆相次ぐ海外の批判、そして“慎ましやか”な日本
これに対して海外では批判の声が相次ぎました。
アメリカ国務省のネッド・プライス報道官は5月11日、「香港当局が再び、あらゆる手段で異論を封じ、権利と自由を傷つけていくことを示した」との声明を発表し、香港政府を批判しました。
またイギリスのジェームズ・クリバリー大臣は、議会に対する声明で、「国家安全法による、民主派の逮捕は受け入れられない」「中国および香港当局には、国家安全法への強い反対を表明し続ける」と非難の声を上げています。
一方、バチカン(ローマ教皇庁)はゼン氏の逮捕について、「懸念している。今後の状況に最大の注意を払う」と遠慮がちなコメントを出しています。
これら、欧米の批判に対しては、中国政府の香港への出先機関(である外交部駐香港特派員公署)は「バカな政治劇はやめろ」と反論をしていますが、こういうのを、厚顔無恥というのだろうと思います。
残念なことに、日本の岸田文雄首相は5月4日にローマ教皇フランシスコと会談したばかりですが、
日本政府からは特に非難の声は出ていないようです。
(後編につづく)