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成長戦略インサイト(6)財政投入は戦略性を持って行うべし

http://hrp-newsfile.jp/2020/3892/

幸福実現党成長戦略部会長 西邑拓真
――今月25日、政府は5都道県への緊急事態宣言を解除した

4月7日に発令された緊急事態宣言は、今回の解除を受けて約7週間ぶりに、全面的に解除されることとなりました。

政府や自治体の判断の遅れは企業経営者にとって命取りとなります。もっと早いタイミングでの全面解除とはならなかったのか、との思いは拭えません。

今後、感染拡大の第二波、第三波が到来することも予想されますが、政府が再度緊急事態宣言を発出するなど、今回と同様な措置を取るようなことがあれば、日本経済は奈落の底へと沈みかねません。

感染症の出口戦略として、東京都がロードマップを示すなど、自治体が独自に要請の解除に向けた基準を示しています。各要請を緩和するための一定の基準を示すのは良いのでしょうが、感染症の次の波が押し寄せた場合、これが経済活動を継続する上で支障をきたすことにつながりかねません。自治体などが何らかの判断を行うにあたっては、あくまで裁量の余地は残しておくべきでしょう。

今後、経済活動を行いながら徹底した感染症対策を行うべきなのは言うまでもありませんが、それはあくまでも、「国民の知恵を信頼する」ということを基本スタンスとすべきです。

――27日には、事業規模117兆円に至る第二次補正予算が閣議決定された

このうち、一般会計からの歳出分は31兆円余りとなります。いずれにしても、歳出のあり方については、その使途のあり方が問題となります。

日本は政府の失策もあり、経済は既に危機的状況を迎えている中にあって、企業等に対する融資策を強化すべきことには概ね異論はないでしょう。

しかし、雇用調整助成金や家賃支援給付、あるいは困窮学生への支援策等については本来、緊急事態宣言とそれに伴う措置がなければ、その多くは発生しなかったはずの歳出であったと言えます。

感染症の影響が長期に及んで、政府が今後も同様の形で給付策を実施するなどすれば、財政はいずれ持ちこたえられなくなるというのが、実際のところです。

そして、歳出が拡大し続けた場合、次に待ち受けているのは大増税であるということを忘れてはなりません。

今、マイナンバーと金融機関の預貯金口座を連結する案が浮上していますが、これが実現すれば、いずれ、国民の資産が国に丸裸にされる上、これが資産課税の強化に結びつくことになります。

マイナンバーを通じて、支援を受けるべき人に、行政側から迅速な支援が行われるという「プッシュ型支援」が実施されることを見返りに、国民は、大増税という大きなしっぺ返しを受けかねないというのが実態です。

――歳出のあり方は本来、どうあるべきと思うか

政府は本来、コロナ禍という「レモン」を「レモネード」に変えるべく、戦略的な投資に向けてイノベーションを図るべきです。 

具体的には、サプライチェーンを強化するための生産拠点の国内回帰策、あるいは万全なエネルギー供給体制の構築や農業生産力の強化など、経済成長のほか、危機に対応するための自給体制の構築に資する部分に対して、重点投資すべきです。

一方で、第一次補正予算においては、「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」が計上されていますが、その額はわずか2,200億円にすぎません。 

政府がお金を使おうとすると、どうしても総花的なものとなるのでしょうが、本来あるべき規模感からいってそれが過小に留まることは、決して好ましいことではありません。

アフターコロナにおいて、新たなカリスマ企業家が、次の日本経済を引っ張る一要素となるでしょう。

政府が直接的にお金を使うばかりではなく、例えば、優れた目利きを持つ銀行家を介して、適切な分野や企業家に資金を適切に配分するという考え方も重要です。

政府は既に、政府系金融機関はもとより、官民ファンドを通じた融資策を行うとしていますが、必要に応じて、そうした枠組みを通じた融資策を拡充することは、検討に値するでしょう。

――民間金融機関の動きとして、例えば横浜銀行は、資本性の強い「コロナ対応劣後ローン」を供給している

各地域の中小企業を支えるのが地銀です。横浜銀行が供給する「資本性が強いローン」は、返済を後回しにできる上、「借入」ではなく、「資本金」とみなすことができるとの性質を持っています。

日本経済を守るためには政府や日銀として、こうした仕組みを支えるための、何らかの枠組みを作ることは検討に値するでしょう。ただ、政府や日銀もある種「経営危機」に陥っている上、政府等の充実したバックアップがあればモラル・ハザードが起こり、例えば、金融機関が借り手にとってメリットが大きい貸し出しを、経営実態に対する検証を十分に行わないまま行うといった懸念もないわけではありません。従ってこの場合、バックアップ策を実施するとしても、「無制限に」というわけには中々いかないのが現実でしょう。

しかし、いずれにしても、ウィズコロナ、アフターコロナの世界に順応することもまた、企業にとっての一つの生き筋と言えます。こうした資本性融資の拡大を支援することにより、企業を救済するばかりか、変化に対応する民間の“サバイバル”を応援するのも良いと思います。

以上

西邑拓真

執筆者:西邑拓真

政調会成長戦略部会

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