G20後の米露関係―関係改善に向けて動き出した両大国
http://hrp-newsfile.jp/2017/3228/
幸福実現党・政調会外交部会 副部会長 彦川太志(情報分析担当)
今回のニュースファイルでは、前回に続き、G20での米露首脳会談と、今後の国際情勢について報告したいと思います。
◆G20での米露首脳会談に世界が注目
G20とは世界の経済大国19か国プラスEUで構成される、グローバル経済を促進することを目的としたグループですが、元々蔵相会議であったものが2008年の金融危機以降、首脳会議も開催されるようになっています。
本年はドイツのハンブルグを開催地とし、7月7日・8日の日程で首脳会議が開催され、米露首脳会談も、この日程の合間に実施されています。
◆信頼回復の糸口が見えた米露首脳会談
「彼は対話相手の主張に耳を傾ける事ができるオープンな人格の持ち主であり、彼自身が作り上げたテレビの印象と全く違っていた。」
これは米露首脳会談の後で、トランプ大統領の印象についてプーチン大統領が語った言葉です。(※1)
両首脳は身を乗り出して固く握手を交わすと共に、米露関係について「悪化させるには、あまりにも重要すぎる関係」であるとの認識のもと、建設的な対話を進める必要性について合意したことが報道されました(※2)。
首脳会談の開催により、歩み寄りを模索していた両大国は「信頼回復」の糸口を掴んだものとみて良いでしょう。
◆「過去は棚上げ」から出発する、新たな米露関係
今回の米露首脳会談の成果をあえて「一言」で表すとしたら、「過去については『棚上げ』し、両国の国益を損なわない実質的な解決方法を模索する」(※3)事で合意が得られたと言う事になります。
その姿勢が端的に表れたのが、米大統領選介入問題と、シリア・ウクライナ問題への対応でした。
(1)米大統領選介入問題
ロシアによる「米大統領選への介入疑惑」について、両首脳は40分間を費やしました。
トランプ大統領がプーチン大統領に対して率直に「介入の事実があったかどうか」を何度も問いただし、プーチン大統領は「介入の事実は無い」と返答する、と言ったやり取りが繰り返されたほか、米国や他国の選挙に対する介入が行われないよう、サイバーセキュリティについて「更なる交流を深めることで合意」したと伝えられています。(※4)
「オバマ政権下」で発生した「いざこざ」を掘り下げるよりも、両国の「信頼関係」構築に重点を置く意図が見えてくると言えるでしょう。
(2)シリア・ウクライナにおける緊張緩和
もう一つは、オバマ政権からの「負の遺産」とも言うべきシリア・ウクライナ問題です。
シリアについて、5月10日にホワイトハウスで行われたトランプ大統領と露外相との会談の中で、トランプ大統領は明確に「シリア政府の問題は、ロシアが手綱を取るべき」だと指摘していましたが、今回の首脳会談でも、シリア内戦の当事者に対し、「米露両国がそれぞれに影響力を行使する」事が「合意の核心」であったと伝えられています(※5)。
ウクライナ問題も同様です。G20終了後、トランプ大統領は「プーチン大統領の求めに応じて」対露強硬派として知られるクルツ・ボルカー前駐NATO大使のウクライナ派遣を決定すると共に、ロシアに対しては東部地域の緊張緩和と、停戦協定(ミンスク合意)履行に向けた行動を求めました(※6)。
これらの問題について、暫く予断を許さぬ状況が続くとは思われますが、オバマ政権下では米露が協力する兆候すらありませんでしたので、紛争地域の緊張緩和に向けた交渉が行われること自体、米露関係の改善に向けた動き出した証左と見ていくべきだと考えます。
◆意見の「若干の違い」が残る北朝鮮・中国問題
以上の様に、2時間15分の首脳会談において「対立よりも前進」を選択した両首脳でしたが、一つだけ、意見に「若干の違い」がある問題があったと、ティラーソン国務長官によって明かされました。それが北朝鮮や中国に関する問題です(※7)。
これは私見ではありますが、北朝鮮・中国問題について「十分な信頼関係を構築できていない」という事を直接的に表現すると、「『アジアにおけるロシアの影響をどの程度認めるのか』と言う問題に話がついていない」と言う事を意味するものと思われます。
例えば、トランプ政権がシリアにおいてロシアとの信頼構築の糸口を見いだせた理由は、トランプ大統領が「シリアの手綱を引け」とラブロフ外相に伝えたように、同地域におけるロシアの影響力を一定程度認めたからに他なりません。
これを北東アジアにおいて当てはめるとしたら、どうでしょうか。その答えを出し、米露の橋渡しができるのは、北朝鮮と中国による「軍拡の危機」に直面している日本しかありません。
北朝鮮問題、即ち「朝鮮半島の非核化」の実現に向けては、北朝鮮の後ろ盾となっている中国に対して、ロシアからの圧力も必要です。そのためには、北方領土の帰属問題を一時「棚上げ」してでも、両国が互いに安全保障上の利益に尊重する事を前提とした、日露平和条約の締結を目指すべきであると考えます。(※8)
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日時:7月22日(土)12:45開場 13:00開始
場所:ユートピア活動推進館3F大会議室 東京都港区赤坂2-10-8
会費:1000円(持ち帰り資料あり)
主催:幸福実現党政調会 外交部会
講師: 同 副部会長 彦川太志(情報分析担当)
◆お申し込み・お問い合わせ
ご参加のお申し込みは、【お名前】、【電話番号】、【所属支部(任意)】を明記の上、下記までメールをお送りください。
※件名に「7月22日セミナー希望」とご記入ください。
担当:彦川太志 【victory777dh@gmail.com】
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<参考記事>
(※1)2017/7/14 TASS:Putin believes Trump’s most important quality is ability to listen to his interlocutor
(※2)~(※5)、(※7)2017/7/8 TASS:US-Russia relations are too important to focus on dispute
(※6)2017/7/9 U.S.Department of State:Remarks With Ukrainian President Petro Poroshenko At a Joint Press Availability
(※8)2016.12.18「安倍外交はなぜ「完敗」したか【第一回】――オピニオン力無き外交の終焉」2016.12.19「安倍外交はなぜ「完敗」したか【第二回】――「認識の齟齬」を生んだ安倍パフォーマンス外交」