エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(7)原子力発電所は直ちに再稼働できる
http://hrp-newsfile.jp/2019/3565/
幸福実現党 政務調査会エネルギー部会
◆世界最速で「脱原発」に向かう日本
2010年には全国に54基の原子力発電所があり、日本は米国、フランスに次ぐ世界第3位の原発大国でした。
しかし、2011年の東日本大震災・福島原発事故をきっかけに原発が次々と停止し、2019年6月現在、原子力規制委員会による新規制基準への適合性審査に合格して再稼働に至った原発は、わずか9基しかありません。
残りの45基のうち、規制委の審査に合格し地元同意など再稼働に向けて準備中のものが6基、規制委が審査中のものが10基(ほか新設2基が審査中)、未申請のものが8基(ほか新設1基が未申請)です(※1)。
一方、損壊した福島第一原発の4基を含む、全国21基の原発が廃炉を決定しています(廃炉の方向で検討中のものを含む)。また、未申請のうち柏崎刈羽原発の5基などは、地元の政治に配慮して廃炉になる可能性も否定できません。
福島第一原発以外は設備が損壊しているわけではないため、技術的には運転継続が可能ですが、廃炉の決定が相次いでいる背景には、2012年に民主党(当時)政権が法律を改正し、原発の運転を原則40年に制限(規制委の認可で1回に限り最長20年の延長も可能)したことがあります(※2)。
このため、運転開始から30年程度が経過した原発は安全対策工事をしても数年しか運転することができず、電力会社は設備投資を回収できないため、早期廃炉を決定せざるを得ない事情があります。
現行の「40年運転制限」のままでは、全国の原発が審査に合格し地元同意を得て再稼働したとしても、早期廃炉が進み、楽観的に見積もっても2030年には25基程度、2050年には10基程度に減少する可能性があります(※3)。
◆原発の「40年運転制限」を撤廃せよ
しかし、日本ではもともと、原発の60年運転を前提とした合理的な検査体系が運用されていました。
原発の「40年運転制限」は、震災後の政治的な「空気」の中で、民主党(当時)が主導し自民党・公明党の一部の議員の賛成で決めたものであり、科学的根拠は全くありません。
原子炉等の主要設備はもっと長寿命であり、廃炉の時期は個別の設備の劣化状況に応じて決めるべきであって、一律に40年で打ち切ることに合理的な理由はないのです。(※4、※5、※6)
実際に、日本とほぼ同型の原発が運転されている米国では、大部分の原発が60年運転を許可され(※7)、さらに、一部の原発では80年運転に向けた米原子力規制委員会(NRC)の審査が行われています(※8)。
米国物理学会は、原発の80年運転に技術的障害はないとし、NRCが運転制限を80年まで延長することを提言しています(※9)。
幸福実現党は2016年より、原発の「40年運転制限」の即時撤廃を訴えていますが、少なくとも原則60年の運転を可能とすれば、原発事業の予見性が高まって不合理な早期廃炉が回避されるため、日本の急速な「脱原発」を緩和することができます。
◆実質的な安全性が確保された原発は、政府の責任で再稼働を
日本の原発は福島事故をきっかけとして、外部電源の喪失や過酷事故への対応が十分になされ、安全性が一段と高まっています(※10)。
一方、このように実質的な安全性が確保された原発の再稼働が遅々として進まない主な原因に、規制委の審査に膨大な時間を要していることがあります。
法律には、原子力の安全の確保は「確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として」行うとあり(※11)、また、これに基づく規制委の任務が規定されています(※12)。
しかし、現状の原子力規制行政は、国家としての大局観を欠いた、技術専門家による「議論のための議論」に陥っており、審査の長期化により莫大な経済的損失が発生し、国民の財産を毀損しているほか、電力の安定供給を阻害し、国民の生命、健康、我が国の安全保障を脅かすおそれもあります。
このため我が党は、2018年9月に規制委に要望書を提出し、原子力規制行政の適正化と審査の迅速化を求めました(※13)。
しかし、より根本的な原因は、規制委の審査への合格が、事実上「再稼働の許可」のように誤認され、それを政府自らが追認していることにあります。
原子炉等規制法は、新規制基準適合性に係る審査の途上にある既設の原発の運転を禁止しているわけではなく、本来は運転を継続しながら原発の安全性を高めていくことが可能です。また、規制委に原発の再稼働を止める権限はありません。(※14、※15)
つまり、既存の原発の多くが再稼働できないことに法的根拠はなく、政治的な「空気」によって停止を余儀なくされているというのが実情なのです(※16、※17)。
