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電力危機列島ニッポン、原発再稼働が進まない3つの理由【後編】

https://youtu.be/OgpA5T1Lk_I

幸福実現党党首 釈量子

◆法的根拠なく停止している日本の原発

日本では福島原発事故後の2013年に、世界で最も厳しいとされる「新規制基準」が導入され、既存の原発にも遡って適用されました。

本来、法律というのは遡らない不遡及の原則があります。しかし、電力会社は、既存の原発も含め新規制基準に適合するよう、安全対策の工事を行い、原子力規制委員会の安全審査に合格しなければいけなくなりました。

本来は一度許認可を受けて運転されていた原発が、規制基準が見直されたから原発を止める必要はありませんでした。

しかし、止まった理由は、民主党政権のとき、当時の菅直人首相が浜岡原発を「依頼」お願いで止めたことが前例になってしまったからです。

またその後、原子力規制委員会の田中委員長が私的に書いたメモ、いわゆる「田中私案」も根拠になっていると言われています。

「依頼」も「メモ」も当然、法律的なものではないので、原発を止める筋合いはなかったのです。外国でも、このような不合理な運用をしている国はありません。

原発の規制基準は、今後も新しい知見を採り入れて見直される可能性が当然あるわけですが、規制基準が変わろうとも、原発を運転しながら対策工事や審査を行うのが、本来のあるべき姿です。

そもそも、「新規制基準」があまりに厳しすぎることや、審査が遅いことも、大きな問題です。

原発を再稼働させるためには、テロや大規模な自然災害が起きた場合に、十分対応できる施設を備えなければならなくなりました。

例えば津波に耐える防波壁、耐震補強、電源喪失時の予備電源の設置、消防車の高台へ常備され、とにかく過酷な事故に対応した安全対策が盛り込まれています。

これ自体は、過剰な設備とは言えないところもありますが、ただ、10万年前の断層など、過剰と思われる想定もあります。

◆遅々として進まない原子力規制委員会の審査

もう一つが、原子力規制委員会の審査が、遅々として進まないことを挙げられます。

例えば、北海道電力は、2013年7月、「泊原発」の新規制基準への適合性審査を申請しましたが、申請からおよそ8年も経過しているにもかかわらず、原子力規制委員会は「適合性」があると認めていません。

理由としては、「約12~13万年前の断層」をあげています。そこには「耐震設計上重要な施設を設置できない」とする基準を原発に適用しています。

泊原発は、世界最高水準の安全対策を施しているにもかかわらず、非科学的な理由で適合性を認めず、冬の北海道を危機にさらしています。

◆政府が本来やるべきこと

政府は今、「節電」を呼びかけており、プログラムに参加した家庭に2000円相当のポイント、中小企業に20万ポイントを付ける対策を検討しています。

しかし、政府の本来やるべき仕事は本来、経理課長レベルの「節電」の呼びかけではなく「発電」を押し進めることにほかなりません。

安全性が格段に高まっているにもかかわらず、原発が今止まってしまっているのは、新規制基準を元々ある原発に当てはめる際に稼働を停止するという、不合理な運用を行っていることに原因があります。

諸外国では規制基準を見直す場合であっても、原発を運転したままその変更を行うとの対応が取られてきました。やはり、審査は稼働中のまま行えば良いのです。

さらには、厳格すぎる新規制基準の見直しとともに、審査の迅速化を進めなければなりません。

資源のない日本は、ひとたび戦争が起きれば安全保障の環境が激変します。燃料が途絶えれば国民の生命と財産が脅かされます。

それが現実化しているのに、政府は危機感がなさすぎるのではないでしょうか。今は特に、ゼロリスクの追求ではなく、いかに安定的な電力供給を確保するかを考えなければなりません。

また、審査が長期化すれば莫大な経済的損失が発生し、国民の財産が損なわれるほか、電力の安定供給を阻害し、国民の生命、健康、わが国の安全保障を脅かすおそれもあります。政府は規制委員会に対し、審査を迅速にさせるべきです。

原子力エネルギーは国家の独立と安全保障の基盤です。政府は、法的根拠のないような縛りで止まっている原発に関しては、責任を持って、今ある既存の原発の速やかに再稼働させるべきです。

また、新増設や、建て替え、つまり廃炉する原発を新しいものに入れ替えることなどの方針を早期に明示することで、中長期的な観点からも電力の安定的な供給を図るべきと考えます。

釈 量子

執筆者:釈 量子

幸福実現党党首

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