このエントリーをはてなブックマークに追加

北海道大停電は人災!?――求められる原子力規制行政の適正化と審査の迅速化【後編】

幸福実現党 宮城県本部統括支部長 HS政経塾第5期卒塾生 油井哲史(ゆいてつし)

◆原発が必要な理由を改めて考える

政府はエネルギー政策の基本的な方向性を示すためにエネルギー基本計画を策定しています。その中で、個々の電源を国や地域の状況に応じて、適切なバランスを組み合わせ、エネルギーミックスの確実な実現へ向けた取り組みを強化していくことを示しています。

2030年に実現を目指すエネルギーミックス水準として、原発の電源構成比率は、20~22%。安全最優先の再稼働や使用済燃料対策など必要な対応を着実に進めると宣言しています。

改めて、原発を推進すべき理由を3つにまとめました。

一つ目に、原発停止により火力発電所がフル稼働しており、これに伴う震災後の燃料費増加の累計は15.5兆円に達しています。燃料費が増加すれば電気料金に跳ね返り、家計負担の増加、企業のコスト競争力が低下。国富の流出は避けられません。安価で安定的な電力供給のためには原発は必要です。

二つ目に、今回のブラックアウトの教訓として、再生可能エネルギーでは出力が不安定であり、電力に必要な需給バランスをとるのが困難であるとわかりました。太陽光や風力発電の変動を補うための火力発電などの安定電源が必要で、再生可能エネルギーのみではベースロード電源にはなり得ません。また、昨今の自然災害で、太陽光や風力の発電施設で被害が続出していることもあり、再生可能エネルギー依存には警戒すべきです。

三つ目に、日本は化石燃料の大部分を中東からの輸入に頼っています。世界第4位のエネルギー消費国である日本のエネルギー自給率は、先進国の中でも極めて低く、8%しかありません。国際情勢によって原油や天然ガスの価格や供給も左右されます。もし、中東有事となれば、価格は高騰し、輸入が途絶えるリスクもあり、火力発電に依存しすぎると、エネルギー供給自体が危うくなります。原子力はエネルギー安全保障の要です。

イギリスを代表する政治家チャーチルもエネルギー安全保障の要諦は「多様性が安全を確保する」と述べており、エネルギーの多様性を強調しています。安定的な国民生活と経済活動を維持していくうえで、持続可能なエネルギー供給を確保するために、しっかりと原発を選択肢に入れるべきです。

◆大地震にも耐えてきた日本の原発

これまで世界最高水準を誇る日本の原発は大地震にも耐えて抜いてきました。

東日本大震災では、震源地に最も近い女川原発は震度6弱の揺れにも安全に自動停止し、13mの津波にも耐えました。さらに、発電所へ避難者を最大で364名を受け入れています。IAEAの現地調査でも「女川原子力発電所は、震源からの距離、地震動の大きさ、継続時間などの厳しい状況下にあったが驚くほど損傷を受けていない」と評価しています。また、2009年の静岡県を中心に発生した駿河湾地震において震度6弱だった浜岡原発も安全に自動停止しています。

そもそも、福島第一原発は震度6強の揺れにも耐えて、自動停止していました。しかし、津波で発電機が故障し、電力を原子炉に供給できなくなった結果、原子炉の冷却機能が働かなくなり、事故につながってしまった。
福島原発は、もともと高さ35mの高台に設置する予定でしたが、最終的に25mも削り、10mの高さに設置されました。もし、35mの高台であれば、津波の影響もなく、事故も起こらなかったでしょう。

◆原子力規制委員会は審査の迅速化を!

原子力規制委員会の審査の長期化は電力の安定供給を阻害し、莫大な経済損失を招く恐れがあります。道民の生活や経済活動を守り、少しでも停電のリスクを下げるために、泊発電所の再稼働を求めます。そのため、幸福実現党は原子力規制委員会に適正化並びに審査の迅速化を求める要望書を提出しました。

【政務調査会】原子力規制委員会宛てに「原子力規制行政の適正化及び新規制基準適合性に係る審査の迅速化を求める要望書」を提出
https://info.hr-party.jp/2018/7199/

原子力規制委員会は、大局観をもって国家の根幹にかかわるエネルギー問題を担っていかねばなりません。原発の最高水準の安全を求めながらも、どこに合理的な着地点を求めるかという姿勢が必要です。安価で安定的な電力供給を確保し、日本の経済成長とエネルギー安全保障を支える立脚点に立った適切な規制行政を求めるものです。

(完)

【参考】
奈良林直 「全道停電は泊発電の停止も一因」 2018年9月12日 国家基本問題研究所
遠田晋次 「「地震活動と地震動の予測」-研究の最前線と今後の展開-」 損害保険料率算出機構 2010年3月
資源エネルギー庁 「火力発電に係る昨今の現状」 2017年10月10日
資源エネルギー庁 「新しくなった「エネルギー基本計画」、2050年に向けたエネルギー政策とは?」 2018年7月3日
東北電力株式会社 「女川原子力発電所の概要および東日本大震災時の対応状況」 2014年11月11日
産経新聞 「【原発最前線】とっくに再稼働していたはず… 審査難航の北海道電力泊原発、通称は「最後のP」」 2018年9月26日
産経新聞 「【原発最前線】火山層否定の火山灰が見つからない! 再稼働へ苦難続く北海道・泊原発」 2017年12月12日
日本経済新聞 「活断層地震の確率、九州は30年内に30~42% 政務が評価」 2013年2月1日
The Liberty Web 「福島原発事故、「国と東電に責任あり」の判決 政府は「原発は安全」と宣言すべき」 2017年3月18日
The Liberty 「次は富士山!?なぜ地震・噴火が続くのか?天変地異は神々の警告」 2015年8月号
幸福実現NEWS 51号 「「原発即ゼロ」は無責任 幸福実現党は、未来を見据え原発推進」 2013年12月7日

油井哲史

執筆者:油井哲史

幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生

page top