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報道されない「特別会計」を足した平成31年度予算の真相

http://hrp-newsfile.jp/2019/3495/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆「一般会計」の3分の1が社会保障関係費

3月27日に成立した2019年度予算(一般会計)は約101兆円でした。

昨年よりも3.7兆円増えたのですが、そのうち2兆円が増税対策に使われます。

最も大きく伸びたのは社会保障関係費で、その増額分は1兆円でした。

項目別の累計額を見ると、社会保障関係費は34兆円なので、一般会計の3分の1です。

7兆円の公共投資、約6兆円の教育予算(科学含む)に比べると、段違いの規模を誇っていることが分かります。

(※読みやすさを考慮し、原則として予算額は四捨五入しています)

◆「一般会計」は100兆円。では「特別会計」は?

しかし、これは政府予算の全てではありません。

政府予算には「一般会計」のほかにも「特別会計」があるからです。

特別会計というのは、国が行う事業や資金運用などに用いる会計のことです。

具体的には、年金(医療含む)、財政投融資、地方財政の支援、震災復興などの項目があり、それらを足すと、額面上は400兆円近い規模になります。

しかし、そこには、一般会計と特別会計で二重に計算された金額が含まれているので、実額は半分程度です。

重複分を除いた特別会計は200兆円程度と見られています。

(一般会計の場合、重複分を引くと、実額は45兆円前後になる)

例えば、2017年は、特別会計の実額が196兆円、一般会計の実額(重複分除く)が43兆円。

両者の合計は239兆円でした。

(※この数値は財務省の「平成30年度 特別会計ハンドブック」による)

◆新聞記事をいくら読んでも、本当の2019年予算の姿は分からない

日本の財政は「一般会計+特別会計」から重複分を除いた数値(純計額)を見ないと、政府の本当の歳入と歳出はつかめないようになっています。

しかし、特別会計は複雑すぎるので、新聞やニュースなどは、その詳細をきちんと国民に伝えていません。

そのため、財務省HPで、その純計額を確認してみます。

【2019年予算】

〇歳入:244.5兆円

(租税収入が65兆円。年金や医療などの社会保険料は46兆円)

〇歳出:243兆円

※財務省「財政法第28条等による平成31年度予算参考書類」を参照。次節も同じ。

◆「(一般会計+特別会計)-重複分」で見た政府の七大支出

そして、規模の大きな歳出を見ると、社会保障関係費と国債費が目立っています。

※値は全て四捨五入。()内は「費用÷歳出純計」の割合。

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〇1:社会保障関係費 92兆円(38%)

(年金給付費が55兆円、医療給付費が22兆円、生活扶助等が5兆円、雇用、介護と少子化対策が3兆円ずつ、)

〇2:国債費:87兆円(36%)

〇3:地方自治体支援 19兆円(8%)

(そのうち地方交付税交付金が16兆円を占める)

〇4:財政投融資 13兆円(5%)

〇5:公共事業関係費 8兆円(3%)

〇6:文教及び科学振興費 6兆円(2%)

〇7:防衛関係費 5兆円(2%)

―――――

純計額で見ても「社会保障関係費」が最大の項目になっています。

しかし、この92兆円は、社会保障で使われるお金の全てではありません。

厚生労働省は、昨年に、2016年の「社会保障給付費」は117兆円に達したと発表しています。

こちらの「社会保障給付費」のほうが、計上する範囲が広く、給付の総額を反映しているのです。

※社会保障給付費はILO基準に基づいて算定。具体的には、社会保険制度、家族手当、公務員への特別制度、公衆衛生サービス、公的扶助、社会福祉、戦争犠牲者への給付などが含まれる。

◆年間歳出のうち社会保障が占める本当の割合は?

結局、基準の取り方で、2019年の歳出に占める社会保障の割合は、ずいぶん違って見えてきます。

まず、一般会計(101兆円)のうち「社会保障関係費(34兆円)」が占める割合は34%です。

―――――

ところが、「一般会計+特別会計」の純計(243兆円)のうち、社会保障費が占める割合はもっと高いのです。

〇1「社会保障関係費(92兆円)」÷「歳出純計(243兆円)」=38%

〇2「社会保障給付費(121兆円)÷「歳出純計(243兆円)」=50%

※2019年の社会保障給付費は未定なので、2018年の財務省予測値を代入

―――――

一般会計だけで見ると、社会保障予算は全体の1/3に見えます。

しかし、実際は、社会保障給付費は、政府支出の半分ぐらいの規模にまで拡大しているのです。

この給付費は2010年は105兆円だったので、1年につき2兆円の勢いで増えてきました。

このペースで行けば、一般会計の数値しか国民が知らない間に、社会保障費が政府支出の6割、7割を占める規模に拡大しかねません。

◆特別会計の金額が分からなければ、国民は正しい判断ができない

今のままでは、現役世代の負担が年々重くなり、日本は、若者が夢を描けない国になってしまいます。

しかし、国民には、その危険性が伝わっていません。

そのため、選挙では、社会保障費の大盤振る舞いを掲げた政党が勝つこともよくあります。

結局、財政の本当の姿を伝えなければ、国民は主権者として正しい判断ができないわけです。

◆特別会計の「見える化」が必要

こうした問題をなくすには、複雑すぎる特別会計を「見える化」しなければなりません。

政府がきちんと国民への説明責任を果たさない限り、日本の公会計は、国民にわからない「謎のエリア」であり続けるでしょう。

難題ではありますが、透明性の高い公会計をつくることは非常に大事です。

幸福実現党が目指す「小さな政府、安い税金」を実現するためには、公会計を国民の手に取り戻さなければなりません。

国民に理解できない公会計のもとで、国民主権が正しく機能するはずがないからです。

【参考】
・財務省「平成31年度予算のポイント」
・財務省「平成30年度 特別会計ハンドブック」
・財務省「財政法第28条等による平成31年度予算参考書類」
・財務省主計局「社会保障について」

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

HS政経塾

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