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安保法制――朝鮮有事時の邦人保護は可能か

HS政経塾第6期生 山本慈

◆「邦人保護」について

2015年に改正された安保法制で、海外にいる邦人を自衛隊が輸送、保護できるようになりました。改正時は、これは大変話題となったので、ご存知の方も多いと思います。

しかし実際のところ、自衛隊が邦人を保護することが不可能な場合があり、やはり未だ法整備すべき点、もしくは外交によって補う必要があります。

現法制では、自衛隊が邦人保護措置を実施するために、以下の3要件を満たしていなければなりません。

「邦人保護措置実施3要件(『平成27年版 防衛白書』)」

(1)保護措置を行う場所において、当該外国人の権限ある当局が現に公共の安全と秩序の維持に当たっており、かつ、戦闘行為が行われることがないと認められること。

(2)自衛隊が当該保護措置を行うことについて、当該外国等の同意があること。

(3)予想される危険に対応して当該保護措置をできる限り円滑かつ安全に行うための部隊等と当該外国の権限ある当局との間の連携および協力が確保されると見込まれること。

ここで注目したい点は、(2)の「当該外国等の同意があること」です。

もし当該外国、紛争に関わる国が同意しなかったなら、自衛隊は保護措置をとることはできません。

PKO活動として自衛隊が派遣される場合は、PKO活動の一環として邦人や難民の保護を行えますが、PKO活動が行えないところでは、当然、憲法や自衛隊法、安保法に基づいて自衛隊は活動しなければなりません。

つまり国家間同士の戦争の場合、当該外国が拒否すれば、自衛隊を派遣して邦人保護措置をとることはできません。

◆朝鮮有事を想定した場合

現在、日本は北朝鮮対韓国の朝鮮有事を想定して、ガイドラインを調整しています。

また現在、韓国には38,060名の邦人が滞在しています。朝鮮有事が勃発した場合、韓国の同意を経て、在韓邦人の保護措置手続きが行われます。

しかし、2016年10月、韓国の韓(ハン)民(ミン)求(グ)国防相は、韓国在留邦人の救出に必要な空港や道路の状況、韓国軍の展開などの情報について「それは(日本側に)渡さない(『朝日新聞』10月28日付)」と語っており、保護措置実施要件(3)をクリアすることが難しいと分かりました。

また現韓国政府も朴(パク)大統領が弾劾裁判中で、次期大統領選候補者も左翼陣営が強く、反日を訴える候補者ばかりなことから、韓国政府との連携はさらに難しくなるでしょう。

◆朝鮮有事時の邦人保護は不可能に近い

現在の邦人保護措置実施3要件では、日本と同盟関係にない国や日本と友好国でない場合、保護措置を実施することが大変困難だと分かります。

また朝鮮有事の際、自衛隊を邦人保護のために派遣できない場合は、民間機、船による邦人救出も必要であると政府関係者は述べています。

しかし、実際戦争が起きた場合、飛行場はミサイルを撃ち込まれる可能性が高く、また仁川(インチョン)国際空港、金浦(キンポ)国際空港は北朝鮮との国境近くに位置しているため、そこから邦人を保護することは不可能と言えるでしょう。

◆幸福実現党からの提言

まず朝鮮有事において、ネックとなっているのは邦人保護措置実施3要件の(3)です。

「(3)予想される危険に対応して当該保護措置をできる限り円滑かつ安全に行うための部隊等と当該外国の権限ある当局との間の連携および協力が確保されると見込まれること。」を満たすためには、韓国側から、韓国在留邦人の救出に必要な空港や道路の状況、韓国軍の展開などの情報を引き出す必要があるでしょう。

現在、日韓の防衛情報を共有する基礎となる「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」が日韓で話し合っています。

話し合いの中では、韓国は日本の海上情報収集能力の高さを認め、その情報を欲しています。これを引き合いに、日本側は在韓邦人救出のための情報を韓国側から粘り強く引き出していくことが重要でしょう。

幸福実現党は、「朝鮮半島有事などの際の邦人救出を可能とする法整備を行うとともに、邦人保護プログラムを策定します。」という政策を掲げています。

現法制では、在韓邦人を守れないため、安保法制の更なる改正と在韓邦人保護措置がとれる策定プログラムを具体的かつ現実的なものを策定致します。

山本慈

執筆者:山本慈

HS政経塾6期生

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