自民、公明、立民がめざす「福祉の充実」の甘いワナ【前編】
http://hrp-newsfile.jp/2019/3507/
HS政経塾スタッフ 遠藤明成
◆「福祉の充実」という甘い言葉にご用心
現在、地方選において、かつて消費税増税に合意した自民、公明、立民の3党が「福祉の充実」を訴えています。
自民党と公明党は消費税の増税分を用いた教育無償化、立憲民主党は格差の是正などを強調しているのですが、どちらにも、大きな問題点があります。
福祉が増えたら、その分だけ税金や保険料の支払いが増えるということです。
つまり、この三党の福祉政策が実現したら、「行きはよいよい帰りは怖い」という言葉の通り、増税が待っています。
そして、増税はさらなる消費の冷え込みを招きます。
これは、すでに起きた現実なのですが、こうした不都合な話は、真正面からは取り上げられていないのです。
◆消費の冷え込みは「福祉のための増税」でもたらされた
「福祉の増加⇒財源不足⇒増税⇒消費減退」という負のサイクルは、ここ10年の歴史から確認できます。
まず、2009年に福祉の充実をうたった民主党政権ができ、その後、「財源が足りない」という話になり、消費税増税が決まりました。
その結果、消費が冷え込み、かつて月あたり32~34万円で推移していた家計消費の水準を取り戻せていません。
これは2000年から07年までの水準ですが、2018年の家計消費は、31.5万円(※二人以上の勤労者世帯)にすぎなかったのです。
立憲民主党の枝野代表は、本年の1月に「当面、大衆課税は無理ですよ。日本の今の消費不況からすると、そんなことをやれる状況ではない」と言っていましたが、自分たちがその原因をつくったことに責任は感じていないようです。
立憲民主党の枝野代表、蓮舫副代表、最高顧問である菅直人氏、海江田万里氏などは、政権にいた頃、「福祉のために」と称して増税の道筋をつくってきた方々です。
彼らのおかげで消費税も所得税も上がり、相続税が「中金持ち」にまでかかるようになりました。
その結果が「消費不況」です
その判断には「先見の明」がかけらほどもありませんでした。
◆かつての民主党と同じく「教育無償化」を推す自公政権
増税路線は、民主党と自民党、公明党の三党合意で固まりました。
合意したのは、今、まさに福祉の充実を訴えている政党の方々です。
そして、この三党は、みな「教育無償化」を推進しています。
しかし、その財源が、結局、消費税の増税であるのは大きな問題です。
彼らは、消費の冷え込みをもたらした増税を反省していません。
この教育無償化は、もともとは民主党の政策でした。
自民党は民主党政権の教育無償化を「バラマキだ」と批判していたのです。
(※本稿作成時点では、まだ自民党HPに「高校授業料無償化の問題点!」〔2010年3月16日〕という記事が残っている)
しかし、自民党は、政権をとったら票稼ぎのために路線を変えました。
自民党の公約の中には、民主党と同じようなバラマキ政策が入り込んでいます。
そうした政策が実行されたら、我々は、10%への消費増税のあとにも、また「財源不足」だという話を聞かされるはずです。
そして、もう一度、「福祉のために増税」という論理が繰り返されるのです。
◆自民党は、結党時に「福祉国家の実現」を宣言
結局、自民党も公明党も、立憲民主党も、甘い言葉で福祉を語り、国民に重税を強いる政党です。
有権者の皆様の中には「自民党は保守政党だから、バラマキ政党とは違う」と思われている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、歴史を振り返ると、自民党も、立党以来、「福祉国家の建設」を目指してきました。
結党した時(1955年)に書かれた文書(『党の性格』)には「社会保障政策を強力に実施し、完全雇用と福祉国家の実現をはかる」と書かれています。
もともと、自民党は「大きな政府」を目指していたのです。
(つづく)