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エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(11) 送配電ネットワークを次世代化

http://hrp-newsfile.jp/2019/3671/

幸福実現党 政務調査会エネルギー部会

◆送配電ネットワークは増強・更新・次世代化の時期に

日本では1951年に地域独占・民営の電気事業体制が構築されたときから、電力会社ごとに最適な経営が行われてきました。

このため、地域内の送配電ネットワークはとても充実し、高い電力品質が維持されてきた半面、会社をまたぐ地域間連系線の整備があまり進まないという問題がありました。

東日本大震災の際にはこれがボトルネックとなって、西日本から東日本に十分な電気を融通することができませんでした(※1)。

近年は、送電線の容量の制約により、再生可能エネルギーがあっても活用できない問題が顕在化しています。北海道・東北には大量の再エネ資源がありますが、一部しか使うことができません(※2)。

九州では太陽光発電(PV)のピーク時に余った電気を本州に全て送電することができず、PVの出力制御を行っています(※3)。関東でも東京電力が千葉県内での出力制御の検討を始めたと報道されています(※4)。

また、従来の送配電ネットワークでは、火力・原子力発電所などの大規模集中型電源から需要側に向けて、高圧から低圧への一方向に電気を供給することを前提としていたため、分散型の再生可能エネルギーや需要側の蓄電池の利用などには、あまり適していません。

分散型電源、蓄電池、電気自動車(EV)などを既存の大規模電源と柔軟に組み合わせて、未利用エネルギーを効率的に使いながら安定的な電力供給を行うには、送配電ネットワークの仕組みを変えていく必要があります。

日本の送配電設備の多くは1960年代以降の高度経済成長期に建設されたため、老朽化した設備の更新時期が到来することから(※5)、幸福実現党は、この機会をとらえて新しい考え方を導入し、送配電ネットワークの次世代化を進めます。

◆全国を結ぶ直流の基幹送電線を新設

我が党は送配電ネットワーク増強の一つとして、高圧直流(HVDC)による基幹送電線を新設することを提案しています。

これは、地域をまたぐ再エネの利用促進や災害時の安定供給のためだけでなく、今後開発が期待される海洋温度差、潮力、洋上風力、次世代地熱(EGS)等の再エネを大量に導入する際に、インフラとして不可欠なものです。

HVDCは大容量・長距離の送電に適し、再エネとの連系が容易という特長があります。日本では北海道・本州間や紀伊水道等の連系に用いられ、欧州では英仏、英蘭、ポーランド・スウェーデン、イタリア・ギリシャ等の国際連系に数多く導入されています。HVDCの世界市場は今後10年で2倍になるとの見通しもあります(※6)。

我が党は、HVDC送電線を全国の海岸線に沿って新設し、これらを亜熱帯の領海に設置した海洋温度差発電のプラントとも接続し、大量の再エネを利用できる環境を整えます。

また、HVDC送電線を陸上にも新設し、将来は小型モジュール炉(SMR)を含む分散型電源を結び、多重化された強靭な送電ネットワークを構築します。

◆空の有効利用のため送電線・配電線を地中化

さらに、今後の交通・運輸の変化を考慮すると、架空電線は大きな支障となるため、できるだけ地中化しなければなりません。

現在、オペレーター(操縦士)によって運行されているドローン(小型無人機)は、近い将来に自律飛行が一般的となり、都市内の管制された空間(ドローン航空路)を縦横に飛び交い、物流の“ラストワンマイル”(※7)になることが期待されています。

米アマゾンは2019年にもドローン配送を始めるとしており(※8)、今後日本でもドローン物流が一般的になると予測されます。その際に、架空電線は目印にもなりますが、円滑な飛行の支障になります。

また、「空飛ぶクルマ」の開発が世界で急速に進められていますが、日本でも2025年頃からeVTOL機(電動垂直離着陸機)の運行サービスが始まり、2030年代には本格的に普及するとの予測があります(※9)。

「空飛ぶクルマ」は、当初は空港や高層ビルの屋上などを結ぶ拠点間の交通として始まると考えられ、この段階では架空電線が支障になることはありませんが、都市内の低いビルや道路面にも離着陸の場所を拡大するには、電線を撤去し地下に埋設する必要があります。

また、eVTOL機ではなく、高速道路で助走して離陸するような空陸両用機の場合、日本では道路を横断する送電線や跨道橋が数多くあることから、このままでは離着陸の支障になるため、道路と送電線の両方を改築する必要があります。

このように、現在の送電線・配電線はドローンや「空飛ぶクルマ」等の低空飛行の物体を想定していないことから、我が党は都市景観や災害対策上の理由だけでなく、将来の空の有効利用の観点からも、送電線・配電線の地中化を進めていきます。

参考

※1 「エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(2) 電気事業の『ゲームチェンジ』」 HRPニュースファイル 2019年5月15日 http://hrp-newsfile.jp/2019/3536/
※2 「再生エネ、送電線増強へ全国負担 コストなお課題」 日本経済新聞 2019年5月16日 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44890860W9A510C1EE8000/
※3 「太陽光発電の出力制御、対象を500kW未満にも拡大へ」 スマートジャパン 2019年5月10日 https://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1905/10/news040.html
※4 「再生エネの出力抑制 東電が千葉で要請検討」 日本経済新聞 2019年5月17日
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44962890X10C19A5TJ2000/
※5 送配電網の維持・運用費用の負担の在り方検討WG資料 電力・ガス取引監視等委員会 2017年6月20日
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/saisei_dounyu/pdf/004_03_01.pdf
※6 「高電圧直流(HVDC)は知られざる成長分野、EVやデータセンター向けも追い風に」 ビジネス+IT 2018年2月19日 https://www.sbbit.jp/article/cont1/34592
※7 ラストワンマイル: ここでは、最終拠点から顧客への物流サービスのこと。
※8 「アマゾン、ドローン配送を開始へ 数カ月以内に」 日本経済新聞 2019年6月6日 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45750120W9A600C1000000/
※9 『空飛ぶクルマ 電動航空機がもたらすMaaS革命』 根津禎 日経BP社 ISBN978-4-296-10187-0

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執筆者:webstaff

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