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成長戦略インサイト(2)「安倍政権に残る『レガシー』はあるか」

政調会成長戦略部会は、「成長戦略インサイト」を発行しました。今回は、1月25日号「安倍政権に残る『レガシー』はあるか」をお送りします。

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成長戦略インサイト「安倍政権に残る『レガシー』はあるか」(2020年1月25日号)

http://hrp-newsfile.jp/2020/3799/

幸福実現党成長戦略部会長西邑拓真
――20日、安倍晋三首相は、衆参両院の本会議で施政方針演説を行った

今回は東京五輪・パラリンピック関連の話題が前面に出た内容となり、ここで「今大会を成功させる」との決意も述べられました。

第2次安倍内閣が発足して現在、8年目に入っています。自民党総裁任期の満了まで残り1年9カ月となる今、昨今の情勢を踏まえ、本来はどのような政権運営が行われるべきか、改めて問われる必要があるでしょう。

――演説でも触れられた「全世代型社会保障改革」について

「全ての世代が安心できる制度」というのは名ばかりなのが実態です。

国の財政がひっ迫する状況の中で、政府はこれまで、「全世代型社会保障」と称して教育の無償化を進めてきましたが、国の財政がひっ迫する状況を考えても、これは合理性を欠如したものと言わざるをえません。

国の債務はいまや約1,100兆円にものぼる状況です。安倍政権でも増税・バラマキが繰り返しされ、政府の肥大化を進展させてきました。

そもそも、少子化対策の一環として進められてきたはずの「社会保障の充実」ですが、これは少子化対策にとって真逆の結果を生み出しかねないというのが事実でしょう。

子供がいなくても老後は国家が面倒を見てくれるのであれば、子供を持たなくても良いという人も出てくるでしょうし、度重なる増税で経済が上向かないばかりか、社会保障の充実が将来的な増税を想起させるものと捉えられれば、若者世代の経済的不安はますますかきたてられ、子供を産みたくても産めないという事態に陥ることにもなるでしょう。

また、今回、高齢化が今後一層進展するのを踏まえ、「(社会保障に関する)現役世代の負担上昇に歯止めをかけることは待ったなし」との考えも示されました。

ただ、実際のところ、今の「社会保障改革」は、弥縫策が繰り返されているとの印象です。年金の積み立て方式への移行や、医療分野の規制分野を大胆に進めるなど、税金の無駄を徹底的に排除するための本質論に迫ってほしいものです。

第二次安倍政権が誕生してからこれまで、アベノミクスは「三本の矢」のうち「成長戦略」が不在であると言われ続けてきました。「景気対策」を繰り返すのではなく、今は、いかにこの国を持続的に成長させるかを考えるべき時です。

総じて、長期的な国の発展に向けては、少子高齢化からの脱却や将来的な移民の積極的な受け入れを念頭にしながら、起業家含め各企業が事業を成功しやすくするための、国としての環境整備が必要です。

こうした意味でも、政府のスリム化とともに大胆な減税策を実施しながら、規制緩和など歳出をできるだけ要しない成長戦略を行うことも肝要です。

――さて、施政方針演説で「台湾」に言及されたことも話題となった

演説では、東京五輪・パラリンピックにおいて、岩手県野田村が台湾のホストタウンになる旨述べられました。

首相の施政方針演説で、日本と国交がない状態にある「台湾」に触れられることは異例のこととされています。
これについて、台湾の蔡英文総統は自身の公式ツイッター上で、「実に嬉しい」としています。しかし、安倍首相にはもう一歩踏み込んだ発言もして頂きたかったとも思います。

遡って12日、台湾総統選で蔡英文総統が再選を果たしました。過去最多となる800万票超の得票となり、対立候補を圧倒する結果となりました。

日本にとって台湾は国防面で見ても運命共同体の存在と言えます。

日本は、国防・経済の両面において台湾と手を携え、政府として中国の覇権主義を止めるとの立場を明らかにしなければなりません。中国・習近平国家主席を国賓として日本に招くなどもってのほかです。

――今月19日、日米安全保障条約が改訂されて60年となった

安保条約を根幹とした日米同盟による抑止力が、戦後日本の平和に対して大きな役割を果たしてきました。

ただ、同条約に関しては、トランプ米大統領が不満を示す通り、片務性があるのは確かでしょう。こうした意味でも、自主防衛体制の強化を急ぐべき状況に置かれています。憲法9条第2項の削除など9条を全面改正することにより、この国を守り抜くための体制整備が必要です。

安倍政権下での憲法改正が実現するには、残された時間は少なく、既に、拙速な議論は許されない状況にあります。「次の世代へタスキを渡した」で終わってしまうのであれば、それは「レガシー」とは断じて言えません。

まずは、憲法改正の本格議論に入ることを急ぐべきです。

以上

西邑拓真

執筆者:西邑拓真

政調会成長戦略部会

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