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トランプ革命後の日印外交を考える

幸福実現党・岡山県本部代表たなべ雄治

◆トランプ大統領の外交手腕

安倍総理がトランプ米大統領から破格の厚遇を受け、日米首脳会談は終わりました。

しかし、大統領選以降の流れの中で見えたのは、トランプ新政権のしたたかな外交手腕です。

昨年12月2日、トランプ氏は蔡英文台湾総統と電話会談を行ない、安全保障にまで踏み込んで話し合っています。

米台首脳の会談は、1979年以来となる異例の出来事でした。おりしも、習近平中国国家主席がキッシンジャー元米国務長官と会談をしているその日のことです。

「一つの中国」として台湾を認めていない中国は激しく反発しました。

その一方で、安部総理が米国に到着する1月9日には、トランプ大統領と習近平主席が電話会談を行なって、「1つの中国」政策の維持で合意しています。

台湾独立がシーレーン防衛の生命線である日本に、プレッシャーをかけた形です。

最終的には良好な日米関係を演出しましたが、関税・為替で交渉相手となる日中両国に十分な揺さぶりを掛けたという所でしょう。

◆トランプ外交で中国はどうなるか

台湾問題では中国に妥協した形の米国ですが、これは対中の関税を引き上げる予兆ではないかと予想します。

公約では、中国製品に45%の関税をかけることになっています。

ところで中国はここ20年以上にわたり、毎年10%以上というすさまじい軍拡を続けています。

その軍拡を支えてきたのが、中国の経済成長です。

中国は、西側諸国と貿易をしながら、為替は元安にコントロールしてきました(管理変動相場制)。

さらに、採算度外視の安売りができる国有企業で構成されています。

そうして成り立つ安価な製品の輸出によって、中国経済は急成長を遂げました。

現在米国の貿易赤字の約半分は対中国であり、中国によるグローバリズムの悪用と言えます。

トランプ大統領が掲げる対中関税は、軍拡を支えてきた中国経済に打撃を与える政策です。

南シナ海のサンゴ礁の軍事基地化など、中国の軍拡に脅威を感じている東南アジア諸国とっては朗報でしょう。

しかし、その後の中国の動きは予断を許しません。

というのも、経済で行き詰った中国が戦争特需をつくり出すことが予想されるからです。

◆アジアの安定に不可欠な日印関係

とは言え、中国の軍拡をこのまま放置するわけにはいきません。

やはり米国の対中国の関税政策には賛成です。

そのうえで、中国の暴発を前提とした対策が求められます。

そのために連携すべき国は、同盟国の米国の他に、中国を北と南から挟むロシアとインドでしょう。

ここでは、インドについて考察してみます。

◆トランプ大統領と似ている!?モディ印首相

2014年、インドでは10年ぶりの政権交代が実現しました。そこで登場したのが、ナレンドラ・モディ首相です。

モディノミクスと呼ばれる自由主義経済政策や製造業振興政策「メーク・イン・インディア」により、就任前には5~6%だったGDP成長率は7%台をキープしています。

そんなモディ首相ですが、トランプ大統領やドゥテルテ比大統領と比肩される大胆さがあります。

昨年11月8日の夜、突如として高額紙幣の無効化を宣言しました。その目的は、GDP2割を占める地下経済の撲滅とデジタルマネー推進を狙ったものです。

発表からわずか4時間で、通貨発行額の86%が無効となりました。(年内は銀行で交換ができた。)

日本で例えると、財布の中の一万円札と五千円札が突如使えなくなるわけです。

しばらく経済の混乱は続きましたが、国民の少なからぬ人数がモディ首相の政策を理解していたようです。

地下経済と汚職に対する不公平感と不満が鬱積していたということでしょう。

また、昨年の夏には、GST(物品・サービス税)の導入に目途を立てました。

GSTとは、州ごとに独自だった間接税率を一律化し、複雑だった税制を簡素化するものです。

州をまたぐ商売の効率化や減税効果などで、GDP1%にあたる経済効果が見込まれると言われています。

そのために必要な憲法改正を、上下院で可決させたのです。

改革の遅さや高額紙幣無効化で批判もあるモディ政権ですが、3月11日開票のウッタルプラデシュ州を含む5州のインド州議会選挙で、その信任が問われると見られています。

◆したたかなインド外交

インドは伝統的に「非同盟主義」、「全方位外交」を方針としていますが、モディ首相もこれを踏襲しています。

ISの問題でも、イスラム過激派のテロに悩まされてきたインドなのに、67カ国のIS対策有志国グループには加盟していません。

また、中国を仮想敵国としながらも、日中や米中を両てんびんにかけて経済的な利益を引き出すなど、「インド第一主義」外交を続けてきました。

インドにとって中国は、仮想敵国であると同時に最大の貿易相手国です。

複雑な印中関係があり、建て前として同盟を嫌うインドに対して、日本はどのような外交方針で臨むべきでしょうか。

◆主軸は安全保障

トランプ外交によって米中貿易の先細りが予想されます。

その影響で印中貿易が膨らみ、両国の経済関係は強化されるでしょう。

経済に関しては、インドによる日中の両てんびん外交には目をつぶらざるを得ないでしょう。

反面、安全保障に関しては、中国の脅威を被る国同士として、要点を押さえた協力関係を構築すべきです。

欧米に同調してロシアの経済制裁に加わったばかりに露中の関係を強化してしまうような、外交の失敗を繰り返してはなりません。

昨年、2年越しで締結した日印原子力協定のように、インドにとって譲れないポイントでしっかりと信頼関係を築いていく必要があるでしょう。

交通やエネルギーなどのインフラ、防衛装備移転など、技術面での日印の関係強化も望まれます。

最優先は安全保障です。中国という脅威への対応を軸とした、日本独自のブレない判断が求められます。

たなべ 雄治

執筆者:たなべ 雄治

HS政経塾 三期生

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