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「増税延期がリスク」だなんて、とんでもない。「お上の論理」にNOを!

http://hrp-newsfile.jp/2019/3499/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆消費税は平成不況の象徴

平成の世も終わりが近づいていますが、政府は、1989年以降の経験から学ばず、消費税を10%に上げようとしています。

過去を振り返ると、1997年に消費税を5%に上げてから、税収が97年の水準(54兆円)を下回る時代が、2013年まで続いてきました。

そのころの税収は40兆円代の年が多く、政府が欲を出したことが裏目に出てしまいました。

税収は景気に連動するので、必ずしも「税率増=税収増」となるとは限らないのですが、消費者心理を読めない政府は、増税に踏み込んだのです。

◆セブン&アイ元会長も消費増税による景気悪化を警告

こうした政府のあり方を、心ある経済人は大いに憂いています。

セブン&アイ元会長の鈴木敏文氏は『文芸春秋(2019年1月号)』にて、日銀が目標を達成できず、国民が老後不安を抱える中で消費税を上げるべきではないと警鐘を鳴らしました。

「消費の減少、企業倒産の増加、失業率の上昇といった負の連鎖に直面する可能性もある。当然、消費税だけでなく、法人税、所得税といった税収全般が、逆に低下する事態に陥ってしまいかねません」

そう訴え、日本人の消費マインドは「数字以上に敏感」なので、消費増税には税率の「数字以上」の影響力があると指摘していたのです。

1998年に北海道のイトーヨーカ堂で一律5%を値引いたら(消費税分還元セール)、売上高が前年比で165%になりました。

このセールは全国でも展開され、似たような結果となったことから、消費者は、必ずしも「2割引セール=2割売上増」という動き方はしないとも述べています。

◆10%増税の「心理的効果」は無視できない

同じような見方をしている人に、京大大学院教授の藤井聡氏がいます。

この人は内閣官房参与でしたが、昨年末で辞め、本年からは「自由な立場」で消費増税の危険性に警鐘を鳴らしています。

藤井氏は、10%増税の「心理的な影響」にも注意を促していました。

「10%」という数字は3%や8%よりも区切りがよく、税負担を計算しやすくなるので、消費者が嫌でも負担を感じるようになるからです。

実際、藤井氏は、京都大学で男女100名ずつを対象に10%増税が起きた際の「買い控え」の度合いを測ったら、今回の増税には、2014年の増税の「1.4倍」の消費を減らす効果があることがわかったと述べています(藤井氏フェイスブックを参照)。

◆今回の増税には、2%以上の「重税感」がある?

そのほかにも、元東京都知事の舛添要一氏が、今回の増税の「重税感」は「2%増しどころではない」と述べていました。

税率が二ケタになり、計算が簡単な分だけ重税感が増すので、「1割という消費税率が消費を抑制する効果は、2%の税率との差以上になると考えたほうがよい」と警告していたのです。

舛添氏は「13750円」という複雑な値段を例にとり、8%だったら電卓でも使わなければ税金が1100円になるのはわからないが、10%だったらすぐに1375円だとわかるとも述べています。

たしかに、普段の買い物の時にいちいち消費者は電卓で計算しません。

そのため、簡単な税率になることで、今までに意識していなかった税額が「見える化」され、重税感を感じるわけです。

(※なお、舛添氏は必ずしも増税に反対ではなく、景気情勢の悪化のため他の選択肢もありえるという見方)

◆「消費者の目線」に立って見た経済観が大事

昔を振り返ると、増税判断を前にした2013年参院選の頃にも、鈴木敏文氏は、増税は「消費回復に水を差すことになる」と述べたことがありました。

当時も、マスコミに問われた時には、「増税は延期すべきだ」と訴えていたのです。

「消費税率を5%に引き上げた時や総額表示に切り替えられた時は、消費が落ち込み、その影響が長く続きました」(鈴木氏)

過去の小売の経験から、「日本人は税金に対してたいへん敏感」であることに注意を喚起していました。

やはり、大事なのは、お上の目線ではなく、こうした消費者目線に立った経済観なのではないでしょうか。

◆安倍政権にとって「増税延期はリスク」?

幸福実現党も、立党以来、そうした消費者の目線に立って、増税の危険性を訴えてきました。

日経朝刊(2019/3/28)によれば、安倍首相は、3月19日に藤井聡氏と食事した時に「増税延期」を促されたのですが、結局、「予算を崩す方がリスクが大きい」と周囲にもらしていたそうです。

しかし、この「リスク」は、国民が負うリスクではありません。

「増税」という衆院選の公約を覆した際に「安倍政権が負うリスク」にすぎません。

幸福実現党は、「日本経済にリスクをもたらす」消費税増税に反対しているのです。

参考
・鈴木敏文「『消費増税』猛反対された還元セール」(『文芸春秋』2019年1月号)
・セブン&アイホールディングスHP「[対談] イノベーションの視点 デフレ脱却へ いま、生活者の視点が日本経済のカギを握る」
・舛添要一「消費税10%の重税感、今の2%増しどころではない」(JBプレス 2019/3/30)

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

HS政経塾

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