我が党はこれについても、2018年10月に内閣総理大臣に要望書を提出し、政府の責任において直ちに再稼働を進めることを求めました(※18)。
我が党は、国民の生命・健康・財産を守るため、「脱原発やむなし」の“空気”に負けることなく、今後も原発の再稼働を力強く訴えていきます。
◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。
ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。
参考
※1 「原子力発電の現状」 資源エネルギー庁 2019年5月24日現在
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/001/pdf/001_02_001.pdf
※2 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(原子炉等規制法)第43条の3の32において、「発電用原子炉設置者がその設置した発電用原子炉を運転することができる期間は、当該発電用原子炉の設置の工事について最初に第43条の3の11第1項の検査に合格した日から起算して40年とする。」と規定。
※3 幸福実現党による推定。
※4 「“原発40年規制”の根拠は『科学と技術』でなく『政治と空気』 ~ 専門家でない政治家が決めた危険な安全ルール」 石川和男 現代ビジネス 2015年2月25日
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/42231
※5 「おかしな原発廃炉40年ルール 科学的根拠なし」 GEPR 2015年3月23日
http://www.gepr.org/ja/contents/20150323-03/
※6 「原子炉規制法 原発の40年制限を見直せ」 産経新聞 2017年3月12日
https://www.sankei.com/column/news/170312/clm1703120002-n1.html
※7 「世界の原発はどうなっているのか?」 経済産業省METI Journal 2018年1月22日
https://meti-journal.jp/p/170/
※8 「原発、米で80年運転申請 新設コスト増、延命で収益狙う」 朝日新聞 2018年12月14日
https://www.asahi.com/articles/DA3S13810875.html
※9 “APS Report Calls for Extending Nuclear Reactor Lifetimes” American Physical Society, December 2013 https://www.aps.org/publications/apsnews/201312/apsreport.cfm
※10 原子力発電所の安全対策 電気事業連合会
https://www.fepc.or.jp/nuclear/safety/torikumi/taisaku/
※11 原子力基本法第2条第1項において、「前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする。」と規定。
※12 原子力規制委員会設置法第3条において、「原子力規制委員会は、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資するため、原子力利用における安全の確保を図ること(< 略>)を任務とする。」と規定。
※13 「エネルギー部会は原子力規制委員会に対して要望書を提出いたしました。」 幸福実現党政務調査会エネルギー部会 2018年9月20日
https://info.hr-party.jp/2018/7189/
※14 「原発はなぜ再稼動できないのか」 池田信夫 アゴラ 2018年9月22日
http://agora-web.jp/archives/1629639.html
※15 「原発のテロ対策工事で運転を停止する必要はない」 池田信夫 アゴラ 2019年4月25日
http://agora-web.jp/archives/2038638.html
※16 「『安倍首相が再稼働を表明すべきだ』 安念潤司中央大学教授に聞く、『空気主権がむしばむ原発行政』」 井本省吾 JBpress 2014年6月13日
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40936
※17 「原子力規制委員会と法治主義」 安念潤司 GEPR 2015年9月7日
http://www.gepr.org/ja/contents/20150907-01/
※18 「内閣総理大臣宛てに『全国の原子力発電所の早期再稼働を求める要望書』を提出」 幸福実現党政務調査会エネルギー部会 2018年10月17日
https://info.hr-party.jp/2018/7397/
執筆者:webstaff