若者の希望あふれる政治参加を促すために
HS政経塾第5期生 表なつこ
◆若い世代の投票率を上げる主権者教育
日本では、とくに若い世代の投票率の低下が長年の問題となっています。
今年7月の参院選は、18歳選挙権が導入されてから初の国政選挙だったことで、多くの学校に「主権者教育」が導入されました。
調査では、8割以上の国公私立高で、昨年12月に配布された副読本「私たちが拓く日本の未来」という副読本が活用され、有権者になることの意味や選挙の具体的な仕組み、議員の役割などが教えられました。
参院選での実際の投票率は、18歳、19歳の10代は46.78%となりました(18歳は51.01%、19歳は39.66%)。これは20代の投票率(35.60%)、30代の投票率(44.24%)よりも高い結果です。
また、18歳と19歳の間にある12%近い投票率の差は、学校で主権者教育を受けたか、受けずに卒業したかの違いだと指摘されており、学校で「政治参加の意味」や「実際の政治・選挙の仕組み」を教えることの効果が見られたと言えます。
◆民主主義を支える市民をつくる教育
近年、「シチズンシップ教育」というものが注目されています。
これは2002年にイギリスで必修化され、欧米諸国の学校教育への導入が広まってきています。シチズンシップ教育とは、民主主義を支える市民(citizen)となるために必要なことを教える教育です。
◆欧米諸国の事例
(1) イギリス
イギリスがシチズンシップ教育を導入した背景には、1990年代の若者の政治的無関心や投票率の低下、また暴力や犯罪行為の増加がありました。
同時に、移民の増加によって多文化社会になっていき、共通の価値観が薄まっていったことも問題とされていました。
イギリスでは、キーとなる概念(民主主義と公正、権利と責任、アイデンティティと多様性)や、キーとなるプロセス(意見表明や責任ある行動など)を基礎とし、実施方法は教育現場に委ね、学習内容ではなく学習の成果のみを厳密に定めました。
(2) ドイツ
ドイツでは、政治的判断力と行動力をつけることを目的とし、さまざまな教科が政治と関連づけて行われています。
また民間政治団体によって「ジュニア選挙」が行われています。実際の選挙の争点などの教材を学校に配布し、政治や選挙に対する理解を深め電子投票を行います。
この投票結果は実際の選挙が終わったあとにインターネットで公表されるようです。
また、メディアの情報を鵜呑みにせず自分で考え判断し行動するための教育も行われています。
このような取り組みをしているドイツは、比較的高い投票率を維持しています。
◆日本の事例
現在、日本の学校でもこういった取り組みが行われています。
たとえば神奈川県では、キャリア教育の一環として、モデル校を指定し「よき市民となるため、政治参加意識を高め、 社会や経済のしくみについて理解を深めるとともに、ボランティア活動などを通じて、積極的に社会とかかわり責任を果たそうとする力を育成」する目的でシチズンシップ教育に取り組んでいます。
モデル校では、総合的な学習の時間を取り、論理的思考能力、自分の意見を述べる力を養いながら、教科を超えて生徒が身につけた力の活用を意識した指導を行っているといいます。
例えば国語では、社会問題について考えて意見をまとめ、新聞への投書を行うなどの実践をしたり、実際の選挙に合わせて模擬投票を行う活動などをしているそうです。
この活動によって投票所の臨時職員として活動する生徒や積極的にボランティアに参加する生徒が誕生したといいます。
◆若者の希望ある未来と、日本の希望ある未来を築くために
政治教育に関しては、教育現場の政治的中立をどのように定義するかなど、今後より深い研究調査が必要とされると思われます。
ですが、厚生労働省の調査によると、「社会のために役に立ちたい」と考えている子供の割合は2000年頃から上昇傾向にあります。
教育現場は、こういった若者の意識をより育て、伸ばしていくために、政治参加の意義を含めて社会の実情把握の仕方や社会との関係のつくり方を教えていくことが大事だと言えるでしょう。
国民主権を謳う日本では、日本を導く政治家を選ぶ国民一人ひとりが主役です。そのためには、一人ひとりの政治的教養と徳性の向上が必要です。
「人間一人ひとりは、神仏がつくった存在であるから尊い」と考える幸福実現は、道徳・宗教・歴史教育の充実で子供たちの豊かな人間性と愛国心を育みたいと考えています。
愛と寛容の精神を身につけ、未来に希望を持って政治参加していく若者輩出のために、今後も教育政策提言などを進めて参ります。