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「幼児教育無償化」は選挙対策か?

http://hrp-newsfile.jp/2017/3216/

HS政経塾 担当チーフ 古川裕三

◆政府が掲げる「幼児教育、保育の早期無償化」について

政府が先月発表した、骨太の方針の素案では「幼児教育、保育の早期無償化」が謳われています。

しかし、無償化に必要な年間7000億円にも上る巨額な財源についての具体案は示されていません。

一応は、財源について、年内に結論を出す方針とのことで、(1)財政の効率化、(2)税、(3)新たな社会保険の3つの案が示されています。

(1)財政の効率化は、日本の経済成長と密接にかかわる分野であり、すぐに効率化できて財源をねん出できるわけではありません。

(2)の税と、(3)新たな社会保険(「こども保険」)というのも、要するに消費税の増税か、社会保険料の値上げ、ということになりますので、結局、国民の負担を強いるということになります。

◆無償化の是非

無償化について、教育経済学的な立場では、「人への投資は収益率が高い」という点をあげて賛成する人が多くいます。

特に最近は、ノーベル経済学賞受賞者のヘックマン氏の著書『幼児教育の経済学(原題『GIVING KIDS A FAIR CHANCE』)が引き合いに出され、賛成側の論拠のひとつともなっています。

本書の英語の原題である、「恵まれない子供たちへ公平な機会を与えること」という趣旨には賛成ですが、一律にすべての子供を対象に無償化させることには反対です。

政府は、幼児教育無償化について、「すべての子どもに質の高い幼児教育を保障すること」を目指す、としています。

すでに現在もひとり親家庭や多子家庭に対する無償化への取り組みは始まっていますが、セーフティネットとしての機能は必要ですが、無償化対象を「すべての子供」にまで拡大させる必要はありません。

◆日米の違い

6月28日付日経新聞のオピニオン欄に掲載された慶応大学教授の赤林英夫氏の寄稿(「幼児教育『無償化』意味がない」によると、ヘックマン氏の主張では、主に50年前のアメリカを事例として、教育機会に恵まれない就学前の子供に質の高い教育を施したときの効果がデータとして示されますが、アメリカは先進国のなかで就学前教育(4歳まで)の普及が最も遅れている国であると指摘しています。

さらに、OECD統計では、4歳で幼児教育施設に通っている比率は68%でも、日本は95%にも達しており、日本国内においては4歳から5歳の子供の就園率を上昇させる余地はほとんどないことを指摘したうえで、無償化させることは、いままでは親が自ら進んで出していた教育費を税金で肩代わりすることにすぎないと論破しています。

つまり、政府は、消費税や社会保険料を上げて国民を苦しめつつも、「無償化」を謳うことによって人気をとり、税金の「バラマキ」対象を増やして票を買いたいという「選挙対策」がその本質です。

お上中心主義というか、全体主義的というか、どうしても現政権は「上からの革命」を企図しているようにみえます。(参考:『政治の意味』大川隆法×大川裕太著)

◆「しらかし貴子」氏、保育の規制緩和を訴える

幼児教育の無償化は必要がない、ということについて論じてきましたが、今、喫緊の課題は、やはり東京都を中心に、大都市部が抱える「待機児童」の解決ではないでしょうか。今も全国で2万3000人もの待機児童がいるというのは異常事態です。

現在、小規模認可保育園の園長を務める「しらかし貴子」氏は、保育業界の規制緩和を訴えています。

参考:リバティWEB
http://the-liberty.com/article.php?item_id=13143

現場に身を置き、多くのママたちの悩みに接し、改革の必要性を心底感じている「当事者」にこそ、行政を変える真のパワーがあるのではないでしょうか。

古川 裕三

執筆者:古川 裕三

HS政経塾 担当チーフ

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