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世界の工場は中国からインドに。日本も台湾を参考に国内回帰を。

https://www.youtube.com/watch?v=YFj84vVAbhI

幸福実現党広報本部長補佐 畠山元太朗
◆世界の工場は中国からインドに

米中貿易戦争が始まって以来、中国に進出している企業はチャイナリスクを意識し、脱中国を進めてきました。

しかし、トランプ政権がコロナウイルス感染拡大に関する中国への責任追及を強め、米中対立が激化するなか、脱中国の動きが広がっています。

インドの「Economic Times」によると、アップルは今後5年間でインド国内のiPhone生産施設の大幅な拡大に動いています。

アップルの主力製品であるiPhoneの大半は台湾の「鴻海(ホンハイ)精密工業」が、中国本土にある工場で製造しています。

アップルのサプライチェーンは、本社は設計・マーケティングを担当し、ソニーなどの高品質の部品を各国から調達し、中国の工場で最終製品の組み立てを行っていました。

しかし、米中貿易戦争が激化する中、生産拠点を分散化するためにインドに工場を建設しました。

今回の生産設備拡大が行われると、今後5年間でiPhoneの5分の1はインド製になります。

インド政府高官によれば、今後5年間で400億ドル(約4兆3000億円)の収益を生み出すとコメントしています。

さらに、インド政府は中国からの生産拠点移転を検討する米国企業の誘致に本腰を入れています。

4月だけで、米製薬大手(アボット・ラボラトリーズ)を含む1,000社以上と協議しました。

インドではモディ首相のもとで「Make in India」を掲げ、インド製造業の振興を図っていますが、米中対立を契機に一気に進めたいという狙いがあります。

インドは中国に並ぶ「人口大国」ですが、年齢構成がはるかに若いという特徴があります。

国連統計によれば、2015年の年齢中央値は、中国36.7歳に対し、インド26.8歳です。

また、平均的な所得水準、賃金水準が低いので、「若くて、安くて、豊富な労働力」があります。

これが、インドが、中国に代わる「世界の工場」の地位を受け継ぐ可能性が高いと言われる大きな理由です。

ただ、インド経済の弱点もあります。国家財政が弱いので、「インフラが未整備」という点があります。製造業を振興するためには、「莫大なインフラ投資」が必要になります。

例えば、電力の安定供給は不可欠なので、電力インフラが重要です。停電がよく起こるようでは工場を安定して稼働できません。

物流インフラも大事です。雨季の洪水で物流が止まるようでは、製造大国にはなりません。

この点、日本は新幹線型の高速鉄道や地下鉄などの交通インフラで技術提供していますが、今後大きな需要が見込まれます。

金融機関が中長期債を発行するなどしてバックアップしながら、日本経済の成長戦略の一環として取り組みつつ、日印関係強化を図るべきかと思います。

◆ベトナム、EUと自由貿易協定(FTA)を結ぶ

また、アップルは「脱中国」の一環として、「ヘッドフォン」をベトナムで生産する予定です。

中国の代替国として、インドとベトナムが有力候補で挙げられますが、そのベトナムは5月中にEUとの自由貿易協定(FTA)を締結します。

今後10年かけて双方の輸出品の殆ど全ての(99%)関税を撤廃します。ベトナムは中国、バングラディッシュに次ぐ世界3位の衣料品輸出大国です。

今後、輸出の約2割を占める衣料品や履物の輸出拡大が期待できるとともに、今後ますます脱中国に動く企業の受け皿になっていくでしょう。

◆日本も台湾を参考に国内回帰を

さらに、台湾の製造業が中国から国内回帰する動きを強めています。

2019年1月からの投資額はハイテク分野を中心に7600億台湾ドル(約2兆7000億円)に達しました。単純計算で、対中投資の5倍強のペースです。

台湾の国内回帰の成功には、台湾政府の後押しが効いています。蔡英文政権は2019年1月、新たな優遇策を発表しました。

工場用地の紹介や外国人労働者の雇用規制の緩和、民間融資の金利一部肩代わりなどです。

中国で2年以上の投資実績があり、米中貿易摩擦の影響を受けるなどの条件を満たす企業が対象です。

2期目の就任式で、蔡英文総統は「世界に信頼されるサイバーセキュリティなどの産業供給網を築く」と話し、日米欧との連携を深めて中国依存を加速する姿勢を鮮明にしました。

以上、脱中国の動きとして、(1)インドや東南アジアへの分散化、(2)企業の国内回帰を見てきました。

トランプ政権はインド太平洋戦略を掲げ、中国を外した国際的なサプライチェーン構築を急いでいます。

日本は日本企業の国内回帰を推し進めつつ、自由や民主主義、信仰の価値観を共有するインドや東南アジアの国々との連携を強くし、アジアのリーダーとしての役割を果たさなくてはなりません。

畠山元太朗

執筆者:畠山元太朗

幸福実現党広報本部長補佐

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