このエントリーをはてなブックマークに追加

米韓同盟を変える重大決定 日本は自主防衛の強化を 

http://hrp-newsfile.jp/2019/3593/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆米韓同盟を変える重大な決定

6月3日に、ソウルでは米韓国防相の会談が開催されました。

訪韓したシャナハン米国防長官代行は、韓国のチョン国防部長官と会談し、今後の同盟を変える取決めに合意しています。

今後、ソウル・竜山の米軍基地は移転し、人員が京畿道平沢にある「キャンプハンフリー」に移動します。

そこに同盟の司令部本部が置かれ、韓国国防部のあるソウルは、本部機能を失います。

しかし、戦時の作戦指揮権は米軍から韓国軍に移されることになりました。

同盟を指揮する「未来連合軍司令官」には韓国軍大将が任命されるのに、同盟の中枢は、韓国国防部から遠い、キャンプハンフリーに集まるのです。

妙な構図ですが、これは、いったい、何を意味しているのでしょうか。

◆司令部がソウルよりも南に移転するのはなぜ?

この司令部移転で、長らく続いてきた「在韓米軍の移転」が完成に近づきます。

在韓米軍は、2000年代以降、ソウルから国境線までの地域に展開する部隊を減らしてきました。

あとは、東豆川にいる第210火力旅団が南に移れば、漢江よりも南にしか米軍はいなくなります。

北朝鮮は火砲やミサイルなどでソウルを火の海にできるので、米軍は、キャンプハンフリーなどに戦力を集め、有事の被害を減らそうとしてきました。

もともとの米韓同盟では、米軍がみずからソウルや国境近辺に展開し、前線で戦う仕組みをつくってきましたが(※)、それがなくなろうとしているのです。

(※これは「トリップワイヤー〔導火線の意〕」とも呼ばれる。今後、第210火力旅団が移転すれば、この機能は消滅)

結局、そこには「韓国のために米軍を犠牲にしたくない」という意図が含まれています。

◆「韓国軍大将の指揮権行使」に中身はあるのか

次に、指揮権の移転についても考えてみます。

戦時の指揮権が韓国軍に移れば、韓国軍が主体的に戦わなければなりません。

しかし、司令部本部はソウルよりも南に移動します。

ソウルに国防部を置く韓国軍にとっては不便ですが、そうなったのは、米軍が同盟の主導権を維持するためです。

キャンプハンフリーには、在韓米軍司令部と米第八軍司令部があり、米第二師団と韓米連合師団がいます。

ここに司令部を置いた場合、韓国軍大将に指揮権が移っても、米軍に完全包囲されているので、米軍の意向をくみながら権限を使わなければなりません。

そばにいる連合司令部の参謀(主に米軍人)の意見を聞き、兵を動かすわけです。

そこには「名目は与えるが、指揮権の実質までは渡したくない」という米軍の意思がみえるのです。

◆同盟はどう変わる(1):限定攻撃への対処は韓国軍

この改革がなされれば、有事における米軍の動き方も変わります。

ソウル以北に米軍がいた頃は、北朝鮮が先制攻撃を行えば、米軍にも被害が及ぶので、ほぼ自動的に、米軍が韓国軍を率いて北朝鮮軍と戦う形になります。

しかし、今後、米軍はソウルより南に展開するため、北朝鮮が韓国軍やソウルの主要施設だけを攻撃した場合には、アメリカに選択の余地が生まれます。

米軍や米国民に被害が出ない間は、戦いの規模に応じて、韓国軍に任せたり、航空機や艦艇での支援だけに止めたりすることが可能になるのです。

米韓同盟は「自国の憲法上の手続に従って」戦う同盟なので、「議会が宣戦布告していないから」と言い張れば、大統領は派兵を遅らせることができます。

(※米韓同盟に自動参戦規定はなく、米憲法上、宣戦布告の権限は議会にある。米国に被害が出ず、議会が急いで派兵を求めなければ、前述の措置が可能)

◆同盟はどう変わる(2):機動的な米軍の運用を可能に

基本的には、米軍は他国の軍の下には入らないので、「韓国軍に指揮権を移す」のならば、韓国にいる米軍(主に陸軍)の規模が縮小する可能性が高まります。

昨年11月に、ハリス米韓国大使は「米韓同盟はいつまであるか分からない(18年11月)」とも述べていたので、これは、次の体制への移行措置にも見えます。

米兵と家族を、北朝鮮の火砲が届くソウル近辺から移動させれば、大統領が「北朝鮮攻撃」を決断した時に、以前よりも動きやすくなります。

小規模紛争は韓国軍に任せながらも、海・空軍や沖縄の海兵隊などで北朝鮮を叩ける体制を準備しているのかもしれません。

◆米韓の決定は他人事ではない

今回の米韓の決定は、北朝鮮の脅威にさらされている日本にとっても、見逃し難い内容です。

その背景には、長年続いた韓国の反米運動、米国側の不満の蓄積、米韓大統領の不仲などがありました。

現在の日米関係は良好ですが、日本でも、国内での反米運動が高まれば、米国の姿勢が変わることに注意しなければなりません。

例えば、基地の「県外移設」が叫ばれる沖縄に米軍がいるのは、ソウル以北に米軍基地があったのと同じ論理によります。

日本の防衛の最前線は沖縄なので、そこに米軍が展開し、有事に矢面に立つ仕組みがつくられてきました。

これに「出て行け」と言う運動は、ソウル以北にある米軍に「出て行け」と叫んだ韓国の反米運動と変わりません。

日米同盟を体現する在日米軍を腫れ物扱いすれば、米国が硬化することを忘れるべきではないでしょう。

トランプ政権は、同盟国に防衛費の負担増を求めているので(NATO諸国へのGDP比2%負担要求など)、今後はもっと自主防衛の強化が求められるはずです。

そのため、幸福実現党は、日米同盟強化だけでなく、防衛費の倍増(GDP比2%以上)を掲げています。

幸福実現党は、日米同盟の強化だけでなく、「自分の国を自分で守る」体制をつくるための努力を訴え続けてまいります。

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

HS政経塾

page top