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成長戦略ナレッジ(3)「新型コロナ対応の特措法改正について」

http://hrp-newsfile.jp/2020/3840/
(2020年3月13日付)

幸福実現党成長戦略部会長 西邑拓真
◆改正新型インフルエンザ等対策特別措置法とは

・13日、新型コロナウイルス感染症を新たな適用対象とする改正新型インフルエンザ等対策特別措置法が、参院本会議で可決、成立しました。

・政府は、全国一斉の臨時休校、大規模なイベントの自粛を要請するなどしていますが、今回成立した改正法に基づいて首相が「緊急事態宣言」を行えば、これらの措置に法的根拠を持たせることができるようになります。

・緊急事態が宣言されれば、都道府県の知事は学校や興行場の使用を制限したり、催し物を中止するよう指示ができるようになるほか、臨時の医療施設の開設のため、所有者の同意なしに土地や建物を使えるようになるなど、個人の権利に制限が課されるとの懸念もあります。

・一般論として、安全保障や危機管理の観点からは、国民の生命・安全を確保するため、一定の範囲内で行政府に権限が集中するというのはやむをえない面もあります。

・今後、緊急事態の宣言や対象地域で然るべき対処を行うべき事態に至る場合、私権を制限するとの性格を有する以上、政府や自治体は専門家等による然るべき情報のもと、明確な論拠に基づいた適切な判断が求められます。

・その上、緊急事態宣言の発出いかんに関わらず、政府による自粛要請などは日本経済に対して既に多大なダメージをもたらしています。今月10日、安倍晋三首相は、全国規模のイベント自粛、中止、延期、規模縮小要請を10日間程度延長させる考えを示していますが、その解除にあたっては、政府に迅速で的確な判断を求めたいところです。

◆必要な経済対策とは

・同感染症が日本経済に深刻な影響を及ぼしつつある状況に鑑み、政府はこれまで、一連の緊急対策を実施することを明らかにしています。

・第一弾として153億円規模の水際対策や国内感染対策、また中小企業支援として日本政策金融公庫などに5000億円規模の緊急貸付や補償枠を確保することを盛り込んでいます。また、第二弾として、同感染症により休業を余儀なくされた一部フリーランスや、休校中の子供のために仕事を休まざるをえなくなった保護者に向けた助成金制度の整備、PCR検査の能力拡大策が取りまとめられています。

・今、政府により、2020年度の補正予算案の編成を視野に、対策の第三弾が検討されています。

・本来あるべき対策の方向について、成長戦略部会として下記の通りまとめています。

◯ジャパンファーストの一環として、生産拠点の国内回帰を

・現在、感染症の影響で中国国内の生産現場が混乱していることによりサプライチェーンが寸断され、日本企業の一部は生産活動に支障をきたす事態となっています。

・これまで、生産活動の面で中国に依存してきた日本企業が、中国リスクを踏まえて体制を見直し、生産拠点の国内回帰を推し進められるよう、政府として強力に後押ししたいところです。

・この観点から、現行の29%台の法人実効税率は15%へと大幅に引き下げるほか、生産拠点の国内回帰に伴う設備投資額については、法人税の納税額を算出する際に損金扱いとするなど、大胆な投資減税を実行すべきと考えます。

◯中小企業に対する強力なバックアップを

・今、中小企業を中心に多くの企業が経営的危機に立たされています。政府による資金繰り支援策を柔軟に進めるのはもとより、政府が進める短時間労働者への厚生年金適用拡大策は当面凍結させるほか、4月より中小企業に適用される時間外労働の規制強化をはじめとする「働き方改革」についても、見直しを図るべきです。

◯家計支援策としては、消費減税を

・また、政府は緊急対応策第3弾として、子育て世帯に3万円を給付する案などが検討されています。ただ、コロナ感染症による経済的な影響は子育て世帯に限ったものではなく、その支援は広く行うべきものです。ただし、その給付の対象範囲をむやみに広げれば、歳出額が大きく膨らむことになります。そうした観点から、現金給付策は得策とは言えません。

・昨年10月に実施された税率10%への消費増税が家計を直撃し、内閣府が9日に発表した2019年10月-12月のGDP速報値(2次速報値)も、年率換算で実質マイナス7.1%を記録しています。ただし、これはコロナが経済に与える影響が明らかになる以前のものであり、今後、経済指標は一層深刻なものになるとも考えられます。

・中国を中心にコロナが世界を覆う中、輸出も大幅に縮小すると見込まれます。今こそ、内需拡大策として5%への消費減税を実行すべきです。

・また、一部有識者からは、全品目に軽減税率を適用すべきではないかとの案も出ているようです。これに関連し、自民党の一部若手議員などは消費税について、当面は軽減税率0 %を全品目に適用すべきと提言しているようです。経済の先行き不透明感が増す中、これも次善の策として十分に検討に値すると考えられます。ただ、あくまで減税は時限的な措置に留めるのではなく、幸福実現党がかねて訴えてきたように、標準税率そのものを変更し、当面は5%、財政状況に鑑みて将来的には消費税そのものを廃止すべきと考えます。

西邑拓真

執筆者:西邑拓真

政調会成長戦略部会

